2019/12/08

ヘーラクレース 十二の功業(ギリシャ神話68)


ディオメーデースの人喰い馬
トラーキア王ディオメーデースはアレースの子で、旅人を捕らえて自分の馬に食わせていた。

シケリアのディオドロスによれば、ヘーラクレースはディオメーデースを逆に馬に食わせてしまい、馬は生け捕りにしたという。またアポロドーロスによれば、ヘーラクレースが馬を奪った後にディオメーデースが軍勢を率いて馬を奪還しようとしたため、ヘーラクレースは若衆の少年に馬の番をさせて戦いに出かけた。戦いでディオメーデースを殺害し帰ってくると、少年は馬に食い殺されていたという。

アマゾーンの女王の腰帯
ヘーラクレースはアマゾーンとの戦いになると考え、テーセウスらの勇士を集めて敵地に乗り込んだが、交渉したところアマゾーン女王ヒッポリュテーは強靭な肉体のヘーラクレース達を見て、自分達との間に丈夫な子を作ることを条件に腰帯を渡すことを承諾した。

ところが、ヘーラーがアマゾーンの一人に変じて「ヘーラクレースが女王を拉致しようとしている」と煽ったため、アマゾーン達はヘーラクレースを攻撃した。ヘーラクレースは最初の甘言は罠であったと考え、ヒッポリュテーを殺害して腰帯を持ち帰った。

一説では、ヘーラーが変装したのはヒッポリュテー本人で、彼女に変装したヘーラーが『ヘーラクレース達が国を乗っ取ろうとしている』と他のアマゾーン族を唆し襲撃させた。突如襲撃されたヘーラクレースは激怒。ヒッポリュテーに攻め寄り、必死に身の潔白を訴えるヒッポリュテーを殴り殺してしまった。

冷静さを取り戻したヘーラクレースは、ヒッポリュテーの目は嘘を言っているように見えなかったと、話も聞かず殺してしまったことを後悔した。

ゲーリュオーンの牛
ゲーリュオーンの飼う紅い牛を求めるのだが、ゲーリュオーンはメドゥーサがペルセウスに殺された時に血潮とともに飛び出したクリューサーオールの息子で、大洋オーケアノスの西の果てに浮かぶ島エリュテイアに住んでおり、常人は行き着くことができなかった。

アフリカに行き着いたヘーラクレースが太陽の熱気に怒り、太陽神ヘーリオスに矢を射掛けたため、ヘーリオスは、その剛気を嘉して黄金の盃を与えた。別の説では、ヘーラクレースは矢で太陽を射落としてみせ、ヘーリオスに無理矢理黄金の盃を貸させた。ヘーラクレースは、盃に乗ってオーケアノスを渡ることができた。

エリュテイアでは双頭の犬オルトロスが牛を守っていたが、ヘーラクレースはオルトロスや牛の番人を棍棒で打ち殺して、紅い牛とともに牛の群れを奪った。そして牛を奪い返さんと追ってきたゲーリュオーンを射殺した。

ヘーラクレースは冒険の途次、ジブラルタル海峡を通過した際に海峡の両岸に「ヘラクレスの柱」を残した。また、登るのが面倒な高い山脈を叩き割って大陸であった場所に海峡を作り、割れた山脈の両辺をヘラクレスの柱としたとも言われる。

ヘスペリデスの黄金の林檎
ヘスペリデスの居場所を知らないヘーラクレースは、水神ネーレウスと取っ組み合い、これを捕まえた。ネーレウスは怪物や水、火などに変身して逃れようとしたが、ヘーラクレースが捕らえて離さなかったため、やむなく場所を教えた。黄金の林檎は百の頭を持つ竜ラードーンが守っていたが、ヘーラクレースはこれを倒して林檎を手に入れた。ラードーンは、りゅう座となった。

一方、アポロドーロスは全く異なる伝説を伝えている。ヘーラクレースは、人間に火の使い方を教えたために、ゼウスに罰せられてカウカーソス山に縛り付けられていたプロメーテウスを救い出して、助言を請うた。プロメーテウスは「ヘスペリデスはアトラースの娘たちだから、アトラースに取りに行かせるべきである」と答えた。

アトラースは神々との戦いに敗れ、天空を担ぎ続けていた。ヘーラクレースがアトラースのところに赴き、ヘーラクレースが天空を担いでいる間に林檎を取ってくるよう頼むと、アトラースはこれに従い林檎を持ち帰った。しかし、再び天空を担いで身動きできなくなるのを嫌って、自分が林檎をミュケーナイに届けると言い出した。

ヘーラクレースは一計を案じ、頭に円座を装着してから天空を支えたいので少しの間、天空を持っていてほしいと頼んだ。承知したアトラースが天空を担いだところで、ヘーラクレースは林檎を取って立ち去った。

地獄の番犬ケルベロス
ケルベロスはオルトロスの兄貴分であり、3つの頭を持つ犬の化け物。ヘーラクレースは冥界に入って、ハーデースから「傷つけたり殺したりしない」という条件で許可をもらい、ケルベロスを生け捕りにした。その際、ペルセポネーを略奪しようとして「忘却の椅子」に捕らわれていた、テーセウスとペイリトオスを助け出した。また、地上に引きずり出されたケルベロスは太陽の光を浴びた時、狂乱して涎を垂らした。その涎から毒草のトリカブトが生まれたという。

ヘーラクレースの柱
ジブラルタル(手前の岩山)とセウタ(海の向こう側の岩山)の間が、ヘーラクレースによって砕かれて海になった。ヘーラクレースは、十二の功業の一つであるゲーリュオーンの牛を取りに行く途中に、巨大な山脈を登らねばならなかったが、それは非常に面倒なことであったので、近道をしようと考えた。山脈さえ無くなれば道のりを短縮できると考えたヘーラクレースは、巨大な山脈をその怪力で砕くことにした。

ヘーラクレースは棍棒で山脈をぶん殴り、その圧倒的な怪力で山脈を真っ二つにした。それだけではなく、山脈の下に横たわる大地もヘーラクレースの怪力に耐え切れずに吹き飛んだ。その結果、大西洋と地中海がジブラルタル海峡で繋がった。以降、分かれた2つの山脈をひとまとめにして、ヘーラクレースの柱と呼ぶようになった。


また、元々ジブラルタル海峡があったが、あまりにも幅が広く、このままでは海の怪物たちが地中海に押し寄せてきてしまうため、ヘーラクレースが大陸そのものを動かして、この海峡を狭くしたとする説もある。
出典 Wikipedia

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