デーメーテールの地上彷徨
オリュンポスでは、ペルセポネーが行方知れずになったことを不審に思った母デーメーテールが、太陽神ヘーリオスからゼウスとハーデースがペルセポネーを冥府へと連れ去ったことを知る。女神はゼウスの元へ抗議に行くが、ゼウスは取り合わず「冥府の王であるハーデースであれば夫として不釣合いではない」と発言。これを聞いたデーメーテールは、娘の略奪をゼウスらが認めていることに怒り、オリュムポスを去って地上に姿を隠す。
女神は地上で老女の姿となり、炬火を手にして各地を放浪して娘の行方を探る。デーメーテールは地上を彷徨していたあいだ、各地で様々な伝承を残す。もっとも有名なものは、女神がエレウシースを訪れたときの物語で、エレウシースの秘儀は、この神話から始まっているとされる。
デーメーテールは大地の豊穣を管掌する大女神であったため、彼女がオリュンポスを去った事によって、地上に大規模な不作や凶作をもたらした。ゼウスはデーメーテールに娘の帰還を約束するが、コレーが冥府にある間、食物を一切、口にしていないという条件をつけた。
四季の始まり
ペルセポネーは冥府にあって、一口の食物も口にしなかった。しかし、女神はヘルメースがゼウスよりの使者として訪れ、彼女の地上への帰還を伝えに来たとき、うっかりしてハーデースの勧めを受け入れ、ザクロの実を4粒(3粒ないし6粒ともいわれる)食べてしまった。ハーデースの支配する冥府では、そこの食物を食べたものは客として扱われたことになり、そこに留まらなければならない規則となっていたが、ペルセポネーはこの禁を犯してしまった。
ハーデースとペルセポネー
ハーデースはペルセポネーを地上に還し、母親デーメーテールに渡す。しかし、ペルセポネーがすでに冥府でザクロの実を食べていたことが分かったため、ペルセポネーは再び冥府へと戻らねばならない定めとなる。デーメーテールの主張やオリュムポスの神々の意見を元に、神々の父ゼウスはこの問題に採決を下し、ペルセポネーは1年の3分の1はハーデースの許で暮らし、残りの3分の2を神々の世界や地上に暮らすとした。
この神話がエレウシースの秘儀で伝授される「神秘」であるが、これは植物の冬季における枯死と、春における再度の蘇りの神話である。またこの神話は、地上に四季が存在することの根拠譚でもある。すなわち、このような経緯をもって母娘共に大地の豊穣を約束する女神(デーメーテールとペルセポネー)が、1年のある期間にあって不在となったため、冬が生まれ四季が生じたとする起源譚となる。
冥府の女王ペルセポネー
ハーデースの略奪によって冥府に来たペルセポネーであるが、女神は英雄ヘーラクレースが冥府に降りてきた際、冥府の女王として、ハーデースの傍らの玉座にあり、あるいはオルペウスが亡き妻の帰還を求めて冥府くだりを行ったときにも、ハーデースと共に玉座にあった。ペルセポネーは恐るべき「冥府の女王」ともされる。
背景
ハーデースによるペルセポネーの略奪は、古代ギリシアにおいて行われた略奪婚の風習を表している。これは夫となる男性は、相手の女性を父親から奪うくらいの力強さがなければ娘を嫁にやることはできないという考え方に基くものであり、当時の倫理観からいえば必ずしも正義にもとるものではなかった。
その他の説・補足
大まかな経緯は上記のとおりだが、ハーデースのペルセポネー誘拐については諸説ある。ゼウスの手を借りず、ハーデースが独断でペルセポネーを拉致した。ゼウスがハーデースの申し出にあっさり許可を出したのは、デーメーテールが許可しないことを見越していたため。実はハーデースも同じ意見で、2人は最初からデーメーテールに無断で攫うつもりだったともいわれる。
ハーデースはデーメーテールの許可も取ろうと考えていたが、ゼウスが「私から説得しておこう」と言ったのでデーメーテールには黙っていた。ゼウスは説得に行かなかったとの説や、行ったがデーメーテールの機嫌が悪く、言い出せなかったという説もある。
ペルセポネーがザクロを食べてしまった理由は、上記の他に空腹に耐えかねて食べてしまったとの説、冥府の庭師アスカラポスが騙して食べさせた説、掟を知らない彼女が冥府でハーデースに丁重に扱われた感謝の意味で軽い気持ちで食べてしまったとの説、またペルセポネーが地上に帰れることになって喜んだときに、そのほころんだ口元にハーデースがすかさずねじこんだという説もある。
ゼウスの発言である「冥界の王であるハーデースならば、夫として不釣合いではないだろう」は、ハーデースとペルセポネーの結婚が決定して意気消沈していたデメテルに、ヘーリオスが言った。『デーメーテール讃歌』がこうなっている。
上記にもあるようにペルセポネーが結婚を承諾した理由に、冥府で孤独に苛まれていたハーデースの身の上を知ったからとの説。これはハーデースが誘拐したペルセポネーに自分の身の上を嘆いたから。
出典 Wikipedia
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