1 季節
しつらいとは、春夏秋冬の変化に彩られる日本の風土の美を、暮らしに表現するもてなしの演出のこと。大陸伝来の文化を日本の風土と融合させた歳時記や年中行事には自然の神への祈りと茶、花、暦などの伝統的知識と美のデザインがある。日常の暮らしに季節の移り変わりをとりこむ日本人の習性は、室内空間において人と人とがもてなす演出として表現されている。
その中でも、特に日本料理においては四季の季節感をその料理の盛り付けに表現することで、食べる人の五感を刺激し料理の奥深さを楽しませてくれる。その季節感を取り入れる上で基準とされるものが二十四節気とよばれるものである。
二十四節気とは、まず季節を旧暦(太陽太陰暦)にもとづく春夏秋冬にわけ、そして一年の長さを二十四等分し、それぞれに季節の変化をあらわす用語をつけ、暦と実際の季節のズレを正しく示したもの。これは古来中国で考えだされたものであるが、日本においても季節の移ろいを現すものとして農事の作業を行う上で便利とされ、今日でも季節感を表す目安として使われている。
二十四節気
ü 小寒(1月5日)
ü 大寒(1月20日)
ü 立春(2月4日)
ü 雨水(2月19日)
ü 啓蟄(3月6日)
ü 春分(3月21日)
ü 清明(4月5日)
ü 穀雨(4月20日)
ü 立夏(5月6日)
ü 小満(5月21日)
ü 芒種(6月6日)
ü 夏至(6月21日)
ü 小暑(7月7日)
ü 大暑(7月23日)
ü 立秋(8月7日)
ü 処暑(8月23日)
ü 白露(9月8日)
ü 秋分(9月23日)
ü 寒露(10月8日)
ü 霜降(10月23日)
ü 立冬(11月7日)
ü 小雪(11月22日)
ü 大雪(12月7日)
ü 冬至(12月22日)
2
旬の食材と年中行事
四季の風土に恵まれた日本では、自然の恵みとして季節ごとに与えられた旬の食材があり、年中行事においてはその旬の食材を食べるということを大切にしている。旬の食材は調理を必要としないで、その持ち味を楽しむことができるものが多い。春は体内の毒素を排泄させ代謝を促し、夏は体を涼しく過ごしやすくしてくれる野菜類、秋から冬にかけては、体をあたためる作用のある根菜類が豊富に出まわり栄養価も高い。また旬の時期にいただく葉菜や果物は消化吸収を助け、その季節にふさわしいからだになじむ食材として取り入れる工夫がみられる。
野菜以外の栄養を摂るのは海草類。海に囲まれた日本では簡単に手に入る海藻類は、日本人が不足しがちなアルカリ性成分を補ってくれる。日常の食生活では、昆布で出汁をとった味噌汁をいただくと、豊富なミネラルや天然のうまみ成分グルタミン酸を簡単に摂取することができる。これは、日本の食生活の基本形が大切な栄養素の大部分を日々、補えるよう構成されていることがうかがえる。
古来から伝わる年中行事や、日本の風土にそった暮らしを生活のリズムとして取り入れることで、食物の栄養を効率よく摂取できる食文化とのつながりがみえてくる。
3
食器の種類と用途
食べるために使う道具は、古来日本においては葉や土器、椀であったが、時代とともに食べものを美しくおいしそうに盛るために、様々な器や形が生まれてきた。日本料理では、季節感をあらわすために多くの器類を必要とするが、日常の家庭生活で使用するものには多くは必要としない。家庭では季節にとらわれず、たっぷりと大きい目で使いやすく用途が広いもの、盛り付けによって食事がすすむような料理を演出できる器、洗いやすいものを選ぶと便利である。
家庭でのおもてなしの器には、春ははなやかな器、秋は実りのあるいろどりの器、夏は涼しげなガラス、青磁、染付、竹製品、冬は見た目も手触りもあたたかく厚手の陶器や木製のものを選ぶなど、質感を変えることで季節感を出すこともできる。また珍味を取り入れる小付には、盃や薬味入れ椀の蓋などを転用するなど、食具と料理のバランスの中での工夫をすることもできる。
飯椀は、浅く口径の広い朝顔形や椀形の輪形があるが、手にしっかり持って食べやすく、ほどよい重さがある器を選ぶ。普段使いの器は蓋付でなくてもよく、毎日洗う食器なので衛生的で丈夫な材質が適している。
汁椀類は、持った感覚が手にやさしく口びるにふれてまろやかなもの。普段使いは蓋付でなくてもよい。吸物椀に蒔絵や季節の絵柄があるものでもよいが、無地の塗りもので、網目やろくろ目のものなどが長く使いやすい。漆は丈夫であるが、中性洗剤をつけたスポンジであらうのは禁物である。ぬるま湯でやわらかい布で汚れを落とし水気をきって、乾いたやわらかい布でふきこんで片づける。蓋つきの椀であれば煮物、蒸し物などのあたたかい料理に向いている。
皿には、大皿(25cm以上)、中皿(16~18cm程度)、小皿(10cm程度)のものがある。
絵柄も多種多様で形は丸皿、角皿、長皿、木の葉形や舟形、変形皿などがある。家庭用では飯椀、汁椀とともに使用頻度が高いので、丸皿が比較的使いやすい。変形皿は料理の盛り付けにアクセントがつき新鮮さが出てくる。絵柄のあるものを選ぶ場合は、あきのこない料理のはえるものを選ぶと、おもてなし料理の演出にも役立てる。
小鉢は一人前の器。深さのあるものは酢の物、和え物など、浅い器は鍋料理やスキヤキの取り皿に使用できる。
中鉢、大鉢は、数人前の料理を盛り込む器。形は丸、角、六角、変形などがあり色や絵柄があるなど多種多様にあり、使用されないときでも果物や菓子を入れておくなどもできる。
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