D・J・グラウトによれば「1830年代のイタリア・オペラで、ベッリーニはスタイルの純粋さ、しばしば悲歌的な憂いを含む比類のない優雅な旋律で、まったく独立した地位を占めている。彼は、ピアノにおけるショパンと同じくオペラにおける貴族主義者であった。ショパンに対するベッリーニの影響は、実際によく指摘されている。二人は旋律的なスタイルが似ているだけでなく、時にはなかなかドラマティックな表現を発揮することや、正しく演奏するためには、技術的に優れた真の理解力のある解釈者を必要とする点でも共通している。
この時代のイタリア・オペラを論じる際には、すべてが歌手に依存していることを忘れてはならない。作曲者はほとんどの場合、ある特定の歌手を念頭においてパートを書いた。さらに、ベッリーニの作品には、ロッシーニ、ドニゼッティの場合と同じく、しばしば合唱が現れる。特に、ベッリーニがグランド・オペラのスタイルとスケールに迫ろうと試みた『清教徒』では著しい。
楽曲
本作で最もよく知られているのは、第2幕のエルヴィーラの30分にもなろうという〈狂乱の場〉「ここであの方の優しい声が」であり、また、第3幕フィナーレの四重唱「彼女は震えて」に含まれるアルトゥーロのパートにはヴァリアンテではなく高いファが、且つ引っ掛けるだけではなく一拍半伸ばすよう楽譜に書かれている。実際、テノールがここをどう処理するか話題になる。
リッカルドにも第1幕の美しい〈アリア〉「ああ永遠に君を失った」が、ジョルジョにも第2幕の流麗な〈ロマンツァ〉「解いた髪に花を飾り」が与えられている。本作には、ベッリーニらしい息の長いフレーズのメロディが満載で、音楽的にも完成度の高い作品である。
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