2007/01/03

リスト 交響詩第1番『人、山の上で聞きしこと』(Ce qu'on entend sur la montagne)

 


リストが作曲した最初の交響詩。

タイトルは『山上で聞きしこと』や『人、山の上で聞いたこと』などとも表記されるが、稀に『山岳交響曲』と呼ばれることがある。リスト自身が最初、この作品を「交響的瞑想」と呼び、その後「山岳交響曲」と呼んだことに端を発している。リストの交響詩の中では、最も演奏時間が長い。セザール・フランクは、リストに先んじて1846年に同じ題材による同名の交響詩を作曲している。

 

リストは交響詩を生み出し、13曲を残しているが、この交響詩は最初のもの(第1番)で、かなり早い時期に1833年から1835年頃にかけてスケッチを行なっている。そして最終的には1849年に完成し、翌年の1850年にヴァイマルで初演されたあと、改訂が何度も加えられて現在の形となった。リストの交響詩『山上で聞きしこと』も、それぞれの「声」を主題で表わし、それらが入り組むことでドラマティックな世界を描く。

 

リストの交響詩における「詩」の占める比重として、象徴的に用いているのみの「オルフェウス」(S98)、『プロメテウス』(S99)らのグループに対し、この『山上で聞きしこと』は『理想』(S106)と同じく音楽語法による構築よりも、詩、文学のコンセプトによる構築の比重が大きいと言える。

 

タイトルは、当時同じサロンでリストと親しく交際のあった、詩人ヴィクトル・ユゴーの1831年に出版された詩集「秋の葉」の一篇に基づいている。詩人は山の中で2つの声を聞くが、1つは広大で力強く秩序のある自然の声であり、もう1つは苦悩に満ちた人間の声である。この2つの声は闘争し入り乱れ、最後は神聖なものの中に解消することになるというものである。

 

自然の神秘を表現した漠たる気分で始まり、やがて人間の主題と崇高で雄大な自然の主題が現れ、両者が互いに争うように進むうちに、アンダンテ・レリジオーソの主題がトロンボーンによって荘重に奏され、最後は平和な静けさの中に曲の終わりを告げる。詩人が山に登り、苦悩に出会った後、自然の美しさや達成感を表した内容を描いたのである。

 

1833-1835年頃に書き、1849年に完成。ワイマールで、リスト自身の指揮により1850年に初演。だが、難しい上、長すぎると指摘され、その後、改訂された。オーケストラの魔術師・リストの第一歩でもある。

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