2015/10/25

北陸信越の旅3日目(戸隠神社編・後編)

当初予定では正攻法で宝光社からスタートし、火之御子社、中社、途中鏡池に寄り奥社、九頭龍社と制覇していく想定だったが、調査の結果それぞれの神社間に相当な距離があり半日では奥社や鏡池までは到底、辿り着けないことが判明していた。そこで計画を練り直し、中社までバスを乗り付け奥社まで歩き、バスで宝光社へ戻って火之御子社と併せて見学するプランに変更した。



パワースポットとして知られる鏡池も是非見ておきたかったが、神社巡りのコースからあまりに外れているため、断腸の思いでコースから除外するしかなかった。天の岩屋から天照大御神を引きずり出し、二度と籠らないように岩戸を投げ捨てた怪力の天手力男命をご本尊とし、岩戸が山になったという凄い伝説を持つ戸隠山は、天辺がギザギザの神秘的な姿を見せていた。

 

奥社、九頭龍社から下山し、そば味のソフトクリームを食べながらバスを待っていると、急激に冷え込んで来る。神社間の移動は距離があるためバスが便利だが、1時間に1本だけにタイミングを合わせる必要がある。バスで中社まで移動し参拝後、火之御子社、宝光社へは誰も歩いていないケモノ道のような道を移動、徐々に日が傾きかけてくる中、すれ違う人ととていない道を行き、5社全てを制覇した時は夕方5時を回っていた。

 



長野駅に戻るバスの便は、1758分発である。

(まだまだ、時間の余裕があるわい)

とうろついているうち、いつの間にかバスの出発時刻が迫っていた。最終便(実際には、後に臨時が一便あったが、この時点では最終便と思っていた)だから、このままバス停が見つからず乗り損なっては帰れない。見渡す限り、宿泊施設などはまったくなさそうな土地柄だ。なんとしてもバス停を見つけねばならないが、通行人の姿も見えないから聞く相手もない。空は徐々に暗さを増し、いよいよ探すのも困難になってくる。

 

(一体、どうすりゃいいんだ?)

 

手詰まりな状況に弱り果てていると、暗い街の中に郵便局の看板が目に入った。当然ながら、この時間だからシャッターも降りているが、小窓から中の灯が漏れ見えていた。

 

(ということは、中に誰かいるはず・・・)

 

田舎の局舎特有の、隣が母屋のようになった玄関にインターフォンが付いていたので、早速押してみると

 

(はいはい・・・)

 

と局員が出て来て、バス停の所在を親切に教えてくれた。「地獄に仏」とは、まさにこのことであろう。

 

こうして無事に乗車し、長野駅まで戻ったはいいが、新幹線の切符を買ってコインロッカーから荷物を出したりしていると、思わぬ時間を食った。「かがやき」の出発まで僅か20分足らずの中、目に付いた店に入って大慌てで「牛タン定食」でビールと地酒を煽り、濃密な3日間の旅程が終わった。


酒乱(続ストーカーpart6)



 酒乱の相手は難しい。

 いや酒乱に限ったことではなく、とにもかくにも興奮状態に陥ってしまった人間相手には、まともな会話などは成り立ち得ないものである。

 過去の経験上、そのように悟っていたラッキーボーイは、じっと相手の興奮が収まるのを待っていた。 

 「オレは・・・別にアンタを追っかけてたわけじゃない・・・」 

 譫言のように、酔眼を据わらせたタコオヤジの「告白」が、今まさに始まろうとしていた。 

 「そう・・・オレのお目当は、彼女だった・・・」 

 「オイオイ・・・当時のオレに美人の背後霊が着いてたなんてオチは、許容できねーな。 
 これでも、そんなに鈍感ではないつもりだ。 
  そんな「幽霊」やら「幻」やらの世迷言で、お茶を濁されては堪らん」 

 「だから・・・さ・・・」 

 タコオヤジは、気色悪い上目遣いでちらりとこちらを見ると

 「うをっほん!」 

 と、勿体ぶった咳払いをしてから、タバコに火を点けて紫煙を盛大に吐き出した。

 「れっきとした生身の、しかもこの上もなく極上な女さ・・・」

 あの「世の不幸を一身に背負ったような」不景気の見本のようなタコオヤジの口から吐き出された「この上もなく極上な女」に、寸でのところで吹き出しそうになるのを堪えたラッキーボーイは、これまたタバコに火を点けて応じるポーズを取って見せる。 

 「それで? 
 その与太話が、あのストーキングとどう関係すると?」 

 「それは・・・つまり・・・だな・・・ 
 つまりは、彼女自身が、ストーカーだったのさ・・・アンタのな 

 と吐き捨てると、タコオヤジはさも不愉快そうに立て続けに、紫煙を盛大に吹き出した。 

 「くだらねーな! 
 要するに、アンタは「ストーカーのストーカー」だったと・・・つまり、オレは二重にストーキングされてたって?」 

 タコオヤジは、何も言わずにタバコを蒸かし続ける。 

 不気味以外のなにものでもないが、恐らく彼なりの照れ隠しだったのだろう。 

 「実にくだらん!
 自分の罪を免れようと、そんな架空の美女とやらを捻り出してくるとは、アンタもガラに似合わず芸が細かいじゃねーか?」

 最早、タコオヤジの表情や挙動から、彼が真実を語っていることは明らかだったが、敢えて挑発してみると 

 「いや・・・だから、こっちは、そんなガラじゃない・・・事実を言っているだけさ・・・」 

 「・・・」
 
 照れ隠しのように、盛んに紫煙を吹き出しているタコオヤジの姿は、まったく「自白者」の姿そのものだった・・・

 「ところでアンタはなぜ、東京に出て来たのかな? 
 さては、地元でストーカー行為がばれて、止むに止まれず逃げて来たとか?」 

 「!!!」 

 酔った口からのデタラメだったが案外に図星だったらしく、酔いが一気に引いたように真っ青になったタコオヤジは、ガタガタと震えだした。 

 「あれは・・・ 
 あれは・・・違うんだ・・・!

 そう叫ぶと、タコオヤジは頭を抱えた。 

 タコオヤジの突然の叫びに、周囲の客が驚いてこちらを見る。 

 「まあ・・・大きな声を出しなさんな・・・他の客の注意を惹く・・・別に事を荒立てようという気はない」 

 タコオヤジは項垂れて、今度は泣いているようだった。

 酒乱特有の、感情の起伏がコントロールできないような、あの危険な状態に入ってしまったらしい ( -ω-)y─~~~~

2015/10/24

北陸信越の旅3日目(戸隠神社編・前編)

前日同様、地産の名物が惜しげなく並んた朝食バイキングから1日の始まりだ。

この日は、信州の山で採れた山菜の漬け物類が豊富に並ぶ。

 


 

観光地の朝食バイキングだけは、どうにも腹八分とは行かず、懲りずに腹が破裂しそうになるまで食べてしまった。前日のアルペンルートでは室堂こそ雪に祟られたものの、遊覧船で黒部湖を一周できたのに加え、念願の黒部ダム大放水も堪能出来ただけに、最終日は予定通り戸隠神社行きで、前夜のうちにパートナーと確認していた。

 

信濃大町から長野市までバスで移動するまでは順調だったが、電車への乗り継ぎの時間が17分しかないというプレッシャーの中、のっけから

 

「長野駅が見つからん!」

 

という思ってもみなかった「珍事」に出くわした。

 

ビル2階の駅をやっとのことで探し当て、目に付いたコインロッカーに荷物を放り込んで、戸隠行きのバスターミナルへと急ぐ。ところが駅前のターミナルに、どう探しても目的のバスが見当たらない。

刻々と容赦なく迫る出発時刻・・・ターミナルから、一つだけポツンと離れた停留所を遠目に見て

(あれか??  あれしかない!!!)

と、ダッシュをせんばかりに逸る心を嘲笑うかのように、赤信号で長々待たされた挙句、辿り着いた停留所は行き先が違っていた!

 

(どーなってんだ、こりゃ?  戸隠行のバス停なんて、どこにもないじゃん・・・?)

 

パートナーと2人、血走った眼を皿のようにして探し求めるバス停は、皆目見当たらないまま、到頭「発車時刻まで、あと1分」という絶体絶命のピンチだ。

 

「バス停がどこだか、サッパリわからん・・・・こうなりゃ戸隠は諦めて、上田城~小布施、小諸コースに変更するしかないか・・・!」

 

「えーっ!  そんなー!」

 

失意のどん底に突き落とされたようなパートナーを横目に、最後の一縷の望みを託した「しょぼい停留所」をダメ元で確認すると「戸隠神社行き」の文字が躍っているではないか!

 

「ん?

なんか停留所名も違うし、場所も変なんじゃ・・・?」

と疑心暗鬼のパートナーを

「ともかく戸隠行きと書いてあるんだから、ここで待っていれば必ず来るはず・・・」

と安心させている間に、幸運にも定刻より遅れて到着したバスに飛び乗った。

 

「快晴」予報に関わらず曇りがちの天候だったものの、ともあれ一旦は99%まで諦めかけた「戸隠行き」のバスを探し当て、なんとか乗車できたことに安どの胸をなでおろす2人はバスに揺られること小1時間、遂に目的の戸隠にやって来たのである。

 

ところが戸隠神社のバス停が、これまた実にわかりにくかった。当初の目論見では「日本三大そば」に数え上げられる、有名な「戸隠そば」の店が最も集中する中社で降車予定だったのが、わかりにくいバス停表示のせいで中社を通り越し、一気に奥社まで行ってしまったのである。バスを降りると停留所前の目に付いた店に入り、名物の戸隠そばとご対面だ。

 


 

地酒とともに、塩汁という変わった味付けの、そば本来の風味を味わった。

 

 

腹ごしらえの後、奥社へと進む。

2015/10/22

北陸信越の旅2日目(立山黒部アルペンルート編・後編)

往路と同様、復路も行きかう「酔狂な」ハイカーとて人っ子一人なく「スキー場」と化した道なきハイキングコースを踏破し、無事に室堂駅にたどり着いたころは、皮肉にも雪が小止みとなっていた。

 


標高2450mの湧水「立山玉殿湧水」をペットボトルに入れる手も悴でいる。


 

ターミナルの広々としたレストランに入に入って暖を取り「白海老から揚げ氷見うどん膳()」と地酒で温まった時は、まことに生き返った気分であった。

 

(それにしても・・・お目当ての室堂がこれでは・・・明日の予定を潰してでも再度、出直すか?)

 

とパートナーに持ちかけてみたが、戸隠に興味津々のパートナーは、この案に乗り気ではなさそうなため結論は一旦、この先の旅程次第となる。

 

トンネルトロリーバスで大観峰へと移動すると、まことに信じがたいことに僅かな距離ながら、こちらは雪どころか薄日が差し込むような天候の元、3000m級の立山連峰の山並みが一望に広がっているではないか!



 こうして再び灯った希望を胸に、黒部平~黒部湖と移動していくと、あの室堂の積雪が嘘のように、時折青空すら覗くような天候に回復している。

 

(室堂のハイキングは残念な結果となったが、その分こっちで堪能せねば!)

 

と、遊覧船ガルべに乗船。4時半の最終便は、幸運にも他の乗船客なしの「貸切」となった。


 

黒部湖を一周して北アルプスを目前に体感した後は、いよいよハイライトの「黒部ダム大放水」である。これは上手い具合に、ダムに到着すると同時に見計らっていたように大放水が始まった。

 



ダイナミックな放水を堪能すべく、幾つか設けられたビューポイントを移動しながら、最後のダム展望台まで約400段という心臓破りの階段を登り切り、最後のビューポイントの絶景を堪能したところで、ちょうど大放水が終了(5時)したのは、実に絶妙のタイミングであった。


 

室堂の悪天候を除けば、ほぼ予定通りのスケジュールをこなしたアルペンルートの旅が終わり、信濃大町のホテルで楽しいディナータイムを迎える。ホテルの夕食には珍しい囲炉裏で焼きたての鮎や虹鱒、またマグロを始めとした海鮮料理から、ローストビーフまで、豊富に揃ったディナーバイキング、さらには勿論、旨い地酒も堪能したことは言うまでもない。


 

こうして大町温泉の湯で過酷なハイキングで疲れた体を癒し、最終日に備えた。

2015/10/21

北陸信越の旅2日目(立山黒部アルペンルート編・前編)

普段の朝食はロールパン2つ程度で済ましているが、観光地の名物料理がズラズラと並ぶホテルの「朝食バイキング」だけは、いつも旨すぎてつい食べ過ぎてしまう。

 


 

この日もご多分に漏れず「腹が破裂するほどに」食べて、いよいよこの旅行のハイライトとも言える「立山黒部アルペンルート」の日を迎えた。

 

前夜は「星に近い」立山のホテルで満点の星空を期待しながら、生憎の天候不良で星はひとつも拝めないまま、遂に恨めしい小雨の中の出発である。

(せめて、室堂では止んでいてくれよ・・・)

という淡い期待を胸に、立山駅を出発する。

 

ケーブルカーで美女平へ到着すると、前回うっかり見逃した「美女杉」が駅を降りてすぐのところにあった。

 


 

この美女平でも軽くハイキングを予定していたものの、傘なしでは難しい雨模様のために断念し、お目当ての室堂へと向かう。前回のアルペンルートで残した「宿題」は「黒部ダム大放水」と「室堂ハイキング」であった。

前回は、これ以上は望めないという好天に恵まれ、車窓一杯に立山連峰の紅葉が素晴らしかったが、この日は打って変わり弥陀が池~天狗平と山を登るにつれ天候が悪化し、お目当ての室堂を目前にしたところで雨は「雪」に変わっていた!

 

(これじゃあ、ハイキングどころではないじゃん・・・なんとか回復してくれんものか・・・)

 

という願いも虚しく、室堂に到着した時は無情にも「一面の銀世界」が視界に広がっているではないか!

3年越しの念願の室堂は、ひたすら寒い。とはいえパートナーともども、ここまで来たら最早意地のみで、雪の降りしきる中を100均で用意しておいた雨合羽を着ての「決死行」だ。

 

横殴りの吹雪に頬を打たれ、視界は0%の中をひたすら雪に向かって歩く。手袋はあっという間にびしょ濡れとなり、手はすっかり悴んでいた。行けども行けども視界は「銀世界」で占められ、最大目的だったアルプスの山並みはおろか、ハイキングコースの見どころとされる「みくりが池」や「血池」も積雪の景色に埋もれ、僅かに確認できるのみ。

 


 

最近の観光名所では必ず目にする、例のC国人旅行者すら蔭すらもなく、一つ間違えば「遭難一歩手前」の無謀なハイキングである。ともあれ、コース中間地点にある「みくりが池温泉」までは、どうにか辿り着いた。この状況だけに猛烈な温泉の誘惑と戦いながら、復路の「難行」を考え泣く泣く断念し、ここは小休止のみに止めておく。これ以上、雪が酷くなったら戻れなくなってしまうだけに、ノンビリと休んでは居られなかった。

2015/10/19

北陸信越の旅1日目(金沢編)

この日の天予報は、恨めしいことに全国的に晴れマークが広がっている中で、北越地方だけ雨マークとなっていた。東京から埼玉に掛けての車窓は青空が広がっていたのが、最高時速260kmで富山に差し掛かると、予報通り雲が広がって来ている。それでも金沢に着いた時は曇空で、当面は傘も要らなそうな気配だ。

 

金沢観光のメインは言うまでもなく兼六園であり、真っ先にこちらへと向かう。城下町周遊フリー切符というのを購入して、周遊バスで兼六園に到着だ。かねてから一度は訪ねたかった兼六園が、遂に目の前に広がった。


 

この時点で「日本三名園」(水戸偕楽園、岡山後楽園)制覇となったが、案外に殺風景だった後楽園に比べ、こちらは見どころ満載である。広い園内を一周し、出口へ向かうタイミングでポツポツと雨が降り始め、21世紀美術館に避難したが、雨脚は強まってくる。スケジュールを考えると、いつまでも雨宿りというわけにいかず、雨の中を近江町市場へ移動し、名物の海鮮丼と旨い酒に舌鼓を打った。

 

店を出た時には、上手い具合に雨が上がっていたため、歩いて「ひがし茶屋街」へ移動し、古い町並みを目の前にしたところで喫煙所で一喫していると、突如として猛烈な豪雨に見舞われた。

 

かつて出雲大社に行った時もそうだったったが、この変わりやすい天候は日本海側に特有のものかもしれない。少し雨宿りして小止みになったころを見計らい、ひがし茶屋街を歩くと雨に濡れた石畳に、ひときわ情緒があった。


 

予定では長町武家屋敷跡など、他にも観たいところは幾つかあったものの、兼六園に隣接する金沢城公園へと戻り、玉泉院丸庭園を皮切りに橋爪門続櫓などを見学する。

 

この日予約していた立山のホテルは、サービスの良いことに富山駅から送迎バスが出ていたが、最終時刻に間に合わず立山までは電車で移動し、立山駅から送迎バスでホテルに到着した。夕食の会席コースは、海の幸や富山牛の朴葉味噌焼き、締めにマツタケ釜飯という「富山のワンランク上の素材を使った」というだけあって豪華なコースで、旨いビールと地酒とともに大満足。肌がツルツルになるナトリウム炭酸水素塩泉の温泉も素晴らしく、まずは満足度の高い初日が無事に更けていった。