出典 http://www.geocities.jp/timeway/index.html
ここで、スパルタの話をしておきましょう。スパルタはアテネと並ぶギリシアの大国ですが、アテネのような民主政は発達せず、ギリシア世界の中でも特殊な国造りをしました。
スパルタには三種類の身分がありました。一番上に立つのが支配者であるスパルタ人、これが市民です。その下に、ペリオイコイと呼ばれる人々。ペリオイコイは軍事的な義務はありますが参政権がありません。不完全市民です。一番下がヘイロータイ。事実上の奴隷です。ヘイロータイが農業をします。スパルタは広い領土を持っていて、割合に平地も多い。この農村に住んでいるのが奴隷身分のヘイロータイです。
スパルタがアテネなどと比べて変わっているのは、この奴隷の人口が非常に多いところでした。アテネの市民は18万、奴隷が11万。市民の方が多い。スパルタは、市民が2万5千人。奴隷が20万。圧倒的に奴隷人口の方が多いんです。この奴隷が団結して反乱を起こしたら、2万5千人では負けるね。2万5千人で20万人を押さえつけるためには、どうしたらよいか。
スパルタ人は、非常に単純な答えを出します。スパルタ人一人ひとりが滅茶苦茶に強くなればよい、とね。そこでスパルタ人は、幼い時から非常に厳しく子供を育てました。厳しい子育
てをスパルタ教育と言うでしょ。ここから来ているんですね。
まず、赤ちゃんが産まれる、ここからスパルタ教育は始まる。長老がやってきて、赤ん坊をチェックするんだ。
五体満足か?
健康に育ちそうか?
障害があったり虚弱だったりしたら、タイゲトス山に捨ててしまう。育てない。7歳になると男の子は親元から引き離されて、みんな合宿所に入れられます。こ
こから男ばかりの集団生活が始まります。男ばっかりで一緒に起きて、一緒に飯食って、一緒に身体鍛えて、また一緒に飯食って、一緒に寝るの。何歳までこの生活をするかというと、30歳までです。嫌だねー。
30歳になると家庭生活が許されるんだけれども、やはり夕食は家で食べない。男達が集まって共同食事をするんです。これをしないと、市民の資格を奪われてしまいます。だからスパルタでは、一家団欒の夕食というのはない。
こんなふうな生活をしながら、肉体を鍛えていきます。男達同士の団結は、ものすごいものになる。お互いみんな気心が知れあっている。これが密集隊を作って戦場に出てきたら、他のポリスは太刀打ちできない。スパルタ陸軍はギリシア最強でした。
成人の儀式では、こんな話も伝えられています。スパルタの少年は13歳位で成人の儀式を迎えます。その年齢になった少年は、短剣一本だけを渡されてスパルタの町を追い出されるというんです。金も食糧も何も持たせずに、1年間放浪の旅をしなければいけない。食糧はどうするかというと「奪え!」といわれる。
具体的には、近郊には農村が広がっていて、そこには奴隷身分のヘイロータイが住んでいる。彼らから食糧を奪うんです。ヘイロータイが抵抗したら、殺してかまわない。ヘイロータイからすれば、常に年頃の少年が短剣を持ってうろついていて、何時襲ってくるか分からない。こんなふうにしてヘイロータイにはスパルタ人に対する恐怖心を植え付け、少年は放浪を通じて立派な戦士に成長する、というのです。
女の子は合宿生活はないですが、やはり集められて肉体の鍛錬をしました。これは立派な戦士を産むため。要するに、スパルタは社会全体が戦争モードのポリスでした。このようなポリスの在り方は、ギリシア全体から見たら特殊です。
ポリスの衰退
このアテネとスパルタが戦争をします。これがペロポネソス戦争(前431~前404)です。
アテネは、デロス同盟の盟主としてギリシアの指導的立場に立つんですが、そのやり方は他のポリスの反感を買うようなことが多かった。例えば現在のアテネですが、アクロポリスの上にパルテノン神殿が建っていますね。この大理石の立派な神殿はペリクレス時代に造られたものですが、この建設費は実はデロス同盟の資金を流用しているんですよ。デロス同盟は軍事同盟ですから、
加盟ポリスから軍資金を集めてる。これをアテネはペルシア戦争で破壊された 自分の町の復興のために使ってしまうんだ。当然、他のポリスは反感を持ちますわな。
その筆頭がスパルタだったわけ。スパルタは、自国を盟主とするペロポネソス同盟という同盟のリーダーでした。このギリシアの両雄が、ギリシア全土の覇権を賭けて衝突したわけです。
細かい経過は省きますが、最終的にスパルタが勝ってアテネは降伏。アテネに代わってスパルタが覇権を握りますが、これも長続きしません。
次に覇権を握ったのが、テーベというポリス。このテーベにエパミノンダスという人物が登場し、急速に勢力を伸ばしてきました。彼は斜線陣という新しい戦法を編み出して、前371年にレウクトラの戦いでスパルタ軍を破ります。覇権は、スパルタからテーベに移りました。
こんな具合に、ギリシア内部で次から次へと戦乱が続いていくんです。ギリシア世界が全体として衰退してしまいます。
まずは農業が荒廃していく。例えば、ペロポネソス戦争の時に陸軍では劣るアテネは籠城戦をするんですが、アテネ市を包囲したスパルタ軍はアテネ近郊に広がる畑、そこのオリーブやブドウの木を切り倒してしまうのね。米や麦だっ
たら一年草だから、刈り取られても翌年は収穫できるけれど、果樹は切られてしまったら次に苗木を植えても収穫できるまでには何年かかかるわけでしょ。こういう農業荒廃です。
戦争が終わっても、すぐに回復できるわけではない。農業経営者の中産市民は、これで没落する者が出る。収穫なければ収入ない、農地を売る、財産を処分する、最後には重装歩兵の武具を売る。そこまで没落する市民も出てくるんですね。
さらに、このころの政治は衆愚政と呼ばれます。民主政の腐敗堕落したものです。愚か者が集まっている政治という意味ですね。民主政と見た目で違いはありません。政治に関わる市民達の考え方の違いだと考えてもらったらいい。ポリス全体の事を考えるのではなくて、目先の自分の利益を第一に考える、そんな者達の民主政です。
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