2007/03/19

充実感(Gシリーズ第10章)part1

 東京での現場に入って早や、2年以上が経過した。飽き性のワタクシとして、これだけ続いたのは我ながら奇跡に近いとさえ思える。

ワタクシのように短期間に転職を繰り返す人間は、世間では甚だしく評判がよろしくないようだ。なるほど「堪え性がない・・・」などと一刀両断に切り捨ててしまうのは、実に簡単である。しかしながら人にはそれぞれ思想や事情があるから、ワタクシが逆の立場ならこのように一概な決め付けはしないと思う(たとえ、フリーターに対してでも)

技術者のワタクシからすれば

「長く続ける事は大事ではあるが、長く続け(るだけ)ればいいというものではない」

という考えに一貫して変りはなく、基準はあくまでも充実感や達成感をどれだけ実現できるか・・・に尽きる。実際、それなりに「高度な」と客観的に評価される技術を持つ者にとって、その持てる技術が発揮出来ない事ほど、やりきれないものはない。日々生活している時間の約半分か、それ以上を仕事に費やしているのだから、やりがいや達成感のない仕事に従事するほど、人生における浪費の地獄はないのである。

ワタクシくらいの年齢であれば、通常は子供が何人かいるのがフツーかもしれない。そうなると、家族を路頭に迷わせるわけにも行かないから、余程の意に染まない仕事でも妥協するしかないのだろうし、事実職場の同世代の連中に聞いても身勝手は許されないと言う言葉をよく訊く。その点、ひとり身のワタクシの場合は失うものはなにもない身軽さだから、気に喰わなければ自由に転職が出来るのが最大のメリットである。これまで、何度か正社員の誘いを受けながら断り続けて来たのは、そのような事情からである。

「アナタは独身貴族だし、気軽でいいよなー」

とよくぼやかれるが、その際は

「それぞれ、好きで選んだ道じゃないの」

と、即座に切り返している事は言うまでもない。だからワタクシの場合は、よい仕事さえあれば沖縄や北海道であれ、引越しをする事とて自由自在なのである。今の吉祥寺に未練は殆どないし、あるのは引越しの面倒さだけである。

2年半というのは短いと感じる人が多いかもしれないが、ワタクシとしては珍しく、かなり我慢をしてきた方である。元々、地元の名古屋に見切りをつけて東京に進出して来るために、かなり高額な投資をして来た事情もあって、その分の回収をしなければならない、という現実の壁があった。

まだ、未知数の部分が多かった一年目の更新はともかくとして、二年目の更新時にはもう先の展望に希望が持てない、という事はわかっていた。あえて半年延長したのは、これまでの収支決算を合わせるためという側面も否定できなかったが、やはりこうした邪な考えは禁物であると、身に沁みる事になる。それほどまでにこの半年はロクな事がなく、己の気持ちに忠実に二年のタイミングで辞めておけば良かった、と何度後悔した事か。この現場に止まる限り、ワタクシには技術者として腕の振るいようがなく、有体に言えば「何もする事がない」も同然の状態だと思っていた。

なにせ国の研究機関だけに、セキュリティに関して煩いばかりでなく、何でもかんでも行政らしい縦割りの「権限」が決められているのである。例えば機器の設定などは、大手ベンダーの保守員しか出来ない。当初、このルールを知らなかったワタクシは

「この程度の設定なら、簡単に出来るからやってもいいでしょ?」

と、責任者に申し出た事があったが

「ダメです」

と、言下に却下された。

「どんな小さいものや簡単な設定でも、必ずベンダーにやらせるのが、ここのルールなんだよ」

「なんで?」

「なんでって、権限が分離されているから・・・まあ本当のところは、なにか問題が起きた場合、ベンダーの責任にするためだけど・・・」

と訊いて、やはり行政機関の考えそうな事だと思った。このようにして、機器の設定などには一切タッチできないワタクシは、ベンダーの作業計画を評価や管理をする立場であった。

 具体的には、機器の設定変更やパッチ(修正プログラム)当てなどをする場合に「こういう作業を予定しています」と、ベンダーの作業者から提出される保守計画を評価しゴーサインを出したり「この部分はもっと、こうした方がよいのではないか?」と誘導したりするのが役目なのだから、結局はなにか問題が起これば

「オマエが計画を吟味して、ゴーサインを出したのだろう」

という責任は免れないのであり、どっちにしても同じ事なのである。

まあ、こうした仕事に対しては充分にプライドを持ってやっているわけだから、これまで問題が起きたためしはないし、責任追及なんぞはドンドンしてくれというものだが、そんな事よりはこのような管理などは、ワタクシにはちっとも面白くないのだ。

この業界には「上流工程」、「下流工程」といった表現があって、実際に機器の設定などを担当する方を「下流工程」、それらの企画立案をしたり評価や管理をしていく方を「上流工程」などと呼ぶ慣わしになっている。そんなわけで、事情を知らないものは

「そんな上流で仕事が出来るなら、いいじゃん」

という事になるのだが、ワタクシの方ではまだまだ中途半端に管理職に納まるつもりなどは、毛頭ないのである。

そしてワタクシは、どうも責任者からかなり煙たがられているらしい。その理由は実に単純明快で、ワタクシが責任者が相手と言えど不合理な事があれば、ボロカスに扱き下ろすからである。

ワタクシなりに一生懸命に説明しているのに、何故か相手には

「こんな簡単な事も、わからんのか・・・」

というような態度に映るらしかった。ワタクシの理想とする責任者像が高過ぎるのか、良かれと思ってやっている事なので相手が辟易としているらしい事すら、最近やっと気が付いたというテイタラクであった。

無論、気が付いたからといって、改善しようなどという気は爪の先ほどもあろうはずはないが、間違った事を言っているつもりはないので、思った事はハッキリと口に出してしまわないと気が済まない性分は治らないものだ、と諦めている ( ´艸`)ムププ

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