出典
https://mirror.cwiertka.com/www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/meeting/4/pdf/4than02_kyoto.pdf
日本料理の技術と文化の保持者・実践者は、以下の通り。
料亭、旅館、日本料理店等の料理人
日本料理の料理人は「板前」ともいわれ、以前は板前十職(下洗・中洗・立洗・立回り・盛付け・焼方・脇鍋・煮方・脇板・板前)と厳しい修行を経て、一人前の職人となった。
料亭、旅館等の経営者(女将)
日本料理では、料理だけでなく総合的な「もてなしの空間」での心配りが重視され、プロデューサーとして「女将(おかみ)」が存在し、演出を手がける。
日本料理を経験し継承する日本国民
日本国民は昔から酒を「神様の食事」として敬い、米飯を主食とし食物を通した様々な儀礼や作法(食物儀礼:食礼)があり、食礼は重要な教養のひとつとして見なされてきている。このように、日本料理文化を鋭敏な味覚とともに継承する日本国民は、重要な保持者・実践者である。
一方で、食礼と味覚は家庭や地域などで時間をかけて教育され継承されていく必要がある。今回、ユネスコ文化遺産登録に当たっては、国民を広く対象とした意識調査アンケートが予定されているが、単なる人気投票にならないように留意する必要がある。その他に、日本料理の技術と文化に深く関わる保持者・実践者は、以下の通り。
ü 漬物等の発酵食品、調味料、酒や茶なども含めた食産業従事者
ü 素材の生産に関わる農林水産業従事者
ü 食器や空間の調度品等のしつらえに関わる工芸産業従事者
ü 華道や茶道、香道、それに会席の場で披露される日本舞踊や伝統音楽の提供者
ü 料理文化の普及に関連する出版、媒体従事者
ü
Ⅲ. 日本料理の伝統保護に向けて
1 登録内容と保護・継承モデル
(1)登録内容
登録のためには、日本国民に幅広く支持され、外国人にも正確に理解される要素の特定と定義が必要である。全国各地には地域の伝統行事などの社会習慣と結びついた様々な郷土料理があり、裾野の広い日本の食文化を担っていることから、それらを尊重し守り育てることは非常に重要であるが、提案の際は文献・器物が 1200 年間にわたり適切に保存され、全国各地に波及しその食文化に影響を与えてきた「会席料理」を「日本料理」と定義することが適当である。また、観光誘致や事業実施を目的とすることは減点要因となることから、日本料理を文化財として定義する際には「保護すべき」内容と措置を明確に記述すべきである。
このように、日本人の高度な文化性を食で表現したものが「日本の会席文化」と言うことができる。日本料理の中でも、特に「日本の会席文化」は四季折々の食材を、その日の天候や会食の目的、客の好みを汲み取った上で調理するとともに、同じもてなしの心で室内の生け花や掛け軸などの装飾をしつらえ、花々や古典に着想を得た文様を施したテーブルや椀、皿、箸などの食器を選び供することで、美食を食する満足よりも、この日この時この場所で主と客が共に最上の時間を過ごすことに絶対的な価値を見出す「日本の社会的慣習」である。それは子供の誕生、成人、結婚、還暦といった個人や家族の祝祭をはじめ、正月や節句などの伝統的な年中行事のほか、雪、月、花を最も美しい時節に愛でる鑑賞の時など、個人的若しくは社会的儀礼や祭礼、習慣の中の大きな要素と位置付けられている。
また「日本の会席文化」は、長年の経験で培われ口承された栄養学的配慮がなされるとともに、食材そのものの名称や形状、成育過程から想起された、例えば祝いの席での「めでたい(鯛)」、「よろこぶ(昆布)」、「かずのこ(数の子、婚礼の際に多産を願う)」などの「言い習わし」をし、それを共有することで個人の感情や思考に訴え、場の雰囲気をその目的に沿った一層の盛り上げに導くという「口承による表現」が特徴となっている。
日本料理の伝統文化保護に向けた施策を実施する。
上記を踏まえて日本料理の世界無形文化遺産登録を考慮すると、現在の国内での公的な食文化保護のスキームでは「伝統文化保護」の視点から十分と言えない。民間レベル・地域の習慣・技術・知識の承継活動を踏まえて、ユネスコが求める「世代から世代へと伝承される社会習慣や知識、技術」、「文化の多様性と人類の創造性を証明する」等の要素を満たす保護措置として、次のような取組が求められる。
1.日本料理を文化財保護法等に文化財として位置付けることにより、他の文化財と同様にその実践者・継承者、習慣、技術等を顕彰・保護の対象とすること。
2.食育推進基本計画に基づく、教育・普及啓発に日本料理の価値と役割を明確に位置付け、幅広い国民がその繊細な精神性や美、広く深い味わいに接することにより、その価値を正しく認識する機会を設けること。
3.日本料理の保護・継承の重要な担い手となる料理人の技量や努力が適正に評価され、国内外においてその技量の質が担保されるしくみを構築すること。
4.日本料理の文化的背景も含めた研究や高水準の日本料理を提供する実践者の確保と継承者の育成を担い、国際的に評価される高等教育機関を設置すること。
5.海外において、日本料理の価値への理解を深める活動を積極的に展開すること。
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