ジュニャーナ・ヨーガ (ज्ञान योग)
ラマナ・マハリシ
高度な論理的熟考分析により、真我を悟るヨーガ。20世紀を代表する聖者の一人であるラマナ・マハルシは、このヨーガで大悟したとされているが、一般的に難易度の高いヨーガと云わざるを得ない。だが、巧く実践可能であるならば最も高度なヨーガとなりうるとの意見もある。ギャーナ・ヨーガとも表記される。
このヨーガの行者はジュニャーニ (ज्ञानि) と呼ばれる。
マントラ・ヨーガ (मंत्र योग)
聖音オーム
マントラを使うヨーガ。ガーヤトリー・マントラをはじめ、マハー・マントラ、ハレークリシュナ・マントラ等、主にサンスクリット語のインヴォケーション・マントラ(神を讃えるマントラ)などが広く用いられている。
師から弟子へと贈られるパーソナル・マントラ(最大でも4音節)は、個人別で大変差がある霊的成長を目的に、師によって特別にデザインされたアクシャラ音の強力な組合せである。そのマントラの振動は、練習者の肉体と霊体を浄化するだけでなく、その個人に必要な特定のチャクラを覚醒させる大きな手助けとなる。ヨーガの霊的求道者が、一生を通して毎日行う、大変重要なヨーガ練習の基本。
音(ヴァイブレーション=振動)のヨーガである、ナーダ・ヨーガ(नादयोग)の一種。
マントラに簡単なメロディをつけ、コール・アンド・レスポンス(初めに一人が一節を歌い、次に参加者が同様に歌う)方式で、複数人から大勢で歌うキールタン(कीर्तन)は、マントラの振動エネルギーをキルタニストが増幅させ、その場に大きなエネルギー・フィールドを構築する。キルタニストと自主的な参加者だけでなく、その場に居合わせた者まで浄化する優れた練習法。
キールタンと混同されやすいものにバジャン (भजन) がある。バジャンを歌うシンガーは確かに何某かの影響を受けるが、居合わせた者は、普通の音楽を楽しむ程の影響しか受けられないばかりでなく、バジャン・シンガー自身、聴衆の前で歌を披露することによって、自分のエゴを増幅させない注意が常に必要である。
古代のヨーガのテクニックによって悟りを得たブッダを開祖とする仏教のうち、日本の密教でいう真言や梵字は、このサンスクリット語の音を、多くは最終的に中国語に訳したものが、大陸を通って日本に輸入されているもので、輸入した日本人とそれを継承した日本人の外国語に対する聴力と発音能力の限界からか、本来のアクシャラ(サンスクリット語の各1音)の音とは異なる場合も多い(例:般若心経の「ギャーテー、ギャーテー」は「ジャーテー、ジャーテー=行って、行って」)。
現代では、ヒンドゥー教系新宗教とも言われる超越瞑想で、マントラを心の中で唱えて雑念を追い払う瞑想(超越瞑想)が行われる。
ジャパ・ヨーガ (जप योग)
基本的には、数珠を用いて定数のマントラを唱えるヨーガ。パーソナル・マントラの日々の練習は、この代表的なもの。目的に応じて、その他のマントラでも、もちろん行われる。
ジャパ用の数珠は、その練習に精妙なエネルギーを利用するので、ヨーガ的には天然素材であるが、キリスト教徒やイスラム教徒、仏教徒のジャパ用のロザリオ、念数などは、一部ガラス製のものも見受けられる。ジャパ練習のためには数珠の素材は大変重要で、目的や伝統、教義等によって異なる。トゥルシー聖樹、ルドラクシャ(菩提樹の実)、白檀、紫檀、水晶等が一般的。ビーズの総数はヨーガ的な伝統では108個であるが、半分数の54個、4分の1数の27個の簡易タイプも普及している。
紙に、定数のマントラの文字を書いてゆくものを、リキタ・ジャパという。
チベットのヨーガ
チベット語ではヨーガのことを
ワイリー方式:rnal 'byor (ネンジョル、ネージョル、ナルジョル)という。チベット密教にもさまざまなヨーガが伝承されている。
夢のヨーガ
夢のヨーガ、夢ヨーガ (チベット語: rmi-lam もしくは nyilam; サンスクリット語: स्वप्नदर्शन, svapnadarśana)は、チベット仏教の密教の階梯で行われるもの。チベット仏教では伝統的に、明晰夢を訓練で導き出す技術を養ってきた。最初は夢の中で、次は夢のない睡眠の中で、さらに24時間常にはっきり覚醒した状態を保つ訓練を行い、最終的に通常の覚醒そのものが夢であるという認識を目指す。
日本のヨーガ
阿字観
真言宗の伝統的な瞑想法で、僧侶の鍛錬の方法である。近年では、高野山に外部から瞑想はないのかという問い合わせがあり、一般向けにも指導が行われるようになった。
仏と行者の一体を観想するものが、阿字の観法である。正式な阿字観への言及は、弘法大師空海が口述したものを、その弟子実慧が記録したといわれる「阿字観用心口決」が最初といわれる。本尊である大日如来の象徴である阿字観掛け軸(大きな月輪(がちりん)の中に梵字の「阿」が蓮華の花の上に鎮座している図・曼荼羅)の前に座禅し、半眼または目を閉じて阿字観本尊を観じ、曼荼羅世界に入っていく。僧侶の指導の下で行われる。
近現代に創られた、新たな「ハタ・ヨーガ」にフィットネス等の要素を取り入れ改良を加えたものが、現代人に人気である。B.K.S.アイヤンガール(1918年
- 2014年)によって、滑らない個人用のマット上で実施することや、補助具を利用して安全性や運動の効果を高める工夫がなされた。
ハタ・ヨーガ(ヨーガ体操)
現代になって、ティルマライ・クリシュナマチャーリヤが重視したといわれる「シールシャーサナ」(頭立ちのポーズ、ヘッドスタンド)。
現代の英語圏では、アーサナに重点を置いた体操的なヨーガがハタ・ヨーガと呼ばれて広まっているが、マーク・シングルトンの研究によると、それは中世のハタ・ヨーガが連綿と現代に伝えられたものではない。その直接的な起源は、西洋の身体鍛錬(英語版)や体操法の影響を受けて、20世紀初頭の数十年間にインドで形成された「創られた伝統」であった。
現在、世界的に普及している体操的なヨーガのポーズの多くは、19世紀後半から20世紀前半に西洋で発達した身体鍛錬運動に由来しており、それらはキリスト教を伝道するYMCAやイギリス陸軍によってインドに輸入されたものである。伊藤雅之は、この西洋身体鍛錬に由来するヨーガ体操はハタ・ヨーガと呼ばれるが、現在のハタ・ヨーガのアーサナと、『ヨーガ・スートラ』に代表される伝統的な古典ヨーガや中世以降発展した(本来の)ハタ・ヨーガとのつながりは極めて弱いと指摘している。
1920-30年代に、西洋の身体鍛錬から発生した多様な体操法などが融合して、インド伝統のハタ・ヨーガの技法として確立した。「現代ヨーガの父」と呼ばれるティルマライ・クリシュナマチャーリヤ(1888年 - 1989年)も、西洋式体操の影響を受けた身体技法を自らのヨーガ・クラスに取り入れ、思想面にヴィヴェーカーナンダ(1863年 - 1902年)などのヒンドゥー復興運動の思想と『ヨーガ・スートラ』を援用した。現代の多くのヨーガのアーサナは、この現代のハタ・ヨーガがベースになっている。
シールシャーサナ(頭立ちのポーズ)やサルヴァンガーサナ(肩立ちのポーズ)は、クリシュナマチャーリヤが重要視したものといわれ、現代のほとんどのヨーガ教師は、クリシャナマチャーリヤとは別系統の人々も含め、直接的・間接的に彼の影響を受けていると言われる。
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