2019/09/17

カエサル ~ 内乱の一世紀(6)



  前60年、有力将軍三人による談合が成立し、彼らがローマの政権を握ることになりました。これが第一回三頭政治といわれるものです。

三人はカエサル、ポンペイウス、クラッススです。

クラッススはローマ一の大富豪。
ポンペイウスはローマ一の将軍。
カエサルは、これはローマ一の人気者。

この三人が力を合わせれば怖いものなし。元老院も上手く操ります。         

  三人で一番重要なのがカエサルです。英語ではシーザーと読む。シェイクスピアの劇でも有名だね。アレクサンドロス大王、ハンニバルに続く古代世界の英雄でしょうか。

この人、とにかく魅力があったようです。カエサルに会う人は、みんな彼のことが好きになる。カエサルは俺の友人だぜ、とみんなが言いたくなる。みんなの友達カエサル、です。あだ名が「ハゲのスケベおやじ」だって。こんなふうに呼ばれて、カエサルはガハハと嬉しそうに笑う人なんだね。

もう一つのあだ名が「借金王」。とにかく、カエサルは借金が多かった。ローマ中の金持ち、富豪から借金しまくり。この金を何に使うかというと、平民達にふるまうんですよ。例の、剣奴の試合をどんどん開催して平民達を招待する、食糧を買い込んでみんなにふるまう、それもみんなの度肝を抜くような規模でやるんだ。だから、ますます平民達のカエサル人気は高くなる。

また、平民達も知っているわけ。カエサルさんは俺達にふるまうために借金で困ってるよ、今度の選挙ではカエサルさんを公職につけて儲けさせてやらないといかんな、とか言って投票してくれるわけですね。

  さて、そのカエサルですが前58年から、ガリア遠征に出ました。この遠征は前51年まで続くのですが、この期間にカエサルは人気に見合うだけの実力をつけたんです。

ガリアというのは、現在のフランスを考えてくれたらよいです。ガリア人という人々が住んでいた。部族集団で生活していて、まだローマの領土にはなっていない。このガリア人と戦って、勝ち続けます。

カエサルの勝利が、次々にローマ市に伝えられる。そのたび毎に、また彼の人気は上がる、将軍としての実力も付いてくる。彼の兵士は、当然のごとく彼の私兵です。この兵士達との人間的な繋がりも強くなるんですね。親分子分関係が出来上がる。何よりも勝利によって、カエサルは負けたガリア人から財産を搾り取りますからね、借金王から大富豪に変身するのです。

カエサルの将軍としての実力がついてくると、内心面白くないのがポンペイウスです。それでもクラッススが生きているうちは、三人でなんとかバランスが保たれていたんですが、前53年にクラッススが死ぬとカエサル、ポンペイウスの対立がはっきりしてきました。二人は政略結婚で姻戚関係を結んでいたんですが、そんなのも吹っ飛ぶぐらいです。また元老院は元老院でポンペイウスを利用して、カエサルを潰そうとします。

こういう状況の中で、カエサルは「賽は投げられた」といってガリアから軍隊率いて、ローマに進軍しました。ポンペイウスと決戦だ。結局、ポンペイウスは敗れてエジプトに逃げる。しかし、ここでエジプト人に殺されておしまい。カエサルの勝利です。

この時、カエサルはポンペイウスを追ってエジプトにやってくるのですが、ここで出会ったのがあの有名なクレオパトラです。

  クレオパトラは、エジプトの女王として有名ですね。この時の状況を少し話しておきます。ローマは、すでに地中海を取り巻く世界をすべて領土に加えていました。しかしエジプトだけは、かろうじて独立していた。だから、ポンペイウスは逃げて来たわけですよ。しかしローマの強さは圧倒的ですから、エジプトは何時ローマの属州にされてもおかしくない状態ではあります。だから、ローマの事実上の第一人者であるカエサルがやってくると、エジプト政府は彼を歓待するわけです。機嫌を損ねちゃいけないからね。

で、問題のクレオパトラですが、王は王なんですが、もう一人エジプト王がいたんですよ。これがプトレマイオス13世という。共同統治といって、この地域では結構あるパターンです。

プトレマイオス13世は、クレオパトラの弟なの。だから姉弟で王様やっている。これだけならいいんですが、さらにややこしいのは、二人は夫婦でもあるのです。近親結婚だね。イクナートンみたいに自分の娘と結婚する王もいたくらいだから、エジプトでは不思議ではない。クレオパトラ達プトレマイオス朝の王家はギリシア人だけど、長くエジプトで生活するうちにエジプトの風俗に染まったんだろうかね。

さらにややこしいのが何かというと、この姉弟は仲が悪い。権力闘争があって、弟王とその一派が実権を握っていて、クレオパトラは干されていたんです。でも、彼女も権力欲しい。

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