2016/03/01

神産み(古事記)

大八洲国やその他の小さな島々を産んだ伊邪那岐命・伊邪那美命は次に神々を産んだ。ここで産まれた神は家宅を表す神および風の神・木の神・野の神といった自然にまつわる神々である。

火の神・迦具土神を出産したとき女陰が焼け、伊邪那美命は病気になった。病に苦しむ伊邪那美命の吐瀉物などから次々と神が生まれた。

火神被殺
伊邪那岐命は伊邪那美命の死に涕泣したが、この涙から神がまた生まれた。

伊邪那岐命は、伊邪那美命を出雲国と伯伎(伯耆)国の境にある比婆(ひば)の山(現在の島根県安来市)に葬った。妻を失った怒りから、伊邪那岐命は火之迦具土神を十拳剣で切り殺した。この剣に付着した血から、また神々が生まれる。なお、この十拳剣の名前を「天之尾羽張」(あめのをはばり)、別名を伊都之尾羽張(いつのをはばり)という。また、殺された迦具土神の体からも、神々が生まれた。

黄泉の国
伊邪那岐命は、伊邪那美命を取り戻そうと黄泉国へ赴いた。

黄泉に着いた伊邪那岐命は、戸越しに伊邪那美命に
「あなたと一緒に創った国土はまだ完成していません。帰りましょう」
と言ったが、伊邪那美命は
「黄泉の国の食べ物を食べてしまったので、生き返ることはできません」
と答えた(注:黄泉の国のものを食べると、黄泉の住人になるとされていた。これを「黄泉竈食ひ(よもつへぐい)」という)

さらに、伊邪那美命は
「黄泉神と相談しましょう。お願いですから、私の姿は見ないで下さいね」
と言い、家の奥に入った。

伊邪那岐命は、伊邪那美命がなかなか戻ってこないため、自分の左の角髪(みずら)につけていた湯津津間櫛(ゆつつなくし)という櫛の端の歯を折って、火をともして中をのぞき込んだ。すると伊邪那美命は、体は腐って蛆がたかり、声はむせびふさがっており、蛇の姿をした8柱の雷神(八雷神)がまとわりついていた。

おののいた伊邪那岐命は逃げようとしたが、伊邪那美命は自分の醜い姿を見られたことを恥じて、黄泉醜女(よもつしこめ)に伊邪那岐命を追わせた。

伊邪那岐命は、蔓草を輪にして頭に載せていたものを投げ捨てた。すると葡萄の実がなり、黄泉醜女がそれを食べている間、逃げた。しかしまだ追ってくるので、右の角髪(みずら)につけていた湯津津間櫛(ゆつつなくし)という竹の櫛を投げた。するとタケノコが生え、黄泉醜女がそれを食べている間、逃げた。

伊邪那美命はさらに、8柱の雷神と黄泉軍に伊邪那岐命を追わせた。伊邪那岐命は十拳剣で振り払いながら逃げ、ようやく黄泉の国と地上の境である黄泉比良坂(よもつひらさか)の坂本に着いたとき、坂本にあった桃の実を3つ投げたところ、追ってきた黄泉の国の悪霊たちは逃げ帰っていった。

ここで伊邪那岐命は、桃に「人々が困っているときに助けてくれ」と言って、意富加牟豆美命(おほかむずみのみこと)と名づけた。

最後に伊邪那美命本人が追いかけてきたので、伊邪那岐命は千人がかりでなければと動かないような大岩で黄泉比良坂をふさぎ、悪霊が出ないようにした。その岩をはさんで対面して、この夫婦は別れることとなる。

この時、伊邪那美命は「私はこれから毎日、一日に千人ずつ殺そう」と言い、これに対し伊邪那岐命は「それなら私は人間が決して滅びないよう、一日に千五百人生ませよう」と言った。これは人間の生死の由来を表している。

この時から、伊邪那美命を黄泉津大神、また坂道を追いついたから道敷大神(ちしきのおほかみ)とも呼び、黄泉比良坂をふさいだ大岩を道返之大神(ちかへしのおほかみ)・黄泉戸大神(よみとのおほかみ)ともいう。なお、古事記では、黄泉比良坂は出雲国の伊賦夜坂(いふやのさか;現在の島根県松江市の旧東出雲町地区)としている。

禊祓と三貴子の誕生
伊邪那岐命は黄泉の穢れから身を清めるために、竺紫(つくし)の日向(ひむか)の橘の小門(をど)の阿波岐原(あはきはら;現在の宮崎県宮崎市阿波岐原町)で禊を行った。衣を脱ぐと十二神が生まれた。

「上流は流れが速い。下流は流れが弱い」といって、最初に中流に潜って身を清めたとき、二神が生まれた。この二神は黄泉の穢れから生まれた神である。

次に、その禍を直そうとすると三神が生まれた。
水の底で身を清めると、二神が生まれた。
水の中程で身を清めると、二神が生まれた。
水の表面で身を清めると、二神が生まれた。

底津綿津見神・中津綿津見神・上津綿津見神は、これら三神の子の宇都志日金析命(うつしひかなさくのみこと)の子孫である阿曇連らに信仰されている。底筒之男神・中筒之男神・上筒之男神は、墨江(住吉大社)の三柱の大神(住吉三神)である。

左の目を洗うと天照大御神が生まれた。右の目を洗うと月読命が生まれた。鼻を洗うと建速須佐之男命が生まれた。伊邪那岐命は、最後に三柱の貴い子を得たと喜び、天照大御神に首飾りの玉の緒を渡して高天原を委任した。その首飾りの玉を御倉板挙之神(みくらたなのかみ)という。月読命には夜の食国(をすくに)を、建速須佐之男命には海原を委任した。
出典Wikipedia

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