2012/08/20

まな板の鯉(歯医者地獄)(4)

元々、我々患者は歯について素人であるというだけでなく、歯は自分では見えないものだから案外と自分の歯のことはわからないものである。実際に下の歯が痛いと思っていて、歯医者に行ったら「悪いのは上の歯だよ」と言われ、確かに叩いたら上の方が痛かったということもあったくらいで、自分の感覚などはまったく当てにならないものである。ましてや表面に見える側の歯ならばともかく、裏や奥の方の歯などは目で見ることすら出来ないから、まったく当てにもならない「感覚」だけに頼っているのが実情だ。

 

歯というものは11本が独立しているように見えるが、根は繋がっていると考えた方が正しい。そう考えると、極端に言えば歯科医から

 

「事実は、こうだ!」

 

と言われたら、自分では確かめようがないから

 

「ああ、そうですか・・・」

 

としか言いようがないのであって、医師から

 

「この歯が悪いから、治療しないといけない」

 

と言われれば、実際にはそれが健康な歯であっても、本当のところはよくわからない。今はPCなどを使ってレントゲン写真を見せてはくれるが、実際にどの程度の処置が適切であるかとなると、素人にはよくわからないことに変わりはない。

 

「コレは抜くしか方法がない」

 

と言われても

 

「ああ、そうですか・・・」

 

としか言いようがないのであり、あの数千万円といわれる椅子に寝たが最後、俎板の鯉同然に我々は歯科医の言われるがままなのである。

 

余談だが、歯医者が虫歯になったらいかに名医とはいえ、内科の風邪のように自分で診察は出来ないから、他の歯医者に行くんだろうなー。

 

それにしても初めて勤務医にかかって、あまりに呆気なく治療が終ってしまったせいか、逆に天邪鬼のワタクシとしては

 

(こんなに簡単に終るなんて・・・この際だから、歯石とやらも取ってもらおうじゃないの・・・)

 

などと考えたのが運の尽き(?)で、結果的にこれを切っ掛けとしてあのような泥沼に嵌ることになろうとは。

 

歯石を取って

 

(これで綺麗になったぞー!)

 

と喜んだのは、ほんの一瞬で

 

「歯石を取って綺麗にはなりましたが、取ってみたら虫歯が一本見つかりました。歯石がかなり溜まっていたので、最初見た時にはわからなかった・・・」

 

ということだ。

 

「かなり大きな穴が開いているので、次回は麻酔をして治療しましょう・・・」

 

ということで、結局は例によっていつもの「泥沼通院パターン」に片足を突っ込み始めたような状況となったものの、それだけ酷い虫歯と聞いては放置しているわけにもいかない。

 

ところで、ワタクシには「麻酔」に対するある種の恐怖感があった。恐らくは普通の人がそうであるだろうが、自分自身も最初は

 

(麻酔をするんだから、抜こうがなにされようが痛くはないはず・・・)

 

と鷹揚に構えていたものだったのだが、どうやら「麻酔が効きにくい体質」であるらしいのだ。

 

初めて麻酔をした時も、痛みを感じて

 

(麻酔してるのに痛いっての、ありかよ?)

 

などと痛みを堪えていたものだったが、治療の途中から痺れた感覚がやってきて、治療が終って帰宅し食事をする時になってから本格的に痺れて来た、などということもあった。

 

「麻酔が効きにくい」というよりは「効くまでに時間がかかる」体質というのが正確で、これは毎日酒を飲んでいるせいかも知れない。その証拠に、ある人が

 

「麻酔が全然効かなくて、家に帰ってからビールのみ始めたら効いてきて、ビールがダラダラと口から流れ落ちてきた」

 

という話を聞いて

 

「そこまでして飲みたいのか!」

 

などと、上司にからかわれている相手に

 

(同類、発見!)

 

と快哉を叫んだくらいである。

 

そして恐れていた通り「麻酔をしたのに痛い治療」となりながらも、何とか虫歯の治療を終えたまでは良かったのだったが・・・

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