2008/02/14

オオボケ・ミスター(偉大なる奇人変人・ミスターpart7)

 ミスター信奉者に言わせれば、こうした不可解極まる起用法に関しても

 

「ミスターは勝ち負けよりも、ファンをハラハラドキドキさせて楽しませる、エンターテイメントの方に心を砕いておられるのだ・・・」

 

という解釈になるらしいですが、純粋Gファンからしてみれば正直、これほど神経に障ることはない。絶体絶命のピンチを迎えた時に、TV画面に早速ソワソワとし始めたミスターの姿が映された時などは、気が気ではありませんでした。

 

(ミスターよ・・・頼むからここはヘタに動かず、ドッシリと構えていてくれよ・・・)

 

といった願いも虚しく、ピンチを迎えると我慢出来ずにいそいそと飛び出してくるのが、ミスターその人なのです。

 

交代要員は何人もいるのだから、その中には素人目にも幾らか期待できそうな投手もいれば、名前を訊いただけでまったくダメなのが、わかりきったのもいます。

 

(ああ・・・やっぱりミスターよ、出てきちゃったか・・・代えるにしても、せめてアイツだけは頼むから、やめてくれよ・・・)

 

などと、祈るような心境で見つめていると、必ずといってよいくらいに恰も、そうした多くのファンの心中を見透かしでもしたように、最悪とも言えるその「アイツ」を指名して来るのが、ミスターの真骨頂なのでした。

 

さらには、代えなくて良いところで無駄な交代を繰り返すばかりではなく、代えなければいけないところでは、まったく無意味(としか思えない)ような我慢を決め込んでみせたりと、あたかも人々の裏ばかりを書いて(どうだ・・・驚いたか・・・)と舌を出して悦に入っている、悪趣味な悪戯小僧のようなところが、ミスターには確かにありました。

 

「(何度も四球を連発して、塁を埋めては長打を打たれるという自滅を繰り返していた)石毛では、ああなるのはわかりきっていただろうーに」

 

と誰しも思うところですが、当のミスターは

 

「抑えは、なんといっても石毛しかいない」

 

とあたかも信仰の如く、何故か一人勝手な拘りを捨てきれないところがあったようです。そのくせ当然のように、打たれて逆転負けを喫すると

 

「イシゲがなー・・・」

 

と頭を抱えて見せる、不可解さよ。そうなる結果は、最初から素人目にも明々白々なのだが。ワタクシの目には、自分好みの石毛と心中する悲愴な状況をも、どこか楽しんでいるかのようなミスターには、マゾヒスティックな趣味でもあるのかいな、と勘繰りたくもなったものでした。

 

こうして、ミスターの常人の理解を遥かに超えた、わけのわからない采配には散々に悩まされ続けたものでしたが、今となっては不思議と恨みも残らないところ辺りは、やはり偉大なミスターならではの人徳といったところでしょうか。

 

では、ここからは天真爛漫なミスターに思いっきり笑わせていただいた数々の事件を、ダイジェスト風にご紹介していきます。

 

1.「代打淡口」事件

初期の監督時代の、有名なエピソードだ。チャンスを迎え、控えにいた淡口選手を代打に告げたミスターは、ご丁寧にもわざわざバントのゼスチャーをしながら「代打淡口!」と告げたから、相手チームのベンチは大爆笑。勿論、相手は早々にバントシフトを敷き、初球からファーストとサードが猛ダッシュをして来るのは当たり前だったが、気付いていなかったのはミスターただ一人。

「おかしいなー・・・  サインが漏れてるのか・・・?」

 

 2.黒澤明映画「野良犬」事件

ミスターのオオボケは、学生時代から既に始まっていたらしい。立教大野球部時代のエピソードで、面倒見のよいミスターはその日も数人の後輩を連れて、練習帰りの電車に乗っていた。

 

「よし! 今日はオレが、みんなを映画に連れて行ってやるぞー」

「オース、先輩、ありがとうございまーす! で、何の映画を観に行くんですか?」

「そうだな・・・今日はいっちょう奮発して、黒沢監督の名画にするかー。三船敏郎主演の『ノヨシケン』というやつだ」

 

当時話題になっていた「野良犬」は皆知っていたが、怖い先輩の間違いを訂正出来るはずはない。かくて、後輩たちは満員の電車の中で恥を忍んで

「オース! その『ノヨシケン』に連れて行って下さい」

と答えざるを得なかったのだった。

 

3.「江戸」事件

同じく、学生時代のエピソード。テストで『I live in Tokyo』を過去形に直せ  という問題で、散々考えた挙句に『I live in Edo』と書いて済ましていたとか・・・

 

4.「アカイ君」事件

ミスターが少年野球の指導を行っていた時のエピソード。

「そこのアカイ君、バットを振ってごらん。肱を畳んでビュンと、そうそう、その調子だよー」

「こっちのアカイ君も、腰を回して、バアーと。そうそう、いいよいいよ」

「今度は君・・・あれっ? 君もアカイ君か・・・? 今日はやけに、アカイ君が多いなあ・・・」

「今度は君が・・・ありゃリャ??」

その日の野球少年たちが着けていたユニホームには、スポンサー赤井電機の「AKAI」のマークが入っていたのだった。

 

5.アメリカ初体験での大ボケ

現役時代、ベロービーチでドジャーズと一緒にキャンプをする事になり、アメリカを訪れたミスターはしきりに感心して、こう呟いた。

「こっちの子どもは、みんな英語が上手だなー。それに走っている車が、全部外車だし・・・」

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