2022/01/05

大国主の物語 ~ 古事記と日本書紀の神々(4)

出典http://ozawa-katsuhiko.work/

 

大国主の物語、因幡の白兎

 この後、話は「すさのう」の子供たちの列挙となり、そして大国主に繋げられてきます。こうして話は「天つ国」の話から「出雲」系の英雄「大国主」の神の話へと転換しまして、やがて「国譲り」となり「天孫降臨」となっていくという、朝廷が強敵であった「出雲」を恭順させていく経緯を述べる見事な筋道が敷かれてきます。

 

 大国主の神の話は、全体的展開は大国主がこの国の主となる所以を述べるものですが、その説話そのものには多くの他の英雄たちの物語が「大国主のもの」として取り込まれてしまっているようで、かなり複雑になっています。

 

その始まりの話というのが、これは一般にもよく知られている「いなばの白兎」の話からでした。すなわち、大国主のたくさんの兄弟(といっても神々はみな兄弟みたいなことになってしまうわけで、同じ両親を親とする兄弟というわけではなさそうです)、それは八十神(やそがみ)と表記されます。

 

 その彼らが皆「稲羽(後の因幡で現在の鳥取県)の八上ひめ」と結婚しようと「稲羽」に行った時に「おおあなむじ」の神に旅の荷物を入れた袋を背負わせていきます。その彼らが「気多(現在の鳥取県気多岬)」に来たとき、一匹の兎が裸にされて横たわっているのを発見します。その兎に彼らは

「海の水を浴びて、風にあたり高い山の尾根に寝ているがいい」

と親切めかして助言します。しかし、そんなことをしたらたまったものではないわけで、哀れ兎の皮膚はひび割れ、塩が沁みてひどく痛みます。そして泣いているところに「おおあなむじ」が、やっと大きな荷物にヒーヒーいいながら通りかかってきました。

 

 そして泣いているわけを聞くわけですが、兎が答えて言うには

 

「自分は(現在の)隠岐の島(島根県)にいたのだけれどここに渡りたいと思い、鰐(ふか)を騙して仲間の数比べをしようと言って横並びにさせて、その上を渡ってきたのだけれど、渡り終わる時、騙したのだと言ってしまい、最後の鰐に捕まって丸裸にされてしまったのです。そして横たわっていると、八十神がやってきて助言してくれたのでそうしたところ、酷いことになってしまったのです」

 

というわけでした。

 

そこで「おおあなむじ」は兎に

「河口の方に行き真水で体を洗い、がまの穂を敷いて横たわっていれば直き良くなるよ」

と教えました。

 

兎がそうしたところ、元のように直りました。

 

これが「稲羽の白兎」というわけで、今は「兎神」となっているとされます。この時、その兎は

「八十神は決して、八上ひめを得ることは出来ません。荷物なんか背負わされているけれど、必ずあなたが得ることになるでしょう」

と言ったのでした。

 

赤い猪

 果たして、八十神が「八上ひめ」のところにきましたところ

「自分はあなた方とは結婚しません。おおあなむじと結婚するつもりです」

と答えました。

 

八十神はひどく憤り「おおあなむじ」を殺そうと思います。そして山につれていき、ここに赤い猪がいるが、これを追い出すからきっとそれを退治するのだぞといいつけて下に待たせておき、上から真っ赤に焼いた石を転がし落とします。

 

哀れ「おおあなむじ」は、その石に焼かれて死んでしまいました。それを「おおあなむじ」の母は悲しみ、天に行き「かみむすび」の神にお願いしたところ「赤貝」を意味する女神と「はまぐり」を意味する女神とを派遣してくださり、二人の女神が貝の粉と汁とで薬を調合して体に塗ってくれて、生き返ることができました。これは古代の「治療法」を語ったものなのでしょう。

 

「根の堅州国での大国主」

 これを見て、八十神は再び「おおあなむじ」を騙して山につれていき「木の俣」に挟んでしまいます。しかし、また母親が見つけてくれて助かりますが、母親はこんなところにいたらまたいつか殺されてしまうだろうということで、彼を遠くにやることにします。八十神はしつこく追いかけてきますので「おおやびこ」の神が「根の国」にいる「すさのう」の元に行くがよいと助言しまして、こうして「おおあなむじ」は「すさのう」のところに行き、これまたよく知られた「求婚説話」と呼ばれる「求婚に当たっての試練」の物語となります。

 

 すなわち、彼が「根の国」に行きましたところ「すさのう」の娘である「すせりひめ」と会い、二人は関係をもって「すさのう」のところに行きますが、すさのうは彼を試そうというのでしょうか、その夜、蛇のたくさんいる小屋に彼を寝かせます。

 

「すせりひめ」は、彼にへびの皮の「ひれ」つまりスカーフのようなものを渡して、蛇が食いついてきたらそれを三回振るようにといいました。果たしてそうしますと、蛇はおとなしくなり安眠できました。

 

次の日は「むかで」と「蜂」の小屋でしたが、同じように「すせりひめ」の助けで切り抜けました。次の日、「すさのう」は原っぱに鏑矢を遠く飛ばし、それを「おおあなむじ」に取りに行かせて、原っぱに火を付けてしまいます。彼の周りが火の海になってしまいましたところ、ねずみが現れて「内はほらほら外はぶすぶす」と言いましたのでそこを強く踏んだところ「穴」があき、そこに身を伏せている間に火は通りすぎていきました。矢の方は、ねずみが持ってきてくれました。「すせりひめ」は葬式の準備をし、「すさのう」も彼が死んだものと出てきましたので「おおあなむじ」は矢をもって出ていきました。

 

また次の日、今度は頭のシラミを取れと命じられましたが、そのシラミとは大ムカデでした。「すせりひめ」は「椋の実と赤土」を渡し、その実を砕いては赤土を口から吐き出させて、シラミをとっている振りをさせたところ、「すさのう」は心地よく眠ってしまいました。

 

 そこで、「おおあなむじ」は、「すさのう」の髪の毛を天井のたる木にくくりつけ、小屋の前には大石を置いて塞ぎ、「すさのう」の宝であった太刀と弓矢、また、琴を盗みだし、「すせりひめ」をおぶって逃げだします。ところが、琴が木にふれ大きな音がして「すさのう」は目を覚まし起きあがり、追いかけようとして小屋を引き倒してしまいますが、髪の毛をほどかなければなりません。その間に逃げていくことに成功します。とうとう「よもつひらさか」まで来たところで遠く「すさのう」が声を飛ばして、その太刀と弓矢で敵対する神々を追い払い

「大国主」となって国を支配し、すせりひめを正妻としてうかの山に宮殿を造れ」

と言ってきました。つまり、「すさのう」は「おおあなむじ」を認めたというわけでした。かくしてこの国、つまり「国つ神」の地、具体的には「出雲」は大国主のものとなったのでした。

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