2007/03/08

ヴュータン ヴァイオリン協奏曲第4番(第3楽章)

 


ヴュータン作品の根幹をなすのはヴァイオリン曲であり、7曲ある協奏曲と変化に富んだ短いサロン小品がある。生涯の終わりにかけてヴァイオリン演奏を断念してから、しばしば他の楽器に切り替え、チェロ協奏曲を2曲とヴィオラ・ソナタなどを作曲した。弦楽四重奏曲も3曲あるが、ヴュータンがヴァイオリンの歴史において、フランコ=ベルギー楽派の卓越した演奏家として重要な地位を占めているのは、やはり7つのヴァイオリン協奏曲の賜物と言える。

 

ヴュータンの協奏曲は、上記のベルリオーズの語録からも分かるように、独奏楽器とオーケストラのシンフォニックな一体感や、音色の対比を追究した作品に仕上げられ、メンデルスゾーンやウェーバー、或いはリストを思わせる楽章の結合や形式の実験など、作曲技法でも創意を示している。この意味で、同時代の演奏家による協奏曲にありがちな、独奏楽器がオーケストラを従えて超絶技巧を誇示する作例とは一線を画す、芸術性の高いものとなっている。

 

この有名な第4番でも、最大の聴きどころとも言える第3楽章では、中間部に美しいメロディを挟んで前後の超絶技巧をメロディアスに聴かせるなど、その腕の冴えを見せつけている。晩年のチェロ協奏曲は、ヴュータンの鬱屈した心理状態を表白するかのように、重苦しい情感に満たされている。

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