2005/11/22

技術審査(Gシリーズ第6章)前編

 毎年11月といえば恒例の紅葉狩りが楽しみな季節であり、箱根や伊豆辺りの温泉に浸かりながら、ノンビリと紅葉を堪能しようかと密かに目論んでいた。 そんなところへ青天の霹靂というべきか、直前の10月末になってあたかも待ち構えていた嫌がらせのように、思わぬ誤算が出来した。

ナント、職場において前年11月の出向以来、初めてとなる「大任」が決定したのだ。しかも選りにも選って、11月の半ば前と計ったように最悪のタイミングであり、加えて何の因果かまだ出向して1年を少し過ぎたばかりの自分がリーダーに指名されてしまうという、まったく予想だにしていなかった展開が待ち受けていた!
国家最高機密を与る某機関のPLとして、民間某大手企業を「審査」しなければならない立場となったのである。

昨年(2004年)11月の出向以来、その手の大きなプロジェクトがなく、その意味では比較的平穏無事に過ごし、これからもこの平和が続くのだと思っていたのが、偽らざるところだ。さらに言えば、いずれは訪れるだろうプロジェクトだったとはいえ、まずはサブからのスタートが常識で、いきなりリーダーに指名されるはずはないだろうとタカを括り、これまでまったくその方面の準備をして来ていなかった。それらの特殊な技術や技能を、本番までの短期間で総てマスターしなければならないのは勿論の事、本番の時は自分が中心となって業務を遂行していく必要に迫られたのである。

決して仕事が嫌いなわけではないし、確かに人に指示されて動くよりは自ら能動的に動く方が性には合っているとはいえ、得意のネットワーキング技術ならともかく、まったく未知の特異な分野だ。出向後一年を迎え、10月には延長契約を結んだばかりのタイミングで、いきなりこのような展開を迎えようとは。

 当初から

RFCは、しっかりと読んでマスターしておいて下さいね・・・」

と、24歳のK君らから何度も釘を刺されていたものの、実のところまったく勉強してこなかった。それに「RFC」やら「ASN.1」なんてものは、読んでいてちっとも面白くないのである。面白くないから勉強しない、勉強しないから益々理解できず、さらにつまらなく感じるという悪循環で、ここまで1年間は必要に迫られなかったのをいい事に、すっかりサボりを決め込んでいた。

当初は煩く言っていたK君を宥めるため、申し訳程度に勉強してみせたものだったが次第に怠け癖が頭を擡げ、遂にはしぶといK君もすっかりと匙を投げていた。

「いずれ、本番がやって来た時に苦労するでしょうね・・・」

「なーに、オレがいる間は、本番などやってこない事になっている気がする・・・」

とタカを括っていたが、遂に「その時」がやって来た。しかも、自分がPLである。さらにご丁寧にも、サポート役が隣の席に座っていながら普段からまともに口さえ利かない、技術リーダーで相性最悪のR氏と来たから悪夢だ。

「その時が来たら、サポート役に頼ればいいさ・・・」

とタカをくくっていたが、まったくそれどころではなくなった。

 「さあ、にゃべさん。これは大変な事になりましたねー、イヒヒヒ。そんな調子では、Rさんに相当怒られる事でしょうね。

1年もいて、こんな事もわからへんのかー!』

とか言われて、ボロクソに虐められる事でしょうねー (`ー´)イヒヒヒ」

と趣味の悪いK君は、早速大喜びを隠さなかった。

「まあ、こっちは初めてなんだから出来るはずはないよ。向こうは何度も経験しているんだし、サポート役なんだから、さすがに教えてくれるんじゃないか?」

「甘い甘い・・・Rさんの事だから、プロファイルチェックだけ少しやって、それで終わりに決まってますよ」

「まさか・・・幾らなんでも、それはないだろう」

「いや、今までの例から言って、絶対にそうですって!
まあ、今にわかりますよ」

そして現実は、見事なまでに嫌味なKの予言した通りだった・・・

 責任者のH氏から

「にゃべさん・・・技術審査の下準備は出来ていますか?」

と問われ

「一応やってはいるけど・・・何しろやった事がないから、ある程度サポートして貰えるものかと・・・」

と、暗にR氏に対して予防線を張ろうとするや

「甘い甘い・・・元々、この業務はPL1人でやらなアカンのよ・・・1年もいて、今更わからへんじゃ済まへんで。オレは『プロファイルチェックくらいは手伝う』 けどな・・・」

と早々に責任者に聞こえよがしの、責任逃れをして見せる非道さであった (-ω-#)y-~~~~

さらに具合が悪い事に、リーダーのN氏を始め、みなこちらがそれなりに勉強をして、RFCなども幾らかは理解していると思っているような節があった(まあ、当然そうあるべきではあったのだが)

そして本番一週間前には、N氏から

「にゃべさん、準備は進んでるの?」

と問われ

「一応やってはいますが・・・正直、やった事がないから段取りと言っても、どうしたらいいのかイマイチわからなくて・・・」

と弱音を吐くと

「にゃべさんは初めてなんだから、サポートのRさんがちゃんとリードしてやらないと・・・」

と注意してくれたおかげで、それまで知らぬ顔を決め込んでいたR氏もようやく、渋々と重い腰を上げた (`Д´)y-~~ちっ

技術的には化け物のようにスキルの高いR氏だが、こちらに輪をかけたような勉強嫌いかつ無精者だけに最初から殆ど当てにはせず、一人で総てをやり遂げる悲壮な決意で

「今頃、なに言ってんだか・・・だから常々、勉強しろと言ったのに」

とブツクサ言う若いK君に、恥を忍んで教えを請うた。

他のメンバーは、みな我関せずで知らぬ顔である事はいうまでもない。何しろ、この方面については、何もやってこなかったと言ってもいいくらいだけに、総ては殆どゼロからのスタートというのが実情だった (--)y-゜゜゜

0 件のコメント:

コメントを投稿