出典http://ozawa-katsuhiko.work/
2.「家に関わる神」
ここには「家の神」、「かまど神」、「子安神」、「屋敷神」、「火の神」などを含めたいと思います。
家の神
一般に「家を守り、福をもたらす神」ということですが、家の神としての実体性を持ったものとは言えず、「神棚に祀られる神」からはじめて「かまど神」や「屋敷神」「納戸神」から「便所神」まで含めて、要するに「家に関わる神」の総称のような性格を持っていると言った方がいいでしょう。
ただし、東北地方の「おしらさま」というのは比較的はっきりしていて、一般に神体を桑や竹の木で作り、旧家の床の間や神棚に祀られることが多いです。これは一軒だけで祀られるとは限らず、同族的一族や地縁的集団で祀られることが多いようです。この「おしらさま」を粗末にすると「家に祟って」どこかへいってしまうとされています。こんなのが、家の神の典型でしょう。
かまど神
この「かまど神」の由来は、相当古いようです。それは当然「かまど」は「食事」を意味しており、食事の供給を司るとされたからでしよう。「かまど」の神であるので、しばしば「火の神」ともされますが、この場合は「かまどの火」であって、後で見る「火事」に関わる「火の神」とは異なりますので、やはり「かまどの神」としておいた方がいいでしょう。
しかし東北地方では「かまおとこ」と呼ばれる一方で「ひおとこ」とも呼ばれ、これが「ひょっとこ」の語源だろうと言われており、あの、横に口をすぼめてつきだしている顔つきは「火をおこしている」顔つきであると言われています。この「かまど神」も「家の神」とされるのは「かまど」が家の中心であるからでしょう。
子安神
これは「子供の授かり」、「安産」、「養育」に関わる神で、後に仏教と習合して「子安地蔵」とか「子安観音」とかになって、民間の信仰を集めていました。神社としても「子安神社」というのがあり、『古事記』での「このはなさくやひめ」の故事から、彼女が「祭神」とされたり「神功皇后」が祭神とされたりしています。
屋敷神
これは「家の神」とも似ていますが「家の神」が家の内部に視点があるのに対し、こちらは「屋敷全体」といった雰囲気です。従って祀られるのも屋敷の片隅の祠ということになります。屋敷というのは、単なる「家」ではなく一族の由来ということですので、本来は一族全体のものであったのでしょうが、そのうち「本家」のものとなり、やがては分家を含め「各家」のものとなっていったようでした。
火の神
火を統御する「火伏せを司る神」です。これは後に『古事記』の「火之迦具土神」を祭る神社としての「秋葉神社」と「愛宕神社」に融合されて、町中に小さな祠となって祭られているのをしばしば観察できます。文字通り「火事」を避けるためのものです。
3.「産業、経済、生活に関わる神」
ここには「山の神」、「田の神」、「水の神」、「海の神」、「市の神」などを含めます。
山の神
これは「農業の民」と「山の民」とでは、その見方が違いますが、農民にとっては山から「水」をもたらし、「田」に降りて「田の神」となるという「一つの自然力」の具体的場面での別の呼び名になります。
一方「山の民」にとっては「山の神」は「山の」神であって、それが「田の神」になるなどということはありません。「山の民」にとっての「山の神」というのは「山の獲物」をもたらしてくれる神であり、また「山の中での仕事・生活を守って」くれることが期待されている神です。山は厳しい世界ですから、この神にまつわるタブーというものも厳しいものがありました。また山の神は醜く、自分より醜いものを見せられると喜ぶということで「オコゼ」が捧げられるというのは有名です。
田の神
農民にとって大事な神であることはいうまでもなく、上に示したように、「山の神」が降りてきて「田の神」になるとされていました。したがって「春」と「秋」とがその祭りとなり、一年のサイクルが形成されていました。
水の神
水に関わることを司る神ということで、農民にとっては「田んぼの水」に関わり、用水や水田の傍らで祀られることが多いようですが、殆ど「田の神」と合体してしまうことも多いようです。一方、この水は山から来るために「山の神」とも結びつき、さらには「水を配る神」としての「水分神(みくまり)」と合体していることもあります。
この「水分神」は、水源地や分水嶺に祀られます。日常的には井戸や水くみ場、泉,池、湖などに祀られています。一般に「水神」は「蛇」の姿にイメージされていて、これがさらに中国の「竜」と結びついて「龍神」となり、「池や泉にまつわる龍神の話し」として民話・伝承に多く現れてきます。
海の神
「海の安全」、「航海」、「漁業」の神ということですが、ここも「龍神」と殆ど合体しているようです。「海の神」ということでは四国の「金比羅(こんぴら)様」が有名ですが、ここも蛇の姿にイメージされているようです。後には「恵比寿(えびす)」も海の幸のシンボルとして祀られるようになりました。また「船霊(ふなだま)」信仰というものもあり、この神は女の神様であって、したがって漁船などに女性は乗せない風習があったようです。つまり、この神様が「やきもち」をやくからということでしょう。ご神体としては「女性の毛髪」、「賽二つ」、「男女一対の人形」、「銭十二文」、「五穀」などがまつられます。
市の神
一般には交易が盛んになってからの神であるらしく、「幸」をもたらすものとしての「恵比寿」や「大黒」が、それとされることが多いようです。しかし、ご神体として古くから「丸い自然石」が持ち歩かれていたようで、それが「市」の立つ村境や四つ辻などに置かれる習慣もあったようでした。
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