既に出来ている分の報告書のまとめや調査など独自でで きる事はあったが、前日は深夜の3時過ぎまで付き合わされた事に加え、先方の担当者がこの日は午前中が別作業に入るため、午後からしか審査の対応が出来ないと聞いていたため、この状況を利用して午前休みを取る事にした。
なにせ、このところトラブル続きで毎日夜遅くまで付き合わされ、寝不足が重なっていたのである。
が、そうは問屋が卸さなかった。
午後出勤を決めながら、やはり気になって9時30分くらいに眼が覚めると、リーダーのN氏から電話が入った。
「にゃべさん、今どこにいるの?」
「今ですか・・・まだ家ですけど・・・」
「もう9時半(定時)過ぎてるよ。
何時に来るつもりなの?」
「今から用意して、出ようとしてたところですが・・・でも今日は向こうの担当が午前いないから、午後からスタートだし・・・」
「それが・・・さっきK氏(サブリーダー)から連絡があって、リーダーのS氏は午後からだけど、K氏と他のメンバーでやりたいと言ってきたんだ」
「午前中から・・・?」
「そう。
詳しい話は来てからするよ。
ともかく向こうはもう待ってるから、にゃべさんは早く来てくれ」
という思いもよらぬ展開となり、仕方なく午後出勤の予定を変更しておっとり刀で駆けつけると、前日深夜の3時過ぎまで一緒に残っていたリーダーのN氏、技術リーダーのR氏ばかりか責任者のK氏とH氏とも、揃って出勤していたのには驚いた。
結局10時半近くの出勤になってしまったが、その間10人ほどいる他のメンバーが代理を勤めてくれるわけもなく、みな知らぬ顔である。
「遅いじゃん!
先方は待っているだろうから、早く開始連絡をして始めないと・・・」
と、待ち構えていたリーダーから文句を言われた。
「さっき電話で話した通り、K氏が待っているから連絡してあげて」
とリーダーにせかされ、慌てて審査の開始を告げる。
普段は口煩いN氏を始め、通勤時間2時間のR氏、また責任者の2人も含め誰一人として前日、深夜3時過ぎまで残っていたのを理由に遅れてくる者がなかっただけに、自転車で15分と最も楽な条件にいながら確信犯的に遅刻を決め込んでいたこちらとしては、いささかバツが悪かった。
審査は木曜日この日を含めて残り2日だが、最後に書類をまとめなければいけないから、この日のうちに終わらせたい。
が、この日は相手側の担当者が、午前中は他作業に取られてしまうため、午後からしか作業が開始できないと聞いていたが、サブリーダーと他の要員で都合をつけて、午前中からリカバリをしたいという話に変わっていた。
遅まきながらスタートしたものの、夕方までは作業が順調に流れ、夜の7時くらいで遂に全工程が終了した。
「これで、全工程が終了しました。
お疲れ様でした」
「ありがとうございました。
色々とご迷惑をおかけしましたが、なんとか無事期間内に終わらせる事が出来てよかったです」
と、お互いに肩の荷が下りた安堵感に浸っていたのだ。
「審査自体はこれで終了ですが、後はお役所に出す報告書の作成があります。
こちらの方も明日中となっていますが、内容の確認をしたいので午前中にいただききたい、と思っておりますが」
と伝えると、報告書は審査と並行して作成してきたため、もう出来上がっているとのことだった。
「おー。
もう送ってきたわ」
というR氏の声を耳に報告書を作成していると、しばらくして
「うそー!
信じられへんわ、こんなん。
やり直しやー」
という、R氏の絶叫が耳を劈いた・・・
-----------------------------------------------------------
K省お抱えベンダー、NTT某から送られてきた技術審査の結果報告書を確認したR氏が、激怒の絶叫を放ったのも無理はない。
そこにはあるべきはずのない、いやあってはならない結果が書かれていたのだから・・・
「あってはならない結果」の内容がどんなものか、ここで詳細を書いても現場の経験者にしかわからない事柄なので、内容は割愛する。
が、審査の経験があり、またこの審査をともに行ってきた前提を踏まえて、明らかに「虚偽の記載」としか思えないのが二箇所あり、さらに意図が理解できかねるような記載も一つあった(「○」か「×」で結果を書くところが「△」になっているなど。
結果を確認できてないか、想定外の結果が出たために、苦し紛れに「△」にしたとしか思えないのである)
「Rさんが言ってるのは、どのこと?」
「そんなもん、見りゃわかるやろ」
「まあ、一応訊いてるわけだから・・・」
「おかしなところなんか、幾つもあるがな・・・」
と興奮冷めやらぬ様子のR氏は、まくし立てた。
「例えば、この第x章の結果に「△」が入っとるやん。
『△』なんて判定は、あらへんで?
にゃべさんは、どう解釈するの?」
「多分、結果を確認してないか、想定外の結果が出たため苦し紛れにそう書いたんじゃないかと」
「あと、第x章のところも『△』になっとるし、他にも第x章のとこなんかも、この前訊いた話から考えるとこんな結果が出たっちゅーんは、俄かには信じられへんわ」
普段からいい加減そうなR氏だったが、それでもやはり見るべきところはしっかりと抑えていたのは、さすがだった。
0 件のコメント:
コメントを投稿