ヒンドゥー教(Hinduism)
BC5世紀頃、バラモン教は仏教やジャイナ教の影響を受けて、ヒンドゥー教へと変化していった。ヒンドゥー教は、バラモン教からヴェーダ(聖典)やカースト制度を引き継ぐと同時に、土着の神々を受け入れたため非常な勢いで広まった。そして、AD4~ 5世紀には仏教を凌ぐようになり、現在も80%以上のインド国民が信仰している。
ヒンドゥー教は、神々への信仰とともに輪廻や解脱、河川崇拝といった独特な概念を持っている。ガンジス川の水は、シヴァ神の身体を伝ってきた聖水とされ、ガンジス川を神格化した女神ガンガーが崇拝されている。
ヒンドゥー教の三大神はブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァである。現在では、ブラフマーを信仰する人は減り、ヴィシュヌとシヴァが二大神となっている。
ブラフマー(brahman)
宇宙を創造した神。仏教では梵天と呼ばれる。サラスヴァティ(弁財天)
ヴィシュヌ(Vishnu)
温和・慈愛の神。マツヤやクリシュナなど10の化身がある。ラクシュミー(吉祥天)
シヴァ(Siva)
破壊の神。シヴァの化身がマハーカーラで、仏教では大黒天と呼ばれる。サティー、パールヴァティ(ガンガーの姉)、ドゥルガー
、カーリーなど多くの妻がいる
ヴィシュヌ(Vishnu)
4本の腕を持ち、右にはチャクラム(円盤)と棍棒を、左にはパンチャジャナ(法螺貝)と蓮華を持つ。妻はラクシュミー。創世神話では、宇宙ができる前にヴィシュヌのへそから蓮の花が伸びて創造神ブラフマーが生まれ、
ブラフマーの額から破壊神シヴァが生まれたとされている。
ヴィシュヌは、、英雄や土着の神をその化身(アヴァターラ)とすることで民衆の支持を集めた。ヴィシュヌは右の10の姿に変えて地上に現れている。
魚
マツヤ(Matsya)
人類の始祖マヌが川に入ると、小さな魚が助けを求めてきた。マヌは魚を瓶に入れて育てた。魚は、すぐに大きくなり池に移した。さらに大きくなり、川へそして海へと移した。ある日、魚は「7日後に大洪水が起こるから、船に7人の賢者とあらゆる種子を乗せなさい」と告げた。大洪水が襲ったがマヌ達は生き残り、地上に生命を再生させた。
亀
クールマ (Kurma)
神々が不死の霊薬を手に入れるため、海をかき混ぜた。ヴィシュヌは亀の姿になって、その作業を手伝った。
猪
ヴァラーハ(Varaha)
大地は洪水で水中に沈んでいた。ヴィシュヌは巨大な猪の姿になって、牙で大地を水の上に持ち上げた。
人獅子(ライオン男)
ナラシンハ(Narasimha)
悪魔ヒラニヤカシプは、人にも獣にも殺されない体になった。ある日ヴィシュヌの信者に「ヴィシュヌはどこだ」と尋ねた。信者は「どこにでもいます」と答えた。彼は調子に乗って「この中にもいるのか!」と柱を蹴ると、柱の中から人でも獣でもない人獅子の姿になったヴィシュヌが現れ、ヒラニヤカシプを殺した。
矮人(小さな人)
ヴァーマナ(Vamana)
悪神バリが、世界を支配した。ヴィシュヌは矮人になって現れ、3歩の広さの土地をもらう約束をした。すると、矮人は突然巨人になり、世界を2歩でまたいで3歩目でバリを踏みつけた。
斧を持つラーマ(Parashurama)
クシャトリア族が世界を支配した時、斧を持つラーマに化身したヴィシュヌが斧で彼らを全滅させた。
ラーマ(Rama)
叙事詩ラーマーヤナの主人公
クリシュナ (Krishna)
叙事詩マハーバーラタの英雄
ゴータマ・ブッダ (仏陀)
仏陀もヴィシュヌの化身で、悪魔に偽の宗教である仏教を広め魔力をなくした。
カルキ (Kalki)
この世の終わりに現れて悪から世界を救い、新しい世を始める救世主となる。
シヴァ(Siva)
シヴァは、暴風雨の神ルドラがモデルとなっている。暴風雨は風水害をもたらすが、土地に水や養分を運んで植物を育ててくれる。シヴァは暴風雨のように災いと恩恵を同時にもたらす神である。シヴァの子供がガネーシャとスカンダ。
ガネーシャ(歓喜天)
パールヴァティーとの間に産まれた子供。象の顔をし、大きなお腹で4本の腕を持っている。成功と幸運をもたらしてくれるため、インドで最も人気がある。商業や学問の神。
日本の仏教では歓喜天。
スカンダ(韋駄天)
ガンガーとの子供が軍神スカンダ(Skanda)。仏教では韋駄天。
スカンダという名前は、アレクサンドロス大王を示すイスカンダルに由来するといわれている。AliskandarのAlがカットされてIskandar になった。アニメ「宇宙戦艦ヤマト」に登場する惑星もイスカンダル。
スーリヤ(Surya)
太陽神で、仏教では日天といわれる。金髪に三つの目と四本の腕を持つ姿で現される。7頭の黄金の馬が引く戦車に乗り、暗黒を包み込んで天を駆ける。インドラと並ぶ実力を持つ。
インドラ(Indra)
雷を操る神で、仏教では帝釈天と呼ばれる。茶褐色の皮膚、一面四臂(一つの顔と四つの手)で、二本の槍を手にしている。ゾロアスター教では魔王とされる。ルーツは古く、BC14世紀のヒッタイト条文の中にも名前があり、小アジアやメソポタミアでも信仰されていた。
クベーラ(Kubera)
富と財宝の神。仏教に取り入れられて、四天王の一人毘沙門天となった。
アグニ(agni)
火の神。赤色の体に炎の衣を纏い、二面二臂(二つの顔と二つの手)で七枚の舌を持つ。アーリア人の拝火信仰を起源とする古い神。供物は祭火(アグニ)に投じられ、煙になって天に届けられる。地上の人間と天上の神との仲介者。インドのミサイルはアグニという。
ラーマーヤナ(Ramayana)
古代インドの長編叙事詩で、ラーマ王行状記の意味。王子ラーマが魔王にさらわれた妻のシータを猿王(ハヌマーン)の力を得て救い出すという話。桃太郎の原型。マハーバーラタとともに、古代インドの代表的な長編叙事詩。
コーサラ国のダシャラタ王に、ヴィシュヌの化身ラーマが生まれた。ラーマは学問・武術に秀でた青年に成長し、隣国の王女シータと結ばれた。しかし、ラーマは謀略にかかって王位に就けず、城外の森でシータと暮らし始めた。その森に魔王ラーヴァナの妹が通りがかり、ラーマを見初めた。彼女はラーマに迫るが、あっさり拒絶された。頭にきた彼女は、兄に頼んでシータを攫わせた。
ラーマはシータを捜す旅に出かけた。まず、猿の王スグリーヴァと知り合い、彼のために戦った。スグリーヴァはラーマに感謝し、各地の猿にシータを捜すよう指示を出した。部下の一人のハヌマーン(孫悟空のモデル)は、シータがランカ島(セイロン島)に連れ去られたことを突き止めてきた。ラーマは猿軍を率いてランカ島に上陸し、激戦の末ラーヴァナを討ってシーターを救出した。
その後、ラーマは捕らわれていたシータの貞潔を疑い始めた。シータは悲しみ火の中に身を投げた。彼女の純潔を知っている火の神アグニは、シータを火傷させずに火の中から救出した。
マハーバーラタ(Mahabharata)
マハーは「偉大な」、バーラタは「バラタ族の物語」という意味。バラタ族の内紛が戦争に発展し、英雄達が戦う様子を描いている。戦争で多くの親族や友人が犠牲になり、戦いに勝っても空しさしか残らない戦争の愚かさを訴えた話である。
バラタ族のパーンダヴァ家には、武術に優れ、絶世の美女ドラウパディーを共通の妻とする5王子がいた。一方、カウラヴァ家には、5王子と従兄弟関係にある100王子がいた。両家は仲が悪く、領土をめぐって対立し大戦争に発展する。親族同士の戦いにパーンダヴァ家の3番目の王子アルジェナは苦悩するが、クリシュナの助言を聞き入れて戦うことを決断する。
5王子やクリシュナの活躍で最終的にパーンダヴァ家が勝利し、5王子の長男ユディシュティラが国王となり、平和が訪れた。しかし、あまりにも多くの人を戦争で亡くしたため、5王子の心は晴れなかった。時は流れクリシュナも亡くなり、この世に何の未練もなくなった5王子とドラウパディーは巡礼の旅に出た。やがて彼らにも死が訪れ、天国でカウラヴァの100王子達と再会し穏やかに暮らした。
アルジェナはインドラの化身で、クリシュナはヴィシュヌの化身だった。
七福神とヒンドゥー教の神々
恵比寿
日本由来の神。「大漁追福」の漁業の神。時代と共に「商売繁盛」や「五穀豊穣」をもたらす福の神となった。右手に釣り竿を、左脇に鯛を抱える
大黒天
シヴァの化身マハーカーラ。
世界を破壊する時に、黒い姿で現れる。日本では神道の大国主(おおくにぬし)と同一視された。
毘沙門天
ヒンドゥー教のクベーラ。富と財宝の神、金毘羅、夜叉の王。多聞天ともいう。
弁財天
ヒンドゥー教の女神サラスヴァティ。芸術、学問を司る。4本の腕を持ち、白鳥やクジャクの上に座っている。ゾロアスター教のアナーヒターと同じ。
福禄寿
福(幸福)、禄(身分)、寿(寿命)備えた道教の神。長い頭で長い髭をはやし、鶴を従えている
寿老人
宋の人で道教の神。酒を好む頭の長い長寿の神。手には不老長寿の桃を持ち、長寿のシンボルである牡鹿を従えている。
布袋
唐の末期の禅僧。大きな袋を背負った太鼓腹の僧侶の姿で描かれる。
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