2007/02/15

ショスタコーヴィチ 交響曲第7番『レニングラード』(第1楽章)

 


1942329日、プラウダ紙上にて

「私は自分の第七交響曲を我々のファシズムに対する戦いと我々の宿命的勝利、そして我が故郷レニングラードに捧げる」

と作曲者によって表明されたことから『レニングラード』という通称を持つ。

 

ショスタコーヴィチの全作品中でも、交響曲第5番と並び最も有名かつ人気のある曲のひとつでもあるが、題材や書法を巡って一部には「壮大なる愚作」との評もある。ショスタコーヴィチの交響曲の中で、最も演奏時間が長い。

 

1楽章

提示部では、まず生命力に満ちた第1主題「人間の主題」が、力強く描かれる。第2主題「平和な生活の主題」は極めて澄み渡った美しい主題で、後半においてピッコロ、独奏ヴァイオリンに印象的な高音のモチーフが現れて消えてゆく。その静けさを小太鼓のリズムが打ち破り「戦争の主題」に置き換えられた展開部に突入する。この展開部は、ラヴェルの『ボレロ』に影響を受けたといわれ「戦争の主題」が小太鼓のリズムに乗って、楽器を変えながら12回繰り返される(この小太鼓の用法は、ニールセンの『交響曲第5番』との関連が指摘される事がある)

 

その結末において全合奏による暴力的な侵攻が描き出された後、第2金管群が抗戦のテーマを訴え、しばらくの間は2群の金管を擁した大迫力の音楽が続く。小太鼓が途切れた時点で第1主題が悲痛に叫ばれると音楽は静かになり、再現部に入る。第2主題が提示部と対照的にファゴットにより暗く悲しげに現れ、第1主題は明朗に奏でられるが、やがて悲劇的な色彩を強める。極めて静かに奏でられるコーダでは、戦争の継続を示す「戦争の主題」が再び登場し、その活動的なイントネーションは第4楽章における勝利を予感させる。

 

提示部

1主題「人間の主題」は「ソヴィエト国民の持つ勇気と自信・・」、第2主題「平和な生活の主題」は、第1主題とともに「自由なソヴィエト人の肖像その勇気と堅忍・・・理想への熱望ともにみられよう」というような解釈が、かつてはよくなされていた。「戦争の主題」は、前半部はムソルグスキーのオペラ『ボリス・ゴドウノフ』第1幕、自作の『ムツエンスク郡のマクベス夫人』からの、後半部はレハール作曲のオペレッタ『メリー・ウィドウ』からの「ダニロ登場の歌」の引用であるという説がある。

 

かつて、この主題は勇猛果敢なソビエト軍を表現しているという解釈が一般的であったが、前者は民衆が脅されてボリスに帝位につくよう懇願するのと、カテリーナが自らの犯罪をカムフラージュするための嘘泣きする主題であり、すこぶる意味深長である。もし後半の主題がレハールの引用であるとすると、この主題はドイツ軍を表現していると考えるのが自然であるということになる。ちなみに、レハールはヒトラーからの支持を受け保護されていた。ダニロの歌には「それでも俺はマキシムに行くぞ。あすこは神聖な祖国を忘れさせてくれる」という歌詞があり、作曲者の子息の名がマキシムである事を考えても、かなり重要な意味を持つといわれている。

 

「戦争の主題」は、バルトークが『管弦楽のための協奏曲』の第4楽章で引用しており、ショスタコーヴィチへの揶揄ともナチス批判とも取れる。

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