http://www.yung.jp/yungdb/Composer.php
ブラームスは、常にベートーヴェンの存在を意識しながら創作活動に取り組んだ。もっと分かりやすく言えば、ベートーヴェンの作品がこの世に既に存在しているという状況の中で、自分の音楽が存在する意義があるのか、を問い続けたと言える。さらに困ったことは、ベートーヴェンが殆ど全てのジャンルにおいて、頂点を極めた作品を遺していたことであった。
こうしたことから、ブラームスは全てのジャンルにおいて、この巨人と向き合う必要に迫られた。ブラームスにオペラを作曲する気持ちがあれば、少しは救われたかもしれないが、そういう志向までもベートーヴェンと同じだったため、まったくもってしんどい作曲家人生だったろう。
とりわけ、しんどさの最たるものが「弦楽四重奏曲」である。
なにしろ、このジャンルにはベートーヴェン初期の6作に始まり、ラズモフスキー3曲、そして後期の頂点を極めた作品群と、まさに巨峰と言うに相応しい「万里の長城」が築かれていたのである。
この巨大な「万里の長城」を前に、一体何を付け加える余地があるのか、というのが、ブラームスに限らず殆どの作曲家たちの思いだった。
そうした中にあって「ベートーヴェンの後継者」を自認するブラームスにとっては、それがいかに困難な課題であろうとも、やはり避けては通れない「巨峰」だった。
0 件のコメント:
コメントを投稿