東京で開催された世界フィギュアスケート選手権で、安藤ミキティが優勝した。
ショートプログラム
まずは、韓国のキム・ヨナが完璧な演技で71.95という、驚異的な高得点を叩き出す。いよいよ、注目の安藤選手がリンクに登場して来たところで、間の悪い事に仕事関係の電話が入り、肝心の安藤選手と次の浅田選手の演技を見逃してしまう事に・・・
40分にも及ぶ長い電話が終わった時は、既に全選手の演技が終わって、SPの結果が出ている時だった。
1.キム・ヨナ 71.95
2.安藤 67.98
3.コストナー 67.15
4.マイズナー 64.67
5.浅田 61.32
1.キム・ヨナ 71.95
2.安藤 67.98
3.コストナー 67.15
4.マイズナー 64.67
5.浅田 61.32
安藤と浅田に関しては結果しか知らないが、当然ながら浅田のSP5位はまったく予想外で、何か大きなミスを犯した事は明らかである。
この時点では、SPで完璧な演技で観客を魅了したキムが圧倒的に有力であり、安藤があのキムに勝つには
「4回転でも決めるしかないのではないか?」
と思われた。
SPで大きく出遅れた浅田は、キムが余程大きなミスをしない限り優勝は厳しい情勢であり、そしてSPを見る限りはそれが起こる可能性は、極めて低く感じられた。
フリースケーティング
この日は、前日のように電話が掛かって来る事もなく、じっくりと観戦。最終組の6人の練習で、いやが上にも緊張感が高まってくる。
最初に登場したのは、イタリアのコストナーだ。SPは非常に素晴らしい出来だったが、ジャンプで派手に転倒してしまい、その時点までトップにつけていた中野よりも下に下がった。
続くアメリカのヒューズも、やはりジャンプで転倒して得点が伸びず、4人を残して依然、中野がトップである。
そして、いよいよ注目のキム・ヨナが登場。表情を見る限りは緊張感はまったく感じられず、前日同様に完璧な演技をして200点近い高得点を出して、ブッチギリの優勝を掻っ攫っていってもおかしくないような、独特の雰囲気を持っていた。
コリア及びコリア人嫌いのワタクシでさえ、あのバレリーナのようなしなやかで優雅なスケーティングと、顔にも全身にもまだ少女のあどけなさを残しながら、コリア人特有の骨太ではない可憐な感じのプロポーションにも、見惚れざるを得なかった。
肝心の演技も、途中までは完璧な流れで
(こりゃ、キム・ヨナの優勝で決まりか・・・)
と思ったほどである。
ところが何度も言っているように、勝負だけはマコトに何が起こるかわからないものだ。前日から、あの絶対的な安定感を誇っていたキム・ヨナが、まさかの転倒・・・しかも二度も。TVの実況で言っていたように腰が悪いせいなのか、或いは「SPトップ」のプレッシャーだったのかはわからない。キム・ヨナには気の毒だが、これで安藤は言うまでもなく、SPで大きく出遅れた浅田にも千載一遇のチャンスが訪れたわけで、嫌が上にも期待は高まった。
浅田の難易度の高いプログラム構成であれば、ミスなくいつも通りの演技が出来れば、SP5位からの逆転金メダルも充分に考えられた。そして、いよいよその浅田が登場して来たが、キム・ヨナの得点がなかなか表示されない。リンクでアップをしている浅田の顔が、これまで見た事のないような緊張感に引き攣ったような表情をしているように見えた。
そんな中で演技が始まると、最初はやはり恐る恐るという感じでどことなく動きがぎこちないようだったが、最初の3回転ジャンプをしっかりと決めると、徐々に堅さが解れて来たようだ。ハンガリー民謡のチャルダッシュに乗って、軽快なスケーティングを見せる浅田だが、前に滑っていたキム・ヨナのしなやかで滑らかなスケーティングに較べると、タイプの違いはあるとはいえ全体的にゴツゴツとして見える感は否めない。しかしながら浅田には、誰にも負けない技術力の高さがあった。観客の溜息を誘うようなキム・ヨナの美とは違い、観客と一体になって演技を作り上げていくような、天真爛漫な明るさが浅田の最大の人間的魅力である。
ここ数試合の演技と比べ、この日はやや細かいミスこそ目に付いたが、それでも減点になるような大きなミスはなく、結果的にフリーではトップの高い得点を叩き出し、ライバルのキム・ヨナを抜き去ってトップに躍り出た。
個人的には、浅田の才能は最大限に評価しているワタクシだけに、この日の出来(特に、両足での着氷など)にはまだまだ不満があったが、それでも演技終了直後にドッと溢れ出した涙は、彼女自身にしかわからない様々なプレッシャーとの戦いなどが垣間見えた。16歳の少女が背負っているものの重みを、感じずにはいられない。
そんな興奮醒めやらず涙の止まらぬ少女に、ハイエナのような無神経さで執拗にマイクを突きつけるTV局の浅ましさは、犯罪的な馬鹿さ加減だった。
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