18世紀、パリにほど近いアミアンの旅籠前の広場。青年騎士デ・グリュ-は、駅馬車から降り立ったマノンの美しさに一目惚れする。妖艶で奔放なマノンは、兄レスコ-に連れられて修道院に入ることになっていたが、デ・グリュ-の熱烈な誘いに心を動かされ二人でパリに駆け落ちする。しかし、マノンはパリでのデ・グリュ-との貧乏暮らしに飽き足らず、かねて自分に関心を寄せていた財務官ジェロントの愛妾となってしまう。贅沢だが愛のない生活にやがて空しさを覚えたマノンの前にデ・グリュ-が現れ、愛を確かめ合っているところをジェロントに目撃される。プライドを傷つけられた怒りと嫉妬に燃えるジェロントは、マノンを姦通と窃盗の罪で警察に告発し国外追放処分に追い込む。流刑地アメリカで再び一緒になったマノンとデ・グリュ-は、追っ手を逃れて荒野を彷徨う。やがて餓えと渇きに衰弱したマノンは、デ・グリュ-に永遠の愛を誓いながら彼の腕に抱かれつつ息絶える。
プッチーニの音楽はイタリア・オペラの伝統にのっとり、劇的な展開と緻密な描写的表現、そのために繰り出される転調やオーケストレーションの豊かさが特徴的だが、とりわけ忘れがたい旋律の美しさは特筆に価する。プッチーニの旋律は、しばしば息が長いにもかかわらず覚えやすく、しかも口ずさみやすいのが特徴だ。しかも、とってつけたようなぎこちなさがまったくなく、自然で滑らかに流れていく。
オペラ作曲家としての訓練が比較的遅いことからしても、このような生来の旋律家ぶりが最大限に発揮された事実は、まことに驚異的ですらある。このため、Classic音楽やオペラの初心者にとっても、プッチーニ作品は親しみやすく魅力的なのである。
同時代の作曲界や批評家は、その直感的な分かりやすさゆえに、大衆迎合的なお涙頂戴をプッチーニ作品の性格に見出し、必ずしも積極的な評価を与えようとはしなかった。しかし、カラヤンやショルティ、シノーポリのような老練なオペラ指揮者は、同時代のヴェリズモ・オペラからの影響力を考慮しつつも、プッチーニの優れた心理描写や高度に洗練された作曲技法に徹底して光を当てることにより、プッチーニの奥深さや独創性を巧みに浮き彫りにした。
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