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ヘラクレスはペルセウスの子孫であり、そのことが彼の運命を決めてくるという意味で、ペルセウスとの関係は重要となっている。ヘラクレスの伝説というのは、ギリシャの創世記の先祖の勲の思い出を背景にしていると考えられ、したがって詩人ホメロスの叙事詩にも頻繁に出てくる。また、詩人ヘシオドスの物語にも「12の難行」を含めて色々触れられていて、ごく初期からの伝説であったと言える。物語の時代設定は、今指摘したように「ペルセウスの子孫」となっていて、また「アルゴー船伝説の登場人物」となっている。
悲劇作家達が、12の難行を含んだ様々なヘラクレス伝説に題材をとった多くの悲劇を書いている。悲劇作家の作品のうち、エウリピデスの『ヘラクレス』『ヘラクレスの子供達』『アルケスティス』が現存している。アイスキュロスとソポクレスのものは、残念ながら断片しか残っていない。また喜劇の中でも登場し、アリストパネスの『蛙』などが面白い。ヘラクレス伝承は話しが長く煩雑だが、テーマごとに区切ると以下のようになる。
ヘラクレスが孕まれる次第
1.例によってゼウスの浮気で、相手はテバイに亡命していたアンピトリュオンという男の妻であった「アルクメネ」となる。ゼウスがとった仕方は、出征中の夫の姿に身を変えて、凱旋したように見せかけてアルクメネのもとに行く、というものであった。
2.アンピトリユオンも戻ってきて、彼も妻のアルクメネを早速にも抱いて、結局アルクメネは「二人の子供」を生んでくることになる。
3.一人はゼウスの子供、もう一人はアンピトリュオンの子供で、そのゼウスの子供がヘラクレスとなる。
ヘラクレスの誕生
1.ゼウスはヘラクレスが生まれてくる時、彼をミケーネの王にしてやろうと思って「今度生まれてくるペルセウスの子孫が(ヘラクレスは、その子孫だったので)ミケーネの王となる」と宣言したが、その意図を察知したヘラが例のごとく嫉妬の炎を燃やし、自分の配下にいる出産の女神エイレイテュイアに命じて、アルクメネの出産を遅らせてしまい、まだ七ヶ月であったステネロスという男の子供を先に生ませてしまった。
2.その子供がエウリュステウスといい、彼もペルセウスの子孫であったので、ゼウスの今の宣言に基づいて、ヘラクレスを出し抜く形でミケーネの王となってしまい、ヘラクレスに様々の難題を与えて苦しませることになる。
赤ん坊のヘラクレス
1.ヘラクレスはすくすくと育ち、八ヶ月となったときヘラが再び邪心をおこし、ヘラクレスを殺そうと二匹の蛇をヘラクレスの寝ているゆりかごに送りこんでくる。
2.母親のアルクメネはびっくりして夫のアンピトリュオンを呼ぶが、その前にまだ八ヶ月の赤ん坊であったヘラクレスはスックと立ち上がり、この二匹の蛇を両手でつかみ絞め殺してしまう。
ヘラクレスの少年時代
1.少年となったヘラクレスは、様々の武芸を一流の師匠について学び、また竪琴をオルペウスの兄弟であったリノスに学ぶ(音楽は後のギリシャにあっても、教養の第一にあった)。
2.師匠リノスに殴られたヘラクレスは怒り、竪琴でリノスを殴り殺してしまう。こうした乱暴を父アンピトリュオンは心配し、ヘラクレスを牧場へと送ってしまう。ヘラクレスはこの田舎で育ち、武芸百般、弓矢においても槍においても百発百中の腕を身につけた。
成人の後
1.18歳のヘラクレス、50人の娘と交わる。
2.キタイロン山の獅子退治。
3.ヘラクレス、エルギノスを挑発、攻めてきたエルギノスとの抗争。
4.父アンピトリュオンが討ち死に。ヘラクレスの活躍。テバイの王であったクレオンから褒美として娘のメガラをもらい、三人の息子を得る。
5.女神ヘラは再びヘラクレスを憎み、ヘラクレスを発狂させる。発狂のヘラクレス、子ども達を殺害してしまう。
6.狂気から覚めたヘラクレスは絶望して、自分を「追放の刑」に処する。
7.アポロンに今後のことを占ってもらうべく、デルポイへと赴く。
8.アポロンの巫女はヘラクレスに「テュリンスに行って、エウリュステウスに12年間仕え、命じられる10の仕事をしろ、さすればお前は不死の身となろう」と神託を与える。
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