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【エタオとジェメリウットの訣別】
エタオとジェメリウットが、マジュロ島を訪れたときのことです。2人が小道を歩いていくと、向こうから大きなサーフボードを担いだ男がやってきます。2人と出会っても道を譲ろうともせず、2人のほうが道をゆずりました。エタオはこのことに腹を立て、サーフボードを思い切り重くして、おまけに2度と肩からはずれないようにしてしまいました。
ジェメリウットは、ちょっと気が引けましたがエタオは笑っています。サーフボードの男は
「俺は今まで色んな魔術師を見てきたが、あんたのような偉大な魔術師には出会ったことが無い。俺が悪かった。どうか助けてくれ。」
と懇願し、おだてに弱いエタオはすぐさま術を解いてやったばかりか、ボードも軽くしてやりました。
ジェメリウットは、弟のこういうわがままさに辟易してきました。ジェメリウットは、この島で極上の美人と結婚することにしたのですが、弟に知れると何をされるかわからないと考え、秘密裡に結婚して人里離れたところに家を構えました。しかし、エタオが知らないわけはありません。島の人達みんなとの宴会の時、エタオは魔法の虫をジェメリウットの着物に這わせていき、身体中を痒くさせました。たまらなくなったジェメリウットは、みんなの前で着物を脱いで裸にならざるを得ず、大恥をかいてしまいました。
さすがのジェメリウットもこれには腹を立て「俺にだって少しは魔法が使えるんだ」と、魔法のサソリを出現させてエタオに向かわせますが、サソリは一瞬でやられてしまいました。ジェメリウットは「エタオ、お前には何をやってもかなわない。頼むからもう構わないでくれ」と、弟に頼みます。
エタオは、もとより兄が憎いわけでもなんでもなく、兄から嫌われるとは思ってもみなかったので
「いや、兄さん、僕が悪かった。気分直しに海で泳ごう。僕は遅い亀になるから、兄さんは速いイルカになっていいよ」
となだめます。
2人は海に出て、しばらく楽しく過ごします。と、そこに漁師が通りかかり、それを見たエタオは またつまらないイタズラを思いつきます。漁師のすぐ近くで「バッシャーン」と大きくひれを叩いてみせたのです。それまで全然気がついていなかった漁師は、浜のすぐ近くに大きな亀と大きなイルカがいることに驚き、これは大した獲物だとばかりに、まず亀に向かって銛を投げつけます。銛は亀の甲羅で簡単に跳ね返され、勢いでイルカの胴体に深く突き刺さってしまいました。
2人はすぐに人間の姿に戻りましたが、ジェメリウットは
「お願いだ。もうこれ以上関わり合いになるのはやめてくれ。島に戻って父さんに、ジェメリウットは死ぬまでこの島で暮らすことにしたと伝えてくれ」
とエタオに冷たく言ったのです。その後、ジェメリウットはマジュロの島で王となり、善政を敷いて人々から慕われ続けた、ということです。
【エタオとコネの木のカヌー】
エタオはマジュロを後にする前、ちょっとしたいたずらをしかけていました。彼は速く走るカヌーが欲しかったのです。当時、マジュロでカヌー作りの名人と言えば「ココ」という名の男で、ココのカヌーは速くカッコよく、マストや索具も美しく飾られていました。その上、相当な重さの荷物も運べる、という優れたものでした。
エタオは計略を巡らし「あのカヌーと交換できるようなカヌーを作ってしまえばいいんだ」と考えます。そこでエタオは、手近にあったコネの木(この木は鉄木(てつぼく)」と言われる大変堅い木で、カヌーになどしようものなら沈んでしまいます)を切り出し、カヌーのかたちにすると、それをピカピカに磨き上げ海岸に運んでくると、一見海に浮かんでいるように見えるように細工しました。(実はカヌーの底に台を当てて、水中に置いてあるだけ)
このピカピカのカヌーは人々の注目を集め、噂をきいたココもやってきて
「うーん、これは俺のカヌーよりもたくさんの荷物を運べそうだ。それに、何と言っても美しい」などと褒めます。ここぞとばかりに、エタオは「君のと交換してやってもいいよ」と持ちかけ、「本当か?いいのか?」というココの言葉も終わらぬうちに、ココのカヌーに乗って去っていきました。
エタオの詐欺はすぐにばれ、怒った人々は四方八方からエタオを追います。エタオも必死で逃げ、迫ってくる人々に向かって積んであった石を蹴りつけます。あまりにも多くの石を蹴りつけたために、現在、マジュロ環礁の東半分に見られる小さな島々は、このときに堆積した石がもとになってできたと言われています。
エタオは無事に逃げ切り、勝利の歌を歌い大海原を心地よく航海していきました。このとき彼が歌った歌も、現在に至るまでマジュロで歌い継がれているということです。
【パラウ】
その昔、パラウの島々がまだ1つの大きな島であったころ、ウアブという名前の子供が産まれました。この子は小さな頃から異常な大食いで、ばくばく食べてはどんどん大きくなり、子供の頃にはすでに大人の数倍の大きさにまで育っていました。母親は、自分の家の食料だけではもう養育できなくなり、村長に相談して、村として養ってもらうことにしました。
パラウの巨人ウアブ
しかし、ウアブの食欲はその後もとどまることを知らず、身体はますます大きくなり、やがては村で採れる食料でも足らなくなってきます。もともと豊かな村ではあったものの、このままでは村人全員が飢死してしまうと危惧した人々は、やむなく眠っているウアブを縛り上げ、彼を焼き殺そうと火を付けます。
熱さで目を覚ましたウアブは大暴れ。そのときに彼が自分の脚ごと蹴り飛ばしたのが、今のペリリュー島。そのおかげでペリリューの人々は、今でも走るのが速いそうです。お腹のあたりが一番大きなバベルダオプ島になり、ここの人々は決して飢えることがなく、ちょっと下品なところでは彼のペニスからできたアイメリク島では、一番雨が多いそうです。
などなど、ウアブはパラウの島々の起源に深く関わっており、人々は「昔、我々がウアブを養った恩返しで、今ではウアブが我々を養ってくれてるのさ」と語っています。
【ポンペイ】
その昔、サプウキニという聡明な男がいました。彼はシャカレンワイオという小さな島に住んでいましたが、島があまりにも手狭になったので大きなカヌーを作り、16人の人々と共に大洋に漕ぎ出しました。
何日もの航海の後、リダキカというあたりで巨大な鮹に出会い、鮹に「一体どこから来たのか?」と訊くと、「ちょっと南のほうの浅瀬に住んでるんだ」との答。サプウキニ達は、その浅瀬を目指すことにしました。浅瀬のあたりは珊瑚があちこちに顔を出していて、気候も良さそうです。
サプウキニは、ここに人が住める島を作ってしまおうと決意します。
人々は力を合わせて珊瑚や岩を積み上げますが、大きな波が来るたびに流されてしまいます。そこで、サプウキニは人工島の回りにマングローブを植え、波よけにしてはどうかと考えます。(今でも、ポンペイの海岸がマングローブで覆われているのはこのためです)
計画はうまくいき、完成した島には大きな祭壇(ペイ)が設けられました。その後、大きくは3つの部族が島に移り住み、今のポンペイの4大部族の祖先となりますが、ポンペイ(石の祭壇の上、という意味)という名前は、サプウキニが設けた祭壇が元になっているとのことです。