2005/11/06

繁忙期

 毎年11月といえば、恒例の紅葉狩りが楽しみな季節であり、今年はこれまでに縁がなかった箱根や伊豆辺りの温泉に浸かりながら、ノンビリと紅葉を堪能しようかと密かに目論んでいた。そんなところへ青天の霹靂というべきか、直前の10月末になってあたかも待ち構えていた嫌がらせのように、思わぬ誤算が出来した。

ナント職場において昨年11月からの出向以来、初めてとなる大プロジェクトが始まる事が決定したのだ。 しかも選りにも選って、11月の半ば前からスタートするという時期的に最悪であり、加えて何の因果かまだ出向して1年を少し過ぎたばかりのこのワタクシがプロジェクトリーダー(PL)に指名されてしまうという、まったく予想していなかった展開が待ち受けていた。

ワタクシ自身が国家最高機密を与るセキュリティ機関のリーダーとして、民間某大手企業を「審査」しなければならない立場であるから大変だ。昨年11月の出向以来、その手の大きなプロジェクトがなくその意味では比較的平穏無事に過ごし、これからもこの平和が続くのだと思っていた事に加え、いきなり自分がリーダーに指名されるはずはないだろうとタカを括っていた。

これまで、まったくその方面の準備をして来なかっただけに、それらの特殊な技術を本番までの短期間で総てマスターしなければならないのは勿論の事、本番の時は自分が中心となって業務を遂行していく事になるのだから大変だ。

決して仕事が嫌いなわけではないし、人に指示されて動くよりは自らバリバリと動く方が性には合っているとはいえ、得意のネットワーク技術の関係ならともかく、未経験の特異な分野だけに正直言ってあまり自信がない。

なんとも憂鬱な話だ。年休を連ねて、紅葉狩りに行く計画はどうなってしまうのか?

数ヶ月も前から夢に描いていた「気持ちの良い秋晴れの空を見上げながら露天風呂に浸かって旨い日本酒を堪能」というワタクシにとっての至福のイメージが、音を立てて瓦解していくサマが脳裏を過ぎらんとしている。

が、そうは問屋が卸すまいことか。

(こうなりゃ混雑する土日だけでも、なんとしても出掛けてやるぞー)

などと力んでみたところで、プロジェクトの方はリーダーとしての務めは、しっかり果たしていかなければならない。

 現場で携わっているのは、某国務機関における電子政府推進プロジェクトである。NTT某による民間認証局立ち上げの要請を受けて、電子政府認証局として基準を満たしているかどうかの審査を行うのが、今回のプロジェクトの趣旨である。事務方による書類審査と並行し、技術グループによって行われる審査のリーダーというのが今回の役回りだ。

その技術審査がスタートした。先方から提出される各種の電子証明書を元に、相手認証局が電子政府基準に則っているかどうかを判定する。これら電子認証は「RFCRequest For Comment3280Internet X.509 Public Key Infrastructure Certificate and Certificate Revocation List (CRL) Profile=公開鍵認証基盤(デジタル)証明書と証明書失効リストのプロファイル(日本語版)で記述されており、このRFCを基準とした解析・審査を中心として、また技術テストではunixで証明書検証アプリケーションを使い、様々なテストを実施した。これらの技術テストをPLのワタクシと、もう一人(技術リーダー)の二人で行って来た。

元々、某省からの要請では「慣例に従い一週間で」という事だったが、現場では最も技術力の高いコンビによる仕事は、(ケンカばかりしながら)あれよあれよという間に快調に進み、4日目に当たる木曜日の午前中で総ての審査とテストが終了してしまうという、実に呆気ないほどに早い展開で幕を閉じた。

相棒の技術リーダーはこれにてお役御免となり、残るプロファイル及びテスト結果の最終チェック、そして某省に提出する報告書類と事務方が纏めた書類審査結果を含めた総ての取り纏めという面倒な仕事もPLたるワタクシの役割りであり、一人で行うこちらの方は今月一杯はビッシリと費やしそうなボリュームがありそうだ。

一難去ってまた一難というところだが、最大のヤマ場と目された技術審査を無事に終えた事で、気分的にすっかり楽になった事は事実である。そして紅葉にはもう間に合わないかもしれないが、12月にはようやく念願の温泉旅行が実現しそうなのであった。

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