2020/04/26

テセウス伝説と迷宮の神話(ギリシャ神話77)

クレタ島の迷宮の神話とミノタウロス退治
出典http://www.ozawa-katsuhiko.com/index.html

 テセウス伝説は、アルゴステバイに遅れて台頭したアテナイの英雄伝承である。アテナイは初期の時代は、おそらくクレタ島のミノア文明の支配下に置かれていたと考えられる。そこからの脱却が「クレタ島の迷宮でのミノタウロス退治伝説」となるが、時代設定的には「アルゴー船伝説」に登場するメデイアヘラクレスが登場するので、その時代に設定しておく。この時代は「トロイ戦争伝説」に先立つ時代となる。

【アイゲウスの物語】
伝承は、テセウスの父となるアイゲウスから見なければならない。
1.アイゲウスが、アテナイの王となって妻をめとったが子どもができない。そこでアイゲウスは神託を乞いにデルポイに赴き、子どもができる方法の神託は得たが、訳が分からないまま帰途につく。

2.その帰り道、トロイゼンに寄った。(後で見るようにテセウス伝説は、このトロイゼンからとなる。アテナイとは内湾を隔てた対岸にあり、歴史時代にもアテナイとは非常に関係の深い町で、これが逆に「トロイゼン発のテセウス伝説」を創らせたのかもしれない)。

3.アイゲウスは、トロイゼンで自分が受けてきた訳の分からない神託の話をする。その神託とは「酒袋の突き出た口を、アテナイに戻るまで解いてはならない」というものだった。これはペニスを意味しており、子宝は授けてやったからアテナイまでムダにするな、ということだった。トロイゼンの王は、その意味が分かったが黙っていた。

4.トロイゼンの王は、アテナイとの強いつながりを求めてか、自分の娘をアイゲウスと一緒に寝かせて交わらせてしまった。

5.アイゲウスは事態を悟って帰路に就く時、その娘に、もし子どもができ男の子だったら、それが誰の子どもであるかは秘密のまま育て、成長したらこれを取り出させて旅に出すようにと言いおいて、大岩の下にサンダルと刀を埋め隠しておいた。

6.その後のこと、アテナイでパンアテナイア祭が執り行われた時、クレタ島からミノス王の息子が参加してきて優勝してしまった。

7.そこでアイゲウスは、そのミノスの子にマラトンに出没して被害を与えている牡牛の退治に向かわせたところ、彼は逆に牡牛に倒されてしまった。

8.怒ったミノス王がアテナイを攻めようと、先ずアイゲウスの兄弟で不死身のニソスが支配するメガラを攻める。

9.攻めてきたミノス王を見て、メガラのニソスの娘が恋してしまう。そしてミノスの策略によって、父ニソスの不死身の秘密である頭の毛に一本だけある紫の毛を抜いてしまい、かくしてメガラは攻略されてしまう。

10.しかしミノス王は、逆にこの娘を「父を裏切った娘」ということで、船に脚をくくりつけて溺死させてしまう。

11.こうして、ミノスはメガラを根拠地にしてアテナイに迫ったが、戦いは膠着状態になってしまう。

12.ミノス王は、神ゼウスに祈り疫病を流行らせ、やむなくアテナイは降伏し、ミノスの条件を何でも飲まなけれならなくなった。


13.そのミノスの出した条件というのが、迷宮に住まわせているミノタウロスの餌食として、毎年七人の少年・少女を差し出すというものだった。

14.ミノス王が神ポセイドンへの約束を果たさなかった罰として、神が牛を送りつけて、ミノスの妻がその牛に子とするようにし向けた。彼女は、名工ダイダロスが作った張りぼての牝牛の中に身を潜めて牡牛と交わり、その結果「身体は人間、頭は牛」という怪物が生まれる。これがミノタウロス(意味は「ミノスの牛」となる)と名付けられた。そして、ダイダロスが作った迷宮に閉じこめておいたものだった。

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