2007/01/05

リスト 交響詩第11番『フン族の戦い』(Hunnenschlacht)

 


リストの肖像画も多数残しているカウルバッハの絵にインスパイアされて作曲された。

カウルバッハの絵は、451年のカタラウヌスの戦いを描いた絵である。

 

ゲルマン民族大移動の時代、一大勢力を築いたアッティラ大王の率いるフン族は、451年のカタラウヌスの戦いでローマ、西ゴート、フランクの連合軍に敗れ、フン族の帝国は瓦解した。 その一部がドナウ河畔に定住し、ハンガリーのルーツとなる。

 

アラン・ウォーカーの『リスト』では、アッティラは皇帝テオドリックと戦ったと紹介されており、その注釈で「これはリストの序文による情報だが、これは間違っている」となっている。が、マイクロソフト・エンカルタによれば、西ローマ帝国の将軍アエティウスは、西ゴート王テオドリック1世の支援を受けてフン族を撃退した。しかし、カタラウヌムの戦いでテオドリック1世も戦死したとなっているので、リストの序文は正しいのかもしれない。

 

フンガロトンのCDの竹家氏によるライナーでは、1856年にリストはチューリッヒのワーグナーを訪ねた帰りに、ミュンヘンのカウルバッハの元を訪れ、しばらく滞在しそこで絵を見たことになっている。アンドラーシュ・バタによるオリジナルの解説では、ヴィトゲンシュタイン侯爵夫人が、まずこの絵に感銘を受け、その複製をリストに送ったとなっている。この絵はベルリン美術館の階段の壁に飾られていたが、第二次大戦時の戦火で消失したとのこと。この曲の中では、コラール「十字架に誠実なれ」が使われる。

 

エンディングの響き(旋律ではなく)が、楽器の選択の仕方からか、続く『理想』の主題に似ており『ファウスト交響曲』の第1楽章「ファウスト」のエンディングも連想される。オーケストラの壮大な音と、オルガンによるコラールの旋律が交互に奏でられ「戦争」が持ち合わせる性格や「英雄」、「悲劇」、「救済」といったテーマを描いたものと思われる。

 

リストは、オルガンの演奏について「カーテンの後ろに位置し、隠れているように」と指示している。コラールの旋律は、天からの「救い」、「慈愛」というような意味合いが強くなる。このような演出的な効果は、リストは同じように『ダンテ交響曲』の『マニフィカト』でも実施しようとした。 アラン・ウォーカーによると、リストは楽譜に、例えばイントロの部分では「亡霊のような音」、ホルンのパートでは「戦争の悲鳴」といった指示を書いている。

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