アルゴナウタイ
コルキスの金羊の毛皮を求めるイアーソーンの呼びかけに応じて、ヘーラクレースも数多の英雄と共に、アルゴー船に乗り込んだ。レームノス島の女たちの誘惑にも打ち勝ち、快楽に耽っていた他の英雄たちを叱咤して再び出航させるなど、ヘーラクレースはアルゴナウタイの中でも抜きん出た存在であった。
しかしミューシアーにおいて、ヘーラクレースの愛していたヒュラースが水のニュンペーに攫われてしまい、ヒュラースを探している内にアルゴー船は出航してしまった。置き去りにされたヘーラクレースは、アルゴー船を追うのを止め、アルゴスへと帰還した。ヘーラクレースは最強の存在でありながら、アルゴナウタイから脱落してしまったのである。
一説には、この時、一部の乗組員はヘーラクレースを乗船させるためにティーピスに船を戻させようとしたが、カライスとゼーテースがこれを妨害した。このことを恨んだヘーラクレースは、後に二人をテーノス島で殺したという。
ギガントマキア
全宇宙を揺るがす大戦争に、ヘーラクレースは神々と共に参戦した。ガイアは、ゼウスたちオリュンポスの神々から宇宙の支配権を奪い取るために、ギガースという山よりも巨大な怪力の巨人たちを送り、ギガントマキアーと呼ばれる大戦を勃発させた。ギガースたちは神々には殺されないという不思議な力を有していたため、ゼウスは半神半人であるヘーラクレースをオリュンポス側として参戦させた。
ギガースはあらゆる地形を引き裂いて突き進み、大岩や山脈、島を投げ飛ばして攻撃した。神々もそれに応戦し、戦闘の衝撃によって天地は轟き、全宇宙が震えた。凄まじい戦いが繰り広げられたが、神々の方が優勢であり、ギガースは次々に敗北していった。弱ったギガースをヘーラクレースの毒矢が襲い、ヘーラクレースにとどめを刺されたギガースは絶命した。パレーネーの地に触れている限り無敵の力を得る最強の巨人もいたが、ヘーラクレースの圧倒的な怪力によって、その地から引き剥がされ、彼の剛腕によって殺された。ヘーラクレースの活躍もあり、ギガントマキアは神々の圧勝に終わった。
ヘーラクレースの最期
ヘーラクレースとその妻デーイアネイラは、彼らの子供であるヒュロスを連れて旅をしていた。ある日、ヘーラクレースは川を渡ろうとしたが、家族と共に渡るにはあまりにも流れが激しすぎた。
その時、ちょうど川辺にいたケンタウロスのネッソスが、デーイアネイラを担ぐと申し出たので、ヘーラクレースがヒュロスを担ぎ、ネッソスがデーイアネイラを担いで激流の川を渡った。しかし、早く向こう岸に着いたネッソスがデーイアネイラを犯そうとしたために、ヘーラクレースはヒュドラーの毒矢でこれを射殺した。ネッソスはいまわの際に
「自分の血は媚薬になるので、ヘーラクレースの愛が減じた時に衣服をこれに浸して着せれば効果がある」
と言い残した。デーイアネイラはその言葉を信じ、ネッソスの血を採っておいた。
後にヘーラクレースが、オイカリアの王女イオレーを手に入れようとしているのを察したデーイアネイラは、ネッソスの血に浸した服をリカースに渡してヘーラクレースに送った。ヘーラクレースがこれを身につけたところ、たちまちヒュドラーの猛毒が回って体が焼け爛れ始めて苦しみ、怒ってリカースを海に投げて殺した。ネッソスの血には、ヒュドラーの猛毒が仕込まれていたのだった。
あまりの苦痛に耐えかねたヘーラクレースは、木を積み上げてその上に身を横たえ、ポイアースに弓を与え(後に、この弓はポイアースの息子ピロクテーテースのものになる)、火を点けるように頼んだ(火を点けたのは、ピロクテーテースだともいわれる)。こうしてヘーラクレースは、炎に包まれて死んだ。これを知ったデーイアネイラは自殺した。
ヘーラクレースは死後、神の座に上った。この時に至ってようやくヘーラーもヘーラクレースを許し、娘のヘーベーを妻に与えたという。そしてヘーベーとの間に、アレクシアレースとアニーケートスという二柱の息子を儲けた。
ヘーラクレイダイ
ヘーラクレースの子孫たちは、ヘーラクレイダイと呼ばれた。ヘーラクレースの死後、その子供たちがミュケーナイの王位を望むことを恐れたエウリュステウスは、ヒュロスらを殺そうとして追い回した。アルクメーネーとヒュロスらは、アテーナイのデーモポーンに助けられた。エウリュステウスは、ヒュロスらの身の受け渡しを要求し、それに応じないアテーナイと戦った。この戦争の中でヒュロスはエウリュステウスの子をすべて討ち取り、エウリュステウスは捕らわれて殺された。
ヒュロスたちは、エウリュステウスとの戦争に勝ったが、故郷であるペロポネソス半島に未だに戻れずにいた。しかし、ヒュロスの孫たちはミケーネやアルゴスを打ち破り、遂にペロポネソス半島へと帰還することができた。その際、テーメノスがアルゴスを、アリストデーモスがスパルタを、クレスポンテースがメッセニアを支配することになった。
この内、テーメノスの子供であるペルディッカスは、アルゴスの王位継承争いに敗れて追放され、ギリシア北方の地にマケドニア王国を建国した。したがって、アルゴス人やスパルタ人、マケドニア人はヘーラクレースの子孫とされた。また、彼らは皆ドーリス系ギリシア人であったので、ヘーラクレイダイの帰還はドーリス人のギリシア侵入と関連付けられている。
大衆文化への影響
アガサ・クリスティーが生み出した名探偵エルキュール・ポアロのファーストネームHerculeは、ヘーラクレースのフランス語形である。これにちなんで、アガサには「ヘラクレスの冒険」という短編集もあり、ヘーラクレースの古典的物語と関連づけられている。その他、多くのものがヘーラクレースにちなみ、その名を冠している。
出典Wikipedia
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