2003/06/22

モラトリアムpart3



 それからもウェイターを志願し「ホテルオークラ・レストラン」に面接に行ったものの、洗い場をしつこく勧められたことに嫌気がさして
 
 「皿洗いなどは、希望してもいない!」
 
 と断りを入れたのを皮切りに「ラテンクォーター」というパブでは採用されたものの、夕方辺りから続々と詰め掛けて来るカップルなどの客が、薄暗い店内で酒を飲みながらイチャついているところなどを目にしながら、薄汚れた洗い場で片付けや皿洗いを黙々とこなすのに耐えられず、休憩時間を貰ってトンズラを決め込んだ εεεεεヾ(*´ー`)ノ トンズラッ
 
 次には和食の店に勤めるが、初日の昼食で職人気質のムッツリオヤジ揃いの通夜のような陰気さに耐えられず、これまた二度目のトンズラと相成った (* ̄m ̄)ブッ
 
 このような度重なる「食い逃げ」によって、さすがに罪悪感が募ったこともあり 
 
 「やはり、飲食店など向かん・・・」 
 
 と、方針転換を模索し始めた時だった。 
 
 ちょうどそんなタイミングで、新聞の求人広告に目を落としていると 
 
 「コンピューター占い・スタッフ募集!
 大阪始め関西圏へ定期的な出張デモあり!
 関西へ出張可能な若者優遇!」
 
 という魅力的な、好条件の案件が飛び込んで来たのだ。
 
 (これなら洗い場よりは遥かに楽そうだし、タダで関西へ行けて若い女性が相手とは、いい事ずくめじゃないか・・・)
 
 と、早速受話器を取り上げてダイアルを回した (  ̄∇ ̄)σ|[] ボチ
 
 当時は、まだPCも一般家庭では高嶺の花であり、コンピューターには誰しも免疫のない時代だから
 
 「コンピューターxx
 
 という名前だけでも、あたかも大層な印象を与えた。
 
 広告には
 
 《デパートなどでデモンストレーションを行っていただきます。
 客層は女性ばかり・・・大阪など関西方面へ出張出来る方歓迎!》
 
 と謳ってあり
 
 (コンピューターなんてカッコ良さそうだし、少なくとも洗い場よりは楽だろ・・・)
 
 と、珍しくやる気がムクムクと頭を擡げてきた

 面接でひと通りの話を聞き

 (どうしたものか・・・いい話のようだし、引き受けるか?)
 
 と迷っていると
 
 「オーイ!」
 
 というオジサンの呼び掛けに従って、奥さんが出て来た。
 
 「オイ、いい人が来てくれたよ・・・まさにイメージにピッタリの人だ。
 前祝いにビールを持って来てくれ・・・あと何か摘むものも並べてあげて・・・」
 
 とあっという間に、テーブルにズラズラと摘みが並び始めたのには参った。
 
 「まあ、遠慮なくやって下さいな・・・オイ、こんだけしかないのか・・・何か料理でも作って持って来てくれよ・・」
 
 「いや、まだ正式にやると決めたわけじゃないし、今からご馳走になるわけにも・・・」
 
 「なーに、若い人が遠慮なんかしてちゃダメダメ。
 さあさあ」
 
 と言っているうちに、奥さんの手になる料理までが並び始めたから、益々困った。
 
 オジサンが酌をする間にも料理は続々と運ばれ、冷蔵庫内のものを全部出して来ているのではないかと疑ったくらいに、まだ陽の高いうちから時ならぬ豪勢な宴となった

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