「我々チームが発言を求められるようなことはない」の言を信じて、やけくそで現場に行くと、日ごろは観たことのない「雲の上の存在」のような、プロジェクトのトップにいるコンサルらしいメンバーが集まって「サイバーシステムがどうのこうの・・・」と、わけのわからない議論が丁々発止戦わされ、話の内容が全く理解できなかった。
※今とは違い、この当時は「サイバーセキュリティ」とか言われても「なんのこっちゃ?」という世界だったから無理もないのである。
「まあ、とにかくいるだけでいいんだろう・・・」
と鷹揚に構えていると、突然にMCのコンサルから
「ところで・・・これまでの状況を踏まえての確認ですが、LBチームの対応はいかがでしょうか?」
と言われたから、腰が抜けそうに驚いた。
「あれ?
今日はNさんは欠席ですか?」
と振られたLBチームのTマネージャーが
「あ、にゃべさんがいたのか・・・今日はNさんは休み?
にゃべさんは、今の話わかるかな?」
などと、いきなり言われてもわかるはずはない。
「いや、ちょっと・・・Nからは、なにも引き継いでいなかったので・・・」
というのがやっとで、T氏もコンサルも「どうせわかってないだろう」というような、バカにした表情だった。
「クソ、Nのオヤジめ!
わけのわからん会議に出させて、オレに恥を搔かせやがって。
あの無責任おやじ、許さん!」
とNへの復讐を誓ったのだったが、時すでに遅し。Nの方では、すでにトンズラを決め込んでいたようだった。
憎たらしいことに、この「高度化WG」とやらは、隔週で行っていたらしい。
「この前は、仕方ないので一応代わりに出ましたが、『居るだけで良い』どころか、例のTさんに嫌がらせで振られて、なにを話すかのレクチャーもなかったので、情けなくも立ち往生させられた挙句、Tさんには散々に嫌味を言われましたよ・・・」
と、恨み節を語って見せたが、タヌキオヤジのN氏は
「いや、あれは私も全然、訳がわからなくてね・・・一応出ているだけで、なにをやっているのかはまったく知らない・・・」
と、例によって「お惚け」に終始した。
「『LB(チーム)』のリーダーさんは欠席ですか?
なんて追及されましたがね。なんせ、私が事前にレクチャーを全く受けていなかったので、どう返事したものやら困窮しましたが・・・」
と、言われてもいない「追及」をカマにかけると
「すいません、次からは私が出るように調整します・・・」
と、明らかに「その場凌ぎ」の回答だった。
(とか言ってはいたが、あのクソオヤジ絶対に出る気ないだろう・・・)
という、こうしたことにかけては勘が異常に鋭いワタクシの予想通り、次の高度化WGも直前になって
(申し訳ありません。急遽、社用が出来てしまったため、本日は自社対応となります。今日は高度化WGの日だったと思いますので、にゃべさんは私の代理として出席していただきたい・・・)
などと例によって直前になってから、臆面もなくメールが届いたではないか。
(ふざけんな、あのクソオヤジめ!
誰が出てやるものか!)
と、知らぬ顔を決め込むつもりだったのが、N社のTマネージャーから電話が入り
「なに?
今日も、Nさんは自社だと・・・?
今日は高度化WGがあるから、代理でにゃべさんが出席してください!」
と、有無を言わさぬ口調だ。
「はあ・・・私が出てもNからはなにも引き継いでいないし、今日はNが欠席ということで、ご容赦いただけないでしょうか?
Nには、私から出席するよう働きかけますので・・・」
「LBチームが欠席は許されん!
必ず出席するように!」
と、クソ生意気なTは言い放つと、電話を切った。
(クソ!
なんで、オレが出なきゃいかんのか・・・Nのクソオヤジめ!)
と憤りながらも、予定調和的に「Nの代理」として出席をせねばならぬ身の哀しさ。そして、またTからは
「そんなことも、わからねーのか!」
と、怒鳴られる羽目に。
ところが、一部上場企業C社の部長ともなれば、さすがにその狡猾さは侮れなかった。
いよいよ本番リリースが近づきつつあるそのころには、現地での構築やらなんやらで色々と忙しくなっていたが、構築メンバーやらの差配に追われていた時のことだ。そのころは、リリース前の追い込みで昼夜を分かたず検証作業が行われており、日勤夜勤のシフトや現地での構築を誰にするかの組み換えなどをしていた時だった。
高度化WGの日程に限っては、サッパリ出勤してこなかったN部長だが、それでも時折は顔を見せていた。こちらとしては、WGで例のN社マネージャから散々不当に扱き下ろされてきた恨みつらみがあるだけに、メンバーに中では図抜けてスキルの高いY君を日勤で固定し、それ以外を夜勤でシフトする腹積もりで、N氏に
「日勤夜勤のシフトや、構築に行くメンバーの選定は私に任せて欲しい」
と申し入れると、N氏は実にあっさりと
「それは、全てお任せします・・・」
という返事だ。
(当時としては)日本が世界に誇る「携帯最大手キャリアのスマホ対応」という大プロジェクトに鑑みれば、まったくそれに相応しい陣容とは言い難かったが、それでもなにながらもその中で頭をひねった挙句の遣り繰り算段の体制を構築した。足らない部分は、誰よりも高いスキルを持ったN部長という「最終兵器」が蔭でフォローしてくれるはずだから・・・という想定の下、それなりの陣容を組んだのである。
ところが・・・ここに考えてもみなかった誤算が出来した!
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