リストと言えば、ピアニストとしてあまりにも有名すぎるため「作曲家」として採り上げられることが少ないが、実際には作曲家としても超一流である。交響詩の創始者であるばかりか、なにしろロマン派の申し子のような存在だけに、壮大でドラマティックなオーケストレーションが素晴らしい。なんといっても、あのワーグナーの先生なのだから、ド派手に決まっている。
『祭典の響き』は、リストが作曲した7番目の交響詩である。1854年に、ヴァイマルでシラーの戯曲「芸術への忠誠」が上演された際に、その序曲として作曲し初演された。だが、劇の内容と直接的な関係は持っている訳ではなく、一説によれば当時同棲生活をしていたヴィットゲンシュタイン伯爵夫人と近く結婚することを想定し、そのための祝典序曲として書かれたものと言われている。特定の表題を持たない点で、リストの他の交響詩とは性格が異なっているが、リスト自身は交響詩という名称をかなり自由な内容の曲にも拡大して用いていたようである。
ティンパニに導かれて出る行進曲風の主題に始まり、続くいくつかの主題を基に組み立てられており、祝典的で輝かしく喜ばしい気分のうちに進められる。この曲は、ザイン=ヴィトゲンシテイン侯爵夫人に献呈されている。婦人がポーランドの出身だったため、曲中にポロネーズのリズムを使っている。
1847年、リストがウクライナに演奏旅行した際に、キエフの大地主であるカロリーネ=ザイン=ヴィトゲンシテイン侯爵夫人と親交を結ぶようになる。2人は同棲したが、カトリックでは離婚を禁止していることと財産相続上の問題もあって、結婚は認められなかった。その後、1861年にカロリーネと結婚すべく動いたリストであったが、遂に果たせなかった。それ以降リストは僧籍に入り、生涯黒衣をまとうようになった。
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