そんな時に、エジプトにやって来たのがカエサルですね。
彼女は考えた。カエサルに会って自分の後ろ盾することが出来たら、弟を追い落としてエジプトの真の女王になれる。
ところが、彼女には弟王の監視がついていて、なかなかカエサルには近づけない。
そこで考えたのが絨毯作戦。
彼女は、自分を絨毯でぐるぐる巻きにさせる。そして、エジプトの富豪からの贈り物だといって、その絨毯をカエサルの宿舎に届けさせたんです。
カエサル、「立派な絨毯だ」とか言いながら広げると、中からポンとクレオパトラが飛び出てくる。びっくり箱ならぬ、びっくり絨毯だ。恋愛というのは、出会いの瞬間が大事。こんな劇的な出会いはない。カエサルは、この一撃でもうメロメロになったという。
この話、ちょっと信じがたいけどね、広く知られた話です。資料集にも丁寧に、このシーンの絵がのっているでしょ(ジェローム画)。ちなみに、クレオパトラは21歳。カエサルはというと52歳。ウーン、というところだね。
クレオパトラは伝説のような絶世の美女ではなかったようですが、教養あふれる知的な女性だった。特に声が魅力的だったんだって。どんなんだったんだろう。何よりも、こういう大胆な行動力は魅力的だと私は思いますが。
ともかく、クレオパトラはカエサルに会うことが出来て、計画通りに彼を自分の魅力の虜にしました。カエサルは、ついにはエジプトの宮廷闘争に介入してクレオパトラを名実ともにエジプト女王にし、さらにエジプトの独立を保証したのです。
ローマに還ったカエサルは、ポンペイウスの残存勢力をやっつけて前46年には終身独裁官になった。事実上の独裁者といってよい。あらゆる栄誉と権限を一身に集めたのです。実力者だから誰も文句を言えないのですが、カエサルの振る舞いを見ていて、かなりの人たちが疑いを持ち始めたんです。
「カエサルは、王になろうとしているのではないか」とね。
独裁者なら、まだ前例はあった。スラとかね。だから、まだ我慢できる。しかし、王は別です。ローマ人には共和政に対する誇りがある、王政に対してはものすごいアレルギーがあった。
元老院主導の貴族政治が否定されることですからね。貴族達は、カエサルに警戒心以上の敵意を持ち始める。ブルートゥスをリーダーとする共和主義貴族のグループが最も急進的でした。
彼らによって、カエサルは暗殺されてしまうのです。前44年3月15日、カエサルが元老院の議場にやってくると、待ちかまえていたブルートゥス達がカエサルに襲いかかり、短剣で彼を刺す。カエサルは必死に抵抗するのですが、自分を襲う貴族の中にブルートゥスの姿を見つけ「ブルートゥスお前もか!」と叫んだというのは有名なお話。
ブルートゥスは名門貴族出身なんですが、結構カエサルに可愛がられていて彼の保護のもとに重要な役職についていたりする。そのブルートゥスまでもが俺を殺すのか! という意味ですね。
これは裏話があって、ブルートゥスはカエサルよりも25歳年下です。で、カエサルは、若い頃にブルートゥスの母ちゃんと付き合っていたの。カエサルは、もてますからね、若い頃から女性関係は激しい。その後、二人は別れて彼女はブルートゥスの親父と結婚するわけですが、ブルートゥスの誕生日を聞いてカエサルはひょっとしたら、って思っていたらしい。俺の子かも、と思っているから引き立ててやったんじゃないかとも言われています。
ブルートゥスからすれば、たとえそうであっても共和制を守るためには殺さなければならないと考えたんですね。王政に対する反発の強さが分かるね。もっとも、この話はどこまで信頼できるか分かりませんが。
さあ、カエサルは暗殺されました。このあとはまた次回。
クレオパトラですが、カエサルの子供を産んでいるのです。男の子でカエサリオンという。母子は暗殺の日、カエサルに招かれてローマに来ているんです。カエサルの死を知ったレオパトラはカエサリオンを引き連れ、急いでアレクサンドリアに帰っていきました。
カエサリオンは独立王国エジプトの王子であり、まだ子供です。カエサルの遺産相続人にはなりませんでした。
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