2013/05/24

引き際(プロジェクトD)(13)

ある日、比較的親しくしているメンバーから

 

「Kさんは、新たにC社から連れて来たメンバーをサブリーダーにするつもりらしいですよ。にゃべさんは、どうするんですか?」

 

と聞かれた。

 

「Kのオヤジめ!

そういう肚だったのか・・・」

 

どうにか本番リリースの大任も果たし、ある程度は業務にこなれたリーダーのK氏に、それを補佐するC社の有能な中堅社員2人。さらに立ち上げからのメンバーであるA君を中心に、気付けばいつの間にかC社のメンバーを中心にLBチームの外堀が埋められつつあった。

 

もとより、こちらはフリーのエンジニアだから味方は皆無。所属元経由で入っていたメンバーも、上位会社の「サブリーダー」の存在が煙たいらしくC社の社員に媚び諂い、他のパートナーのメンバーたちも、この状況を敏感に察知してかC社のサブリーダーに擦り寄り始めていた。

 

「元々、誘ってくれたN氏もトンズラこいたし、本番リリースも終わったしで、そろそろオレもお役御免かな」

 

仮に残ったとしても、プロジェクト完了まではあと数か月だったから

 

「本番リリースも終わり役目を終えたので、契約終了としたい」

 

と、所属会社を通じて申し入れた。

 

先に記したような最近の経緯からすれば、K氏やN社としてはワタクシの契約終了は喜ばしいニュースのはずだと思ったが、案に相違して

 

「プロジェクトも残りわずかであり、最後まで継続していただけないか?」

 

と、案に相違した回答が来た。

 

まったく、なんということか!

 

「残りわずか」だったら最後まで今の体制で通せばよいのに、わざわざ自社から呼んで来た新参者をサブリーダーに担ぎ上げてこちらを刺激した挙句、これまでプロジェクトを支えて来た自分をサブリーダーから外す料簡はなんなのか?

 

実際、このリリースに最も貢献したのは間違いなく自分だと思っているし、だからこそこれを終えたら自分としてはお役御免だと思っていた。リリースが終われば後は維持管理Gに渡して、設計チームは解散するのが通例である。

 

リリース直前から現場責任者の迷走が始まった皺寄せで、こっちは思いもよらず忙しくなり思うように休みも取れず、楽しみにしていた花見にも行けずに終わってしまった。

 

この期に及んで

 

「このタイミングで抜けられるのは非常に困る!」

 

などと泣きつかれても、困るのはこっちの方だと言いたい。

 

「そんなの、オレの知ったこっちゃねーよ!」

 

というもので、自社の子飼いで脇を固めたのだから、この際舅のような煩いヤツは排除してでも、その「新体制」とやらで対応していけば良いだろうが!

 

最後は上位の社長も同席してきて、しつこく慰留されたが決意は固かった。

 

「そもそも、私はNさんから請われてNさんを補佐する役割として来たのだから、その当人がいなくなった今、残る理由はまったくなくなった。途中で無責任に投げ出していったNさんの尻ぬぐいは十分にやって来たと思っているし、貴社都合の新しい体制下とやらで続けるつもりは毛頭ない!」

 

と宣言し

 

「え?

そんな??」

 

とばかりに、目を白黒させているK氏を尻目にミーティング場を後にした。

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