2022/12/20

決勝(サッカーW杯2022・カタール大会)(7)

2022のワールドカップサッカー決勝は、PK戦にもつれ込んだ末、アルゼンチンがフランスを破って36年ぶり3度目の優勝。

 

決勝前の時点では「フランス有利」と予想したが、前半はフランスの動きがこれまでとは見違えるほどに重かった。準決勝から中3日、おまけに準決勝後に体調不良を訴える選手が続出という報道もあったが、そうした影響もあったのかTVに移った映像は、これまで見たこともなく、また想像すらしなかった「弱いフランスの姿」だった。

 

一方、中4日と休養十分、しかも準決勝はクロアチアに3-0と余裕の勝利で戦力温存、万全の状態で決勝を迎えたようなアルゼンチンは、立ち上がりから絶好調。踊るような躍動感あふれるサッカーを展開し、前半だけで2点を奪いワンサイドになるかとも見えた。

 

(フランスが、このまま終わるわけはないだろう)

 

という予想を覆し、後半に入ってもその動きは精彩を欠いたまま。あの大会ナンバーワンの攻撃力を誇ったフランスが、なんと後半も半分くらいの時間が過ぎようというところまで、得点はおろか「シュートすら1本も打てない」などとという展開を、誰が予想しえただろうか。「困った時の黒人頼み」が気に喰わないことから、ずっと前から「アンチフランス」のワタクシではあるが、さすがにこのまま終わってしまったのでは

 

(なんとつまらない決勝戦か!)

 

という失望しかなかったが、いよいよ大詰めというタイミングで「強いフランス」が復活した!

 

漸く掴んだPKのチャンス。まずは、エムバぺが決めて1点差。

 

(これで、やっと面白くなって来た・・・)

 

などと思う間もなく「面白くなって来た」どころか、まことに「あっという間」と言うしかない電光石火のカウンター攻撃。またしてもエムバぺの強烈なシュートが放たれ、瞬く間に「2-2」となった。

 

まことに、恐るべきはエムバぺ!

やはり窮地のフランスを救ったのは、この若きエースだった。昔とは違い、これだけ選手の個性を潰してまで「組織のサッカー」を推し進めている趨勢の中にあって、ここまで一人で局面打開していく能力発揮できる稀有な存在と言える。

 

これですっかり勢いづいたフランスは、持ち前の怒涛の攻めで一気呵成に容赦なく攻め立てる。これが「牙を剥いてゴールに襲い掛かる肉食獣の迫力」なのだ。逆に防戦一方に回ったアルゼンチン。あわや「歴史的逆転劇」を食らおうかという劣勢に立たされたが、なんとかフランスの猛攻を耐え忍んで延長へと突入。

 

延長戦は「これぞW杯決勝」というに相応しい、世界最高峰の技と力の応酬。地味ながら高い個人技を揃えたアルゼンチンと、スピードと破壊力に図抜けたフランスの繰り広げる一進一退の攻防。アルゼンチンが勝ち越せば、すかさずフランスが追いつくという、まさに手に汗握る展開。これぞ「世界最高峰のサッカー」というに相応しい、見ごたえ満点のせめぎ合いが続いた。

 

まことに残念なことは、これだけの名勝負を繰り広げながらも、最後は「PK決着」という無情なルールであったこと。せめて決勝くらいは実力で勝敗を付けさせたいところだが、遂にアルゼンチンがフランスを振り切った。

 

W杯でのPK戦は「5勝1敗」というアルゼンチンの強さの秘訣は、やはり「運」だけでは片づけられない「足元技術の確かさ」だろう。スピードと破壊力では圧倒的にフランスに分があったが、足元技術と狡賢さはアルゼンチンが勝っていた。とはいえ、フランスは主力選手を数人欠いて、さらに不利な日程でありながらも互角の戦いだから、間違いなく「優勝候補」の名に恥じぬ底力を見せてくれた。惜しまれるのは、チームの支柱ともいうべきジルーを前半で交代させてしまったことで、これは不可解な采配と思えた。

 

国を挙げてサッカーに熱狂するアルゼンチンのサポーターは、虎の子の貯金をはたいたり、果ては「家を売ってまで、カタールでの観戦に駆けつける」という凄まじさだけに、応援は熱狂的というのを通り越したお祭り騒ぎ。解説者の露骨なアルゼンチン贔屓に至っては、さすがのアンチのワタクシも引いてしまうくらいで、完全アウェー状態のフランスが気の毒に思えてしまった。

 

振り返れば、アルゼンチンの足元技術と狡賢さ、フランスのスピードと突破力、さらにはクロアチアの粘り強さ、モロッコの不屈の闘志など、さすがに世界の強豪国は日本代表に欠けた「武器」を備えていた。さらにいえば、どの国にも共通するのが「フィジカルの強さ」だ。いつもは3位決定戦は観ないワタクシも、今大会の3位決定戦の素晴らしい試合には惹き込まれてしまったのである

 

どうしても「日本人」という固定観念にとらわれすぎるせいかもしれないが、ワタクシ的には日本代表の試合だけ(というよりもアジア全体がそうなのだが)は、いまだに「W杯の試合」と思えないのである。

 

今大会では、かつて「強豪国」と言われたドイツ、イタリア、ブラジルなどの衰退が象徴的に炙り出されたが、次のW杯は4年後だから、またどのように「サッカー勢力図」が変わっていくかは予測不能である。

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