2008/02/04

論外(東京劇場・第4章part4)

早ければ翌木曜日、遅くとも金曜には回答が出るようなニュアンスだったが、金曜になっても一向に音沙汰がなかったため、木・金ともにそれぞれ二件ずつ入っていた面接は、予定通りこなした。

 

結局、週末にも連絡がないまま翌週を迎える。月曜にも、面接予定が一件入っていた。N関係の件については、そろそろ見切り時かというタイミングで、またしてもD社のK氏をすっ飛ばしてT氏から、直接連絡が入った。

 

「連絡が遅れたけど、例のN社の件で内定が出ましたので、よろしくお願いします」

 

「え?

まだD社の方からは、何の連絡も入っていませんが・・・」

 

「えっ、そう?

おかしいなー。先週、伝えたんだけどなー」

 

「先週?」

 

「そうですよ・・・ともかく内定が出ましたので、お伝えしておきますよ」

 

「確認してみます」

 

と、T氏は総て決まったかのような口調だったが、こちらとしてはD社のK氏からの連絡もないし、そもそも契約条件すらまだ出ていないのだから、なんとも言いようがない。

 

(どーなってんだ?

本当に、信用していいのかな・・・?)

 

と考えていると、数時間遅れてD社のK氏からようやく連絡が入った。

 

「遅くなりましたが、N社の件で内定通知が来ました」

 

「なるほど・・・」

 

A社のT氏からは既に連絡を貰っていたが、正規の連絡ルートではないのでT氏が困るだろうと考え、この事は伏せておいた。

 

「それで契約条件ですが・・・時間精算になりますが、時間単価xxでお願いしたい」

 

「は?」

 

予想外の低い額だった。想定していた最低ラインにも、全然満たない。前職から比べても下がっているし、内容的に難しい事を考えると少なくとも、前職の実績以下で受ける気はまったくなかった。

 

「いかがでしょうか?」

 

「いかがもなにも、その額では話になりませんよ。面接時に希望を出したのに、最低ラインにも届いてないし」

 

「この金額では、出来ないと?」

 

「まったく、話になりませんな・・・」

 

「困りましたね・・・こちらとしては、これが交渉した結果のギリギリのラインなんですがね。一応、もう一度交渉をしてみますが、上がるかどうかはわかりません」

 

「それなら、やらないだけなので・・・」

 

直ぐにも連絡があると思っていたが、その日は連絡がなく別の面接を1件済ませた。翌日も面接が1件入っていたが、K氏から電話が入った。

 

「昨日の件ですが・・・あの後、交渉をした結果、時間当たり100upしました。これ以上は無理ということで、これでやっていただくか無理なら断るかどうか、ということになります」

 

「では、辞退します」

 

「・・・本当に、そのように伝えていいですか?

少しくらいなら、待ってもいいですが」

 

「いや、結構です。まだ設定単価と開きがあるので、考える余地がないですよ」

 

100upといっても、まだ設定単価から埋められない開きがあった。

 

「わかりました・・・では、こうしましょうか。こちらとしては交渉の結果が先に言った金額なので、これ以上の交渉の余地はありませんが、今日一日考えていただけますか?

そして明日、結論を教えてください」

 

「結論は、今お伝えしました」

 

「一応、念のため明日まで待ちます。明日、ご連絡をください」

 

「明日になって結論が変わる可能性はないので、今日一日を無駄に費やす事になるだけですよ。先方にしても、代わりの候補を探すのは一日でも早い方がいいに決まってるから、早めに回答した方がいいでしょうし、私としても邪魔をするつもりはまったくありませんが・・・」

 

「まあ、そう言わずに・・・では明日、ご連絡します」

 

という事で他社の面接を受けている時も、既にこの件については自分の中では消滅していたのである。

 

案件自体の内容の良さと、直接の面接に加え元請け面接後に少し話した時の、あの現場リーダーの感じの良さを思い出すと少し残念ではあったが、技術者としてのプライドもあるから、単価が合わないのでは仕方ないと思った。

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