2020/01/05

イエス・キリスト(5) ~ イエスの奇跡

出典http://timeway.vivian.jp/index.html

本当に奇跡を起こしたのでしょうか。ここは授業としては触れにくいところだね。
雑談として聞いてくれればいいけれど、私としては病を癒すというのはある程度あったと思います。ある程度ですよ。

イエスの病癒しには、盲目の人の目を開いたり、血の道で苦しむ女性を治したり色々あるのですが、精神的な疾患と考えられるものもかなりある。そこへイエスが現れて、悪霊祓いをする。そして、権威あるもののように「あなたは治った、大丈夫だよ」と言われたら、それだけでホントに治ってしまう、そういうことは、ありそうでしょ。病は気から、という部分ね。

もう一つは、いわゆる手かざしというやつです。ハンドパワーと言うのかな。みんなは知らないと思うけど、何年か前に高塚ヒカルさんという人がいた。今もいると思うけど。この人は普通のサラリーマンなんだけど病気の人の患部に手をかざすと、その病気が治ってしまうので有名になった。たしか、映画まで作られたと思うよ。高塚さん本人にも、何で病気が治るかわからない。けど、自分が手かざしをすると治ってしまうので、あちこちから引っ張りだこでした。

稀に、そういう理屈ではわからないパワーを持った人がいるんだね。前に勤めていた学校でもいました。生徒でね。男の子なんだけど、彼はおとなしい普通の子なんだけど、体育の時間が終わると彼の前に行列ができるの。クラスメイトがね、順番を待ってかれに手かざししてもらうわけです。肩とか、太股とか、そうすると筋肉痛が治ってすっきり。体力が回復するんだって。先生もしましょうか、なんていわれました。私は遠慮しましたが。学年では有名人でした。ホントに治るのか、どうか知りませんよ。ただ、やってもらった人が治った、スッキリしたと感じるということです。イエスは、特にそういうパワーを多く持っていたのかもしれない。

イエスの奇跡の話は、聖書にたくさん出てきます。中には荒唐無稽なものも多くある。イエスの説教に数千人が集まった。この聴衆に、イエスの弟子が食事を配る。パンが5つと魚が2尾しかなかったのに、全員に配れたという話。それから、ラザロという若いイエスの支持者が死ぬんですが、イエスが死後数日後に「ラザロ出てこい」と呼びかけると、ラザロが生き返って墓穴から出てきたとかね。

これらはイエスの死後、伝説として創作されたと思われますが、ポイントはこんな荒唐無稽な話でも、その当時の人々が「イエスなら、ありえる話だ」と受けとめたということでしょう。

 病癒しの話の中に、気になるのが一つあります。ゲラサ人の病人を治す話です。この人は頭がおかしくなっていて、墓場で裸になって叫び続けているんです。周りの人が足かせで縛ったりするんですがすぐに引きちぎって、石で自分の身体を傷つけたりする。
イエスはゲラサ人の土地にやって来て、彼に憑いている悪霊を退散させるんですが、この時に悪霊に名を尋ねる。すると悪霊が名乗るんですが、その名が「レギオン」。ガメラと戦った怪獣にいたね。

実はレギオンというのは、ローマ軍団のことです。そうすると、これは単なる病癒しの話を超えた何かを暗示しているようだね。イエスの物語はローマの支配と無関係ではなかったし、イエスが治したというたくさんの病人の病気とは、実のところ何だったのかということまで、私なんかは考えてしまいます。

 話がだいぶあちこちに飛びましたが、イエスはユダヤ教の解釈し直しと病癒しによって、短い間にものすごく評判になります。多くの支持者を集める。彼の行くところには、人々が群がるようになる。イエスこそが待ち望んでいた救世主だ、と考える人々も多くなってきました。

イエスが評判になると、ユダヤ教の指導者たちは面白くない。それで、なんとかイエスの信用を落として、あわよくばイエスの落ち度をとらえて逮捕処刑しようと考えます。
ユダヤ教の指導者たちの手下、スパイたちがイエスの身辺に現れて彼の言動を探ったり、色々な罠をかけるようになるんですね。

聖書に、姦淫する女の話が出てきます。ある時、そのスパイ連中がイエスの前に一人の女を連れてきます。その女は、姦淫している現場を見つかったのね。夫がいながら他の男性と関係を結んでいたんです。これは当然戒律違反で、死刑にあたります。姦淫した女は石打の刑といって、みんなに石をぶつけられて殺される決まりでした。

で、彼らはイエスに向かって言う。イエスよ、あなたはこの女をどうするのか。
これは、罠です。イエスがもし、この女を許すべきだと言えば、戒律破りを堂々と認めることになる。姦淫ですからね、戒律破りといっても、日本でも戦前だったら犯罪にあたる行為です。これを認めたら、イエスは無法者だと触れ回られるでしょ。

もし、「許さない、死刑だ」といえば、イエスの言動に励まされてきた多くの貧しい者、虐げられた者達を裏切ることになるわけです。
「なんだ、イエスは口ではわれわれの味方みたいに言っているが、いざとなれば戒律を守れというんだな」と思われるでしょ。
どちらにしても、イエスは信用を落とすことになる。巧妙な罠です。

この時、イエスはこう言う。

「あなた達の中で、今まで罪を犯したことがないものがいれば、この女をぶちなさい。」

女の周りには石を持った男たちが、撃ち殺してやろうと取り囲んでいたんだ。だけど、イエスの言葉を聞いて、一人、また一人と石を置いて、そこから立ち去っていった。実に感動的な場面です。しかも、イエスの機知も伝わってくる。客観的に戒律が正しいかどうかなんてことは、イエスは言わないのですね。あなたはどうなのか。それをみんなに突きつけた。

 もう一つ罠の話。やはりスパイ連中が、イエスに質問します。
「イエスよ、われわれはローマ帝国に税を納めるべきかどうか。」
イエスは、貧しい者の味方です。収めなくてもいいと言えば、貧しい者達は喜ぶでしょうが、それはローマ帝国に対する明らかな反逆行為になります。死刑にされてもしようがない。

納めよといえば、やはりこれもイエスらしくない発言で、支持者は失望するでしょ。イエスはコインを見せよ、といってコインを手に取る。そして、質問したものに逆に質問する。これは誰かと。ローマのコインには、皇帝の肖像が刻まれているんですよ。スパイは答えます。「カエサルだ。」

イエスは言うんだね。
「カエサルのものはカエサルに返しなさい。神のものは神に返しなさい。」
税がどうのこうのという前に、お前さん、ちゃんと神に対して正しい信仰を持っているのかい。そういってイエスは、逆にスパイをやりこめているようです。

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