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前回のテーマであった「プラトン」の弟子として「アリストテレス」がもっとも有名で重要な哲学者となります。一般的には「学の体系化」ということを史上初めて成し遂げた哲学者として紹介されます。アリストテレスの哲学は、プラトンと並んで「哲学史」の中核となっています。
アリストテレスは紀元前384年~322年の人なので、したがってプラトンと43歳くらい年下ということになります。奇しくもソクラテス、プラトン、アリストテレスは夫々43歳くらいずつの年齢差ということになります。
アリストテレスは、ギリシャ北方スタゲイラに生まれました。父は、後にアレクサンドロス大王を生み出す「マケドニア王家」の侍医であり、このことはアリストテレスの生涯、学問傾向にとって重大な影響を与えることになります。アリストテレス自身、やがて「アレクサンドロス大王の家庭教師」となってみっちり学問を仕込み、それが「稀代の大王アレクサンドロス」を育成することになるのでした。
アリストテレスの学の体系
アリストテレスの学問傾向としては、「医家」の子として初めから「生物学的志向」が強く、これは彼の思考方法を決定的にしています。
アリストテレスの哲学は多岐にわたり、それが体系化されていることに最大の特徴があり、広範な領域の学の分類と緻密な観察に基づく理論体系が特質であって、結果的に「学問の祖」といわれるような在り方を示したのでした。
アリストテレスにおいては、「哲学」とは「学問」と同じ意味だったのです。これをバラバラにしてしまったのは「近代」のことであり、そこには長所も短所もあるのですが、現代では「短所」が目立つようになっています。私達は「学問はすべて連動して一つであった」ということをしっかり思い出し、新たな学問の構築へと向かわなければならない時期にきているとも言えます。
それはともかく、彼の著作は今日残っている著作集によると(若い頃の作品は散逸して、一部しか残っていない)、次のように整理できます。
1、論理学書・・・学問的考察の方法論としての「論理」についての著作
カテゴリー論、命題論、分析論前書、分析論後書、トピカ、詭弁論駁論
2、生物学書・・・主に動物に関する書
動物誌、動物部分論、動物運動論、動物進行論、動物発生論
3、医学書・・・人体に関するもの、心理・感情、医学的内容
気息について、自然学小論集、(自然学的)問題集
4、天文・気象学・・・天体論、宇宙論、気象論
5、自然学書・・・存在の基本である自然的存在物の基本構造について
自然学(あえて言うと、今日の物理学に相当)、生成消滅論
6、心理学書・・・生物の生物的原理についての書、人間については心理学に相当
霊魂論
7、存在論・・・自然学の後におかれる書。「存在そのものの原理」についての書。
形而上学
8、倫理学書・・・社会の中での人間の行為の在り方
ニコマコス倫理学、エウデモス倫理学、大道徳学
9、政治、経済学書・・・倫理学に連なる書。ならびに各論。
政治学、アテナイ人の国制、経済学
10、弁論術書・・・弁論術、アレクサンドロスに贈る弁論術(ただし偽作)
11、演劇論・・・詩学
12、その他・・・小品集、断片集
こうしてみると、大半が今日的に言えば「自然科学的著作」であることが理解されるでしょう。しかし、これらはすべて「哲学の書」だということに注意してください。繰り返しますが、「人間から自然を切り離して」しかも「バラバラに」してしまったのは「近代」のことなのです。本来「人間も自然も一つ」だったのです。
だからアリストテレスは「人間の基盤としての自然」を問題にしていたのでした。自然を問うとは「人間を問う」ことと同じだったのであり、間違っても「自然はただの物体で、人間は自然を支配し人間の役に立たせる」などといった近代的自然観などありませんでした。
他方、「すべての存在を類別している」ということも読み取れます。アリストテレスの学の方法論というのは、まず「一つ一つの現象を緻密に観察し、それらを類別し、それぞれの性格を分析し、問題を明らかにしていく」といった形だったからです。
アリストテレスの全面的紹介は、今示したように彼の業績が多岐にわたるため「一冊の本」を必要としてしまいますが、ここではプラトンを引き継ぐような形で、その「存在についての考え方」と「人間の生き方としての倫理学」に限定して紹介します。
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