●タコ坊の場合
どうやら彼女の様子から察するに、あれは単なる偶然や日課ではなく、本人の「明確な意思の元に、例の男にくっついている」のは明らかなようだった。
どうやら彼女の様子から察するに、あれは単なる偶然や日課ではなく、本人の「明確な意思の元に、例の男にくっついている」のは明らかなようだった。
となると、憎らしいのは、あの男だ。
チクショウ、あの「ラッキー野郎」め。
本来なら、あんな憎いやつは「痴漢ヤロー」とでも命名したいところだった。
が、よくよく目を凝らすと、憎たらしいことに確かにそう呼ぶには勿体無いようなオトコマエではないか!
年の頃は、20代前半から半ばに差し掛かろうというところか。
いわゆるジャニ系というような爽やかタイプではなく、もっと知的で底が知れないような、一種独特の雰囲気を備えていた。
どこかインテリっぽく、それでいて少し崩れたところのあるような、表現しがたい個性的なタイプだ。
うむ・・・あれでは、若い女が注目するのも無理はない。
正直言って、オレにだって、気にならない存在といえば嘘になるくらいだ・・・なんせ、オレにはホxっ気が・・・いや、何でもない。
なにか、アイツの傍にいると得をするような・・・そう、まさに「ラッキーボーイ」という呼称こそ、ヤツにはぴったりではないか!
これが「そこいら辺に転がっているようなオッサン」であったなら、単にお目当ての彼女の「障害物」としか認識しなかったろうが、いつしかあの彼女とともに「ラッキーボーイ」が気になる存在になっているではないか!
くそっ!
やっぱり、オレの「病気」は、まだ治ってなかったのか・・・
やっぱり、オレの「病気」は、まだ治ってなかったのか・・・
●忍の場合
「一目ぼれ」って、こういうことだったのね・・・
「一目ぼれ」って、こういうことだったのね・・・
あんなもの、所詮ドラマやマンガだけの架空の世界の話・・・所詮、現実のオトコなんて飢えたオオカミか野良犬のようなのばかりだと思ってたのに、あんな「いいオトコ」がいるなんて・・・
そんなに目の覚めるような美男子というわけではないけど、ちょっと何を考えてるかわからないような、あの独特の雰囲気がいいわ・・・ああ、ひと目見た時
から、もうメロメロよ・・・と言っても、とても真正面なんて立てない・・・だって、目が合っちゃったら困っちゃうじゃん。
変に警戒して、逃げられてもマズイし・・・そう、私は彼の背中に寄り添っているだけで幸せよ・・・なんか、ご利益がありそうで・・・この私のつまらない灰色の人生の中で、初めて「生きる希望」を与えてくれた彼・・・まさに、私にとっての「ラッキーボーイ」だわ・・・
●ラッキーボーイの場合
そのうちに、不思議なことに気付いた。
そのうちに、不思議なことに気付いた。
というのは先に書いたように、毎日の日課のようなもので帰りの電車の時間が大体同じになっていたのだが、それでも日によっては時間がずれることもある。
そんな際は、いつも見かける何人かの顔ぶれが、あまり馴染みのない顔ぶれに変わっているのは当然だ。
ところが不思議なことに、そんな風に時間がずれた時でもあの例の「タコ坊」だけが、いつに変わらぬあの不景気顔で載っているのである。
そのことに気付いた当初は
「ああ、タコ坊も残業か何かで遅くなったのかな・・・」
と、大して気にも留めていなかったのだが・・・
実際、いつもより1本、2本(急行の感覚は30分おきだった)遅れた場合でも、見慣れた顔が一人や二人は居ることは珍しくなかったのである。
ところが「タコ坊」に限っては、何本ずれても毎度毎度あの疲れたような不景気顔を見せているから、次第に薄気味悪くなってこようというものだ。
こうして
(なんでアイツは、いつも同じ電車の同じ車両に乗ってるのか?)
と芽生えた「疑惑」は、徐々に深まっていった ( ̄_ ̄;) うーん
0 件のコメント:
コメントを投稿