「直ってないといっても、あれから何日も経ってないし。そんなに急に出来るわけがない」
驚いてそう言うと
「この前話したのが、金曜日か・・・金、月、火・・・そういや3日しか経ってないか・・・」
ちょうど偶然に、先に眼にしたPMとI氏の親しげに話をする場面・・・こちらの姿を認めた途端、とってつけたようにそそくさと立ち去った二人の姿・・・そしてPMからのクレーム・・・この時、今回降って沸いたような問題の「構図」が、頭の中で出来上がった。
そうだ。「PM-I氏」のラインを中心に据えれば、あのわけの解らない疑問が全て氷解するではないか。そもそもVPのH氏が「タスクを丸投げにしている」などという、細かいレベルを把握できているわけがないから、これは「誰かからの情報に基づいて言っている」のである。では、誰からの情報か?
VPと直接会話をするといえばPMくらいしか思い浮かばないが、そのPMにしても自らそこまで把握しているわけはないから、これも「誰かからの情報提供」がなければならない。これは、誰からの情報か?
これまでPMとメンバーが直接会話をしている場面は、見たことがない。あるとすればメンバーの中でもプロパーか、或いはプロパー以外で・・・
そうだ!
リーダーの「I氏」が居るではないか!
PMとは最も親しくどころか、まったく「蜜月」ともいえるような、PMとしては全幅の信頼を寄せている「腹心のI」が居るではないか!
腹黒いIが、喫煙所などにPMを誘う。
(新しく入ったにゃべ氏ですが・・・どうもタスクの中身に入りきれてないようで、メンバーから色々と不満の声が出て来て、参りましたよ・・・)
(そーなのか・・・?)
(スケジュール管理しか出来ていないみたいで・・・ユーザーの定例会も、頼まれて私が出て説明しましたけど・・・私も、いつまでも頼られても困るしなー)
(うむ・・・ じゃあ、M君に言っておくか・・・)
と、このような会話が交わされたのではあるまいか。どうも、それ以外に考えられぬ。
これは単なる想像ではなく、改めてこれまでの話をよく吟味してみると、最も身近に居るIでなければ言えないような内容も含まれていた!
では、Iの動機はなにか?
そうだ!
以前に、Iに何かの作業を依頼したことがあった。まだ入ったばかりの頃で、その時はてっきりIのやるべき作業だという認識で「やっといてください」と言った時に「何で私が?」と、ややムッとしていたことがあった。
それは「何で私が?」ではなく
「何でオレ様が、オマエのような新米に指示されなきゃいかん」
ではなかったか?
その時はIも猫を被っていたため、まさかあれほど尊大なやつだという認識はなかったのと、PMから「解らないことは、当面Iさんに頼んで」という言葉をそのまま受け取ったせいで、まったく悪気や特別な意図はなかった。が、あれがそれほどまで、誇り高きリーダーIのプライドを傷つけていたのだろうか?
あのクレームが「Iによる謀略」という当たりをつけたせいで、当然ながらIとの関係はギクシャクし始めた。Iの方でも、最早殊更に自らの「謀略」を隠すような振る舞いはなく、持ち前のふてぶてしさを発揮してきていた。こちらとしては、出来るだけIとの接触を避けたい。それに、自分を陥れようとしているヤツに定例会の同席を頼むのも業腹なので、不安はあったが一人での対応を余儀なくされた。
その最初の週は、ちょうど予定していた時間にユーザーのシステムで大きなトラブルが発生したため、担当者が3人ほどバラバラに来ただけで、本来の緊張感のある「定例会」は運良くお流れとなった。そのうちに、定例会向けのタスク管理だけではなく「VMサーバの新規構築」やら「監視システムの導入」といった、新規の大きなテーマが持ち上がってきた。個別案件に対する担当者アサインはI氏が行っていたため、この件についての担当者の割り振りを頼むと
「既存メンバーは障害対応とかはやるが、設計などの上流工程は出来ない者ばかりですよ。設計など上流はリーダーがやって、そこからメンバーがやることの指示まで落とし込んでやらないといけない」
という。が、元々ネットワーク屋のこちらとしては「監視の導入」はともかくも「VMサーバ」などは、知識も殆どない。ましてや顧客への定例報告とその資料作成、また10数人いるメンバーのタスク管理という慣れない作業だけで手一杯だったが、技術もオールマイティらしいI氏は、これらの設計も簡単に考えているようだった。
現場には、メンバーの他に大手ベンダーの管理者が常駐していたため、彼に相談して「今、使える工数の範囲内で、対応できないか?」と要請をし、監視設計については「別のチームに詳しい人材が居るから、そいつを使って欲しい」というPM指示により、その人物に依頼した。
ところがPMからの無理難題は、矢継ぎ早に飛んでくる。次には
「サーバVM化と、監視導入に関する各案別の工数見積もりを出して欲しい」
と来た。
この作業は、元々設計フェーズの仕掛かりから別のチームが担当していたものだったため、その時の担当者にメールで依頼したところ、PMから「自分でやれ」というわけのわからない指示だ。元々担当していた人間が居て、途中まで作業を行ってきたのをこちらのチームで引き継ぐことになったのだから、これまでやって来た担当者が見積もりを出した方が、より早く正確に出来るのは間違いない。仕方がなく、当面納期が迫っていると思われる当月の概算見積もりを急造で提出すると
「カットオーバーまでの全部の見積もりを、工程別に出して欲しい。それも急ぎで・・・今日中に欲しいな」
という、無理な要求だ。
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