2021/07/27

「伝統的な日本」と「新しい日本」(2020東京オリンピックpart3)

■柔道

あの古賀氏も「これぞ、ニッポン柔道!」と、天国から納得していただいたろうか?

 

かつての「日本男子柔道」は「目標は金、最低でもメダル」というのがノルマではないが「暗黙の了解」であったと思う。もっといえば「金でなければ」メダリストと言っても価値がないというまでの風潮すら確かにあった。

殊に最重要視された無差別級は「最低でも金」、「銀以下では、帰国できない」というのが決してオーバーではないくらい過酷な世界だった。

 

男子に比べれば歴史の浅い女子の方は、田村や上野といった「金が当然」と目された例外的な天才を除けば「メダルが取れれば良し」という感じか。

 

金メダルの数で言えば、男子は「目標3~4個、最低でも2個」で、女子は「目標2個、最低1個」という感じだった。

 

だが、今回に限っては男女ともに各階級で「最低でもメダル」が期待できそうな、充実した陣容がそろったようだ。実際、2日目までの4階級で「金3,銀1」という期待に違わぬ結果を残してもいる。

 

迎えた3日目。

まず女子57キロ級の芳田は準決勝で敗退。準々決勝までは、多彩な技で危なげなく勝ち上がってきていただけに惜しまれるが、柔道競技としては3日目にして初めて決勝進出を逃してしまった。対戦相手の「コソボ選手」といえば、女子48キロ級決勝でも敗れた相手だ。日本女子にとって、すっかり「天敵」となった趣がある。

 

男子73キロ級は、唯一の「前回王者」大野が登場。「前回王者」というばかりでなく、伝統的な美学の「ニッポン柔道」の担い手としても期待の大きい存在である。

 

下馬評通り、準決勝までは圧倒的な力と持ち前の「美しい柔道」を体現するような王者の風格が溢れる。次々に登場する強敵をなぎ倒し、迎えた決勝。両者決め手を欠いたまま、延長に突入。なんらかのポイントを取られた時点で終わりという極限の戦いの中、フラフラになりながらも最後は見事な投げを決め、劇的な勝利をもぎ取り「二大会連続金」の偉業を成し遂げた。

 

この結果、男子柔道は「初日から三階級すべて金」という、かつて記憶にないような快挙を達成。一方、女子の方も「」はまだひとつとはいえ、依然として3階級すべてでメダルを確保している。

 

■スケートボード

前日に続いて、この種目で2人目の金メダリストが誕生した。しかも、なんと13歳というから驚きだ。

まだ中学生だから無理もないが、あどけない西矢選手の楽しくて仕方がないといったような天真爛漫な笑顔は、思わずオリンピックという舞台を忘れてしまう。

男子の堀米選手もそうだったが、全く悲壮感を感じさせずにあっけらかんと「」を攫ってしまうのが、この競技の特徴なのか。銅の中山選手と併せ、日本人が2人も表彰台に上がってしまうという快挙だ。

 

かつての冬季五輪では、フィギュアスケートの浅田や紀平が15歳くらいの時は、出れば金メダルが確実視されながら「年齢制限」で出場できず地団太を踏んだが、夏季五輪には年齢制限はないのか?

 

■体操

前回は金メダルを獲得した男子団体総合。内村という「大明神」は居なくなったものの、層の厚さを見せて銀メダルを獲得。ロシアには惜しくも僅差で及ばなかったものの、C国を抑えての銀は立派だ。

 

■卓球

卓球を見る機会は、ほとんどオリンピックくらいしかないが、それでも毎回「永久に勝てそうにない?」と痛感させられるのがC国選手である。これまで、この競技の「金」はC国選手の「指定席」で、日本選手は最高でも銀というのが通例だったが、ついに水谷・伊藤のペアが初めて万里の長城を乗り超えたのは、卓球史に残る快挙と言える。

 

「卓球=C国」の固定観念が強いせいで、どうしても「C国に勝った」というところに意識が行ってしまうのは仕方ないが、最大のハイライトは準々決勝のドイツ戦だった。

最終セットを「6-10」と大きくリードされた時点で、誰しもが99%負けを覚悟しただろうが、ここから驚異的な粘りを見せる。マッチポイントを何度取られたかすら覚えてないくらいに、何度も絶体絶命となりながら奇跡的な逆転勝利。決勝のC国戦よりは、はるかに厳しいゲームだった。ここで一度「死にかけた」経験が、最後のバカ力を生んだのかもしれない。

 

それにしても、この水谷&伊藤のペアというのが、実に稀に見る最高のコンビだ。それも道理で、この二人は郷里が同じ(静岡県磐田市)であるばかりか、伊藤がまだ小さい時から面識があったということだから「これ以上に息の合ったコンビは望むべくもない」のだが、実にそれが「東京オリンピック」という、世紀に一度の舞台にうまい具合にハマったものだ。

 

ネットなどでは「XX」とか「性格悪い」などと散々に叩かれた伊藤だが、あの天真爛漫なまでの明るさにくわえ、インタビューで垣間見えるクレバーさを見るにつけ、これは稀にみる傑物かとも思える。

 

ハイライト動画をすべて見たが

「男女のペアで戦っているのは日本だけで、対戦相手(ドイツ、台湾)はみんな男子2人じゃないのか?」

が、正直な感想だ。

 

相変わらず好調が続く日本選手団。

前日の4個に続き、この日も「金」3つを獲得して合計8個となった。

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