2006/11/26

シベリウス ヴァイオリン協奏曲(第2楽章)


 

2楽章は伝統的ともいえる緩徐楽章で、じっくりとヴァイオリンの音色を響かせる。しかしヨーロッパ風ののんびりとくつろぐ楽章ではなく、北欧的な情念を秘めた緊迫した楽章である。

 

2交響曲を完成させ、作曲家としての評価を確固たるものとした時期に作曲された。1903年にこの作品に取り組み始め、年内に一応の完成をみる。翌年には初演も行われたが、評価はあまり芳しくなかった。

 

1905年、シベリウスはベルリンでブラームスのヴァイオリン協奏曲を「聞いてしまった」。シベリウスの基本は交響曲であり、民族的な素材に基づいた交響詩だから、このコンチェルトを書く時も独奏楽器の名人芸をひけらかすだけのショーピースとしてではなく、交響的な響きをともなった構成のガッチリとした作品を書いたつもりだった。ところが、ベルリンで初めて聞いたブラームスのコンチェルトは、そのような思いを遥かに超越した驚くほどに交響的的なコンチェルトだったため大きな衝撃を受ける。ヘルシンキに舞い戻ったシベリウスは猛然と改訂作業に取りかかり、1903年に完成させた初稿版は封印してしまった。

 

とにかく、彼にとって冗長と思える部分はバッサリとカットされ、オーケストレーションもより分厚い響きが出るよう、かなりの部分が変更された。結果として、できあがった改訂版の方は、初稿と比べるとかなり短く凝縮されたものに変身した反面、初稿には感じられた素朴な暖かみや自由なイメージの飛翔という部分は後退する。ただし、作曲家本人が全力を挙げて改訂作業に取り組み初稿の方を封印したのだから、我々素人が「どちらがいいか?」などと気楽なことは言えない。

 

世界中から第8交響曲を期待され、そして何度かそれらは「完成」しながらも、満足できないが故に全て焼却してしまったのがシベリウスである。現在は「遺族の了承」という大義名分のもとに初稿版を聴くことができるとはいえ、やはりシベリウスのコンチェルトは改訂版で聴くのが筋というものであろう。

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