2019/10/12

ローマ市民の都市生活 ~ 内乱の一世紀(9)


出典http://timeway.vivian.jp/index.html

  ローマ人が、どんな生活をしていたかを見ておきましょう。

彼らの生活はユニーク。時代はカエサルから五賢帝時代、だいたい紀元前50年くらいから200年くらいまで、と考えておいてもらったらいいです。

ローマ市は「パンとサーカスの都」と言われる。広大な属州から搾り取った富がローマ市にはどんどん流れ込んでくる。その富がローマ市民にばらまかれた。ローマ市民であれば何も財産がなくても食べるに困らず、娯楽も只で提供された。それを言いあらわしたのが「パンとサーカスの都」です。

まず、パン。穀物の無料配給というのが行われていて、家族が何人もいたら足りないけれど、自分一人なら充分に食べていけるだけの食料が配られました。それ以外にも、臨時で皇帝や有力貴族が配るからね。

ネロ帝は暴君として有名だけど、民衆の人気は高かったんだ。彼は裕福な市民を死刑にして財産没収して、兵士や民衆にサービスをしまくるんだね。カリグラ帝は、本当に金貨をばらまいたりもした。広い意味で民衆、狭い意味で兵士に支持されることが皇帝権力の源だったことが分かります。

サーカスも分かるでしょう。剣奴の試合が頻繁に行われていた。あと競馬。戦車競争です。演劇も盛んだったようだ。

こういう娯楽がしょっちゅう行われていて、費用は皇帝や有力者持ち。皇帝達は人気取りのために、国家の祭りや記念日をどんどん増やしていくんです。そういう祝日祭日には、色々な催し物を開催する。要するに市民は、只で遊んで暮らせたわけだ。

有名なコロセウムです。5万人収容というからすごい。当時は天幕を張って、屋根もついていた。中に水を張って、模擬海戦の見せ物もやったんだって。そんなこと思いつくことが驚異。東京ドームに水を入れて、ボート競技しようなんて思いつきますか。

 市民サービスとして有名なのが公衆浴場です。カラカラ帝の造ったものが規模の大きさで有名ですが、それ以外にもローマ市内には千軒以上の公衆浴場があった。

これ、浴場と訳しているけれど、日本の銭湯を思い浮かべたらダメですよ。日本語に翻訳する時に、あてはまるものがなかったから公衆浴場なんて訳されて教科書や資料集もそう書いてあるけど、実は違う。

ようやく日本にも、これが普及してきました。フィットネス・クラブとかスポーツ・クラブとか呼ばれている、あれです。うちの近所にエグザスというのがありますが、まさしくあれ。

入場料は非常に安かった。本には10円と書いてあるんですが、只くらい安かったと思っておこう。で、入場するとまずトレーニング・ルームがある。そこでレスリングしたり、球技したり、円盤投げ、やり投げの練習で一汗流します。

次はマッサージ・ルーム。ここで身体をほぐしてもらって、いよいよ入浴。これはサウナです。低温サウナで慣らしてから高温サウナ。二つのサウナがあったようです。身体をきれいにして暖まったところで、最後はプールでひと泳ぎ。まさしく、フィットネス・クラブでしょ。

さらに、ここで終わりじゃないんですよ。このあと遊戯室や談話室に入る。友達とお喋りしたり、将棋なんかのゲームをしたりして遊ぶ。やがて腹が減りますわな。そしたら食堂へ行く。景気の悪い時でも、最低6皿の料理が出た。そのうち2皿は肉料理だって。当然、ワインもでるでしょうね。これ別料金ではないですよ。初めの10円の入場料で、最後まで遊んで食べられる。

今の日本より、よっぽど満足いくサービスですね。これがローマの公衆浴場です。

 一般市民でこれだから、裕福な市民や貴族はどうだったか。この風呂やプールを自宅に持っている人々ですからね。彼らの贅沢を言い出したらキリがないので、食事風景だけ話しましょう。

貴族達は、しばしば宴会を開く。こういう時に主催者は金に糸目を付けず、珍味をどこからでも手に入れてきて風変わりな調理を施して、これでもかこれでもか、と食事を出したらしい。

宴会に出る者達は、食事服というのを着ます。これは食事の時だけ着る、使い捨ての服です。

資料集の食事風景のイラスト見て下さい。寝そべっているでしょ。これが正式な食事のマナー。彼らは、箸もフォークもスプーンも使いません。食事は手づかみ。寝そべって手づかみでだらだら食べる。手は、すぐにぐちゃぐちゃに汚れるね。その手を食事服で拭うわけです。だから、汚してもよい服が食事服。

なんですが、彼ら金持ちはこの食事服に金をかけて、贅をこらしたりするのですよ。その高価な食事服を惜しげもなく汚して、ポイポイって捨てるの。一回の宴会で何回も着替えたりする者もいる。

彼らを見ていると、散財する事に情熱をかけているようです。それがステータス・シンボル(地位の象徴)だったんだろうね。アピキウスという大金持ちの話があります。この人食道楽でさんざん浪費したあと、あと10億円財産が残っていたのに、貧乏では生きている意味がないと言って自殺した。

で、宴会は続きます。どんどん食事は出ます。出席者、満腹でもう食べられません。そうすると侍っている奴隷を呼ぶ。宴会場には、たくさんの奴隷がいるんですが、孔雀の羽を持っている奴隷がいる。その奴隷がその貴族に近づく。貴族は上を向いて、アーって口を開ける。奴隷が、その口の中に羽を突っ込んでグリグリするんです。満腹の喉に異物を突っ込まれますからね、ゲーッて吐くんです。

お腹の中のものをすっかり吐き出して、貴族はまた新たな皿に挑むのです。吐いた汚物はというと、別の奴隷がきれいに処理してくれる。彼ら吐くために食っているのです。

これは明らかに異常な光景だよね。こういう暮らしぶりを退廃と呼ぶのだと思います。

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