4.Des Helden Walstatt (英雄の戦場)
展開部に相当する。
突如、舞台裏からトランペットが鳴り響き、敵との戦いが始まる。このトランペットのファンファーレは、戦いの場に入ったことを暗示している。ファンファーレが英雄の動機を挟んで再度繰り返された後、次第に騒々しい雰囲気になって来る。
小太鼓のリズムに乗って「敵」のテーマがトランペットに出て来て行進曲風に進んで行くが、3拍子で描かれているため激しさと同時に、どこかパロディ風のユーモアも感じさせる。敵を表す強力無比な金管群・木管群が舌鋒鋭く英雄を非難するが、英雄(低弦とホルン)は雄々しく戦う。ヴァイオリンで表された伴侶も、英雄を支えている。
その後、4管編成をフルに使って既出の主題を戦わせ色彩的に展開していく様子は、まさに「色彩的オーケストラの達人」の面目躍如である。ティンパニ、バスドラム、テナードラムの乱打も加わり、すさまじい戦いのシーンが繰り広げられる。
英雄の自信に満ちた行動に敵は圧倒され、英雄の一撃で敵は総崩れになった批評家を打ち負かし、金管楽器の力強い演奏で英雄の勝利が描かていく。この部分では、ホルン4本によるハイトーンが聞き所になります。
英雄は満ち足りた状態となり、敵の非難は弱くなっていく。英雄の華々しい勝利が歌い上げられ、英雄と伴侶は手を携えて登場する。
5.Des Helden Friedenswerke (英雄の業績)
再現部とコーダの前半部分に相当する。
曲は落ち着いた感じになり、これまでのシュトラウス作品がコラージュ的に提示される。『英雄の生涯』自体の動機に加え『ドン・ファン』、『死と変容』、『ドン・キホーテ』、『マクベス』、『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』など、よくぞこれだけという感じで主題が絡み合って演奏されていく。ここに出てくる曲が全部分かれば、かなりの「シュトラウス通」と言える。次第にテンポがゆっくりになり、英雄は自己の内部を見つめるようになる。
この曲を作った時、シュトラウスはまだ30代だったが、回想すべきほど沢山の曲があるという点も凄いところで、この時期がシュトラウス自身の黄金時代(の一つ)だったことは確かと言える。シュトラウスは『英雄の生涯』以降は交響詩を創っていないため、まさに交響詩時代の締めくくりという内容に相応しい。
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