2006/12/15

プッチーニ『トスカ』(1)

この作品はプッチーニの作品の中でも、典型的なヴェリズモオペラと言われる。

 

この時代のイタリアでは、マスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」やレオン・カヴァレロの「道化師」などの演劇的な作品が人気を博し、この作品もそのような流行の洗礼を受けて成立した。

 

プッチーニは誰かが新機軸を打ち出して成功を収めると、そのいいところをうまく自分の中に消化して、さらに高いレベルで作品を完成させてしまう性向と能力を発揮した。この辺りが、同業者からプッチーニが嫌われる理由だったようで、他人の褌で一番おいしい部分だけをちゃっかり持っていくように受け取られてしまったようだ。その反感が、蝶々夫人の初演における歴史的失敗に繋がったとも言われている。

 

「ヴェリズモオペラ」とは「日常の現実的な出来事を題材に台本が書かれていて、さらに音楽も劇的な効果を追求したオペラのこと」である。これ以前の、古いスタイルのオペラのことを「ベルカントオペラ」呼ぶ。

 

「ベルカントオペラ」とは「18世紀に成立したイタリアの伝統的な歌唱法を用いたオペラのことで、劇的、叙情的な表現より音の美しさ、柔らかさに重点を置き、喉に無理なく低音から高音までのびやかに歌える方法」として知られ、最盛期は18世紀から19世紀前半でロッシーニ、ベルリーニの作品が典型と言われる。つまり時代が近世から近代に移り変わる中で、現実離れした筋立てでは観客は満足しなくなり、よりリアルで劇的な音楽を求めるようになった結果として生まれてきたのが「ヴェリズモオペラ」なのである。

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