2019/04/04

水垣の宮の巻【崇神天皇】(5)

口語訳:この意富多多泥古という人が神の子だと分かったのは、つぎのような事情である。

上記の活玉依毘賣は、容姿が大変美しかった。ところがたいへん気高い様子の男がいて、その容姿、振る舞いは類い稀な立派さの人が、夜中に突然やって来て、一目でお互いが気に入った。そこで幾晩か共に過ごしたが、まだそれほど時日も経っていないのに、活玉依毘賣は妊娠した。

 

父母は娘が妊娠していることを知ると、彼女に

「お前は明らかに妊娠している。夫がないのに、どうして妊娠したのか」

と尋ねた。

 

すると

「とても麗しい男の人がいて、名前も知らないのですけど、毎晩やって来るのです。それで一緒にいましたら、いつの間にか身ごもっていました」

と答えた。

 

父母はその人が誰か知りたいと思って、娘に

「麻糸を針に通しておいて、その人がやってきたら、着物の裾に刺しなさい」

と教えた。

彼女は教えられた通りにしておいた。

 

朝になって見ると、糸は鍵穴を通って外へ出ており、麻はただ三輪を残すだけだった。その鍵穴を通った様子を不思議に思って、糸の跡をたどって行ってみると、美和山まで続いており、神社で終わっていた。それでそれは神の子であったと分かった。その糸が最後に三輪残っていたので、その地を美和という。<この意富多多泥古は神君、鴨君の先祖である。>

 

口語訳:この御世に、大毘古命を高志の道に遣わし、その子建沼河別命を東方十二道に遣わして、その地にいたまつろわぬ人たちを平定させた。また日子坐王を丹波国に遣わして、玖賀耳之御笠という人物を殺させた。<これは人名である。>

 

口語訳:大毘古命が、高志国に向かっていると、腰裳を着けた少女が山代の幣羅坂に立って歌っていた。

「子よ、御眞木、入日子よ、御眞木、入日子よ、ああ。自分の命をひそかに狙っている奴が、後ろの戸から、こっそり回りこんで、前の戸から、様子をうかがっているのを、知らないで。御眞木、入日子よ、ああ」。

 

大毘古は怪しい歌だと思い、馬を返して、その少女に

「お前が言ったのは、どういう意味だ」

と尋ねた。

 

すると少女は

「あたしは何にも言ってないわ。歌を歌っただけよ」

と答えたかと思うと、もう姿が見えなくなった。忽然と消え失せたのである。

 

口語訳:そこで大毘古命はいったん都に帰り、天皇に報告した。

天皇は

「これは、山代国にいる私の庶兄、建波邇安王が邪心を抱いているということだろう。伯父、軍を興して、行ってくれ」

と言って、丸邇臣の先祖、日子國夫玖命を副将に付けて派遣した。

 

出陣の時、彼らは丸邇坂に忌瓮をすえて出発した。山代の和訶羅河に到ると、建波邇安王も軍を興して待ち受けていた。そこで両軍は川を間に挟んで挑み合った。それでその地を「いどみ」と呼んだが、今は訛って「いずみ」と言う。

 

日子國夫玖命は「開戦の矢を、まずそちらから放て」と言ったので、建波爾安王の軍が矢を射たが、誰にも当たらなかった。次に國夫玖命の軍が矢を射ると、建波邇安王に当たって死んだ。軍は指導者がいなくなって、散り散りに逃げ去った。その逃げる兵士たちを追って、久須婆の渡りまで追い詰めた時、その兵士たちは追い詰められ、苦しみの余り糞をもらして、袴にかかった。それでその地を「くそばかま」と呼んだ。今は訛って「くすば」と呼ぶ。またその逃げる軍をさんざんに斬り散らしたので、死体は鵜のように川に浮いた。それでそこを鵜河と言う。その軍を斬り屠ったので、そこを「ほふりその」と言う。このように敵を平らげて、復命した。

 

口語訳:その後、大毘古命は、先に命じられた通り、高志の国に趣いた。そこへ東方に派遣されていた建沼河別が戻って来て、父の大毘古命と相津(会津)で再会した。それでその地を相津と呼ぶ。こうしてそれぞれ派遣された国を無事に治めて、復命した。

 

口語訳:こうして天下は太平となった。このとき、男には弓端(狩りの獲物など)の調(税)、女には手末(織物など)の調を課した。その御世を称えて、所知初國之御眞木天皇と呼んだ。

 

口語訳:またこの御世に依網池を作り、輕の酒折池を作った。

 

口語訳:この天皇は百六十八歳で崩じた。御陵は山辺の道の勾の岡の付近にある。

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