こうなると、どう考えても絶対に「偶然」ということは考えられない。
認めたくはないが、最早あの「タコ坊」は明らかに「明確なる意志」を持って、こちらと同じ電車の同じ車両に乗ってくるということが、間違いなく証明されたと言える。
そこまでは明らかだが、なんといっても不気味なのは
「なぜそうまでして、あの「タコ坊」がこちらと同じ電車を狙って、乗ってくるのか?」
の動機やら目的が、サッパリわからない点にあった。
これが、こちらが絶世の美少女だとか、或いは顔の売れた有名人いうのならまだしも理解できるが、残念ながらこっちはまったく無名な一市民に過ぎないのだ。
しかも、れっきとした男である。
こう言うと
「相手に、ホモっ気があったんじゃないか?」
などと、勘ぐられるかもしれない。
当時のワタクシが、脳ミソのスカスカなジャニ系タレントなど問題にならないような、知性の滴るイロオトコだったと仮定してみようか。
にしても、気楽な自由業のこちらとは違い、真面目に働いていそうな分別盛りの中年男が、わざわざ電車の時間を1時間以上もずらしてまで同乗しようなどという酔狂な真似をするものだろうか?
という疑問は、やはり拭えない。
第一、そこまで入れ込んでいたとしたら、様子などからしてなんらか怪し気な気配でもありそうなものだが、見たところ「タコ坊」がそのようなヨコシマな恋心に憂き身を窶しているようにはまったく見えず、繰り返すように仮面を被ったように毎度「世にも面白くなさそうな不景気な顔」を続けていたのである。
それはそれで安心すべきかもしれないが、そうなると結局また最初の疑問に戻ってしまい、この「タコ坊」の不可解なストーカー行為を説明する理屈に思い当たらないという、実になんとも厄介な状態であった。
どんなしつこい嫌がらせでも、その意図や狙いがハッキリしていればまだ対処のしようもあるだろうが、それがサッパリわからないのだから、まことにもってこれほど厄介かつ薄気味の悪いことはなかった Ψ(ーωー)Ψ
さて、ここまでこの物語を読んできた読者の中には、もしかすると
「タコ坊がストーカーなんかじゃなくて、単なる被害妄想じゃないのか?」
といった疑いを持っている人も居るのではないか?
世間一般によく見かける例として、もてない女性に限って「痴漢だ!」と騒ぎたてることがよくあるらしいが(?)、あの手の被害妄想的な勘違いに過ぎないのではないかと。
ところが残念ながらそうではなく、これは厳然とした客観的事実なのである。
それを証明するのがデータであり、前にも触れたようにあれだけ時間や車両を意図的にずらしたのにも関わらず、同じ車両に同乗している確率は80%以上であり、さらにはそれが1ヶ月やそこいらのことでなく、数ヶ月単位という期間に渡り延々と続いたのだから、これで「ストーカー認定」しない人間が居たら、よほど鈍感であるとしか言いようがない。
元々、当時はオトコマエと言われ(?)、また喫茶店やレストランなどに入ると、それまで空いていたのが決まって客がドッと増えてくるような、集客体質の強い「ラッキー
ボーイ」と言われただけに、電車に乗っていてもさりげなく近寄ってくるヤツがいて辟易したものだったが、それにはそれなりの常識的な節度があったからまだマシだったが、この「タコ坊」に限ってその厚かましさは我慢の限界を超えていた。
同じ車両に乗っていたとしても、向こう向きで顔が見えなかったり、或いは時には離れたところに立っていればまだ許せるが、コイツに限っては常に半径数 メートル内(こちらの立ち位置は、毎日同じでないのに!)に陣取って、あの世界の不幸を一身に背負ったような不景気で陰気な顔を、常にこちらに向けていたのである。
時には、珍しく向こうの方にいたと思っていても、次第に混雑してくるにつれて押し出されたような格好を装いながら、気がついた時には常にさりげなく傍にきているのだから、その気色の悪さは最早G並みのレベルに達していた!
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