チャイコフスキーが37歳の時に、ファンを自称する女性から熱烈なラブレターが送られてきた。
結婚する気がなかったチャイコフスキー(同性愛者だったという説が根強い)は、この求愛を無視しようとしたが、狂熱的な相手の女性は遂に強引にチャイコフスキーのところへやってくると、押しかけ女房を決め込んだ。
極度に小心だったチャイコフスキーは、女性の強引さに押されて気が進まないままに結婚式に同意してしまったが、すぐに耐えられなくなり逃げるように妹の元へと一時避難していた。
軽率な結婚を後悔して悩んだ挙句に、モスクワへ戻って入水自殺を試みるものの、これは未遂に終わる。
この女性は精神に異常が認められ、後に精神病院に収容されることになって、どうにか女性から離れることが出来たチャイコフスキーだったが、形式的には死ぬまで籍を抜くことが出来ず、気の弱い彼は生涯この女性に仕送りを続けた。
チャイコフスキーの書簡によると、第3楽章は酒を飲んで酩酊した時のような、とりとめの無い感情を表している。
まず、弦楽器のピッチカート(弓を使わず、指で弦を弾いて音を出す奏法)が落ち着きの無い旋律を演奏し、空想を欲しいままにしながら次々と画像を追う様を表現する。
数あるクラシック音楽の中でも、最も効果的にピツィカートを使った例かもしれない。
次に、外から聞こえてくる酔った農民達の歌を表す木管楽器の民謡風の旋律と、楽隊の奏でる響きを表す金管楽器の旋律が演奏される。
最後に、それぞれの旋律を繋ぎ合わせて、淡い幻想的な雰囲気のうちに、この楽章は幕を閉じる。
この交響曲中で、最も独創的な楽章と言える。
三部形式からなっており、それぞれの部分が弦楽器だけ、金管だけ、木管だけという感じでバラバラに演奏され、最後に一緒に演奏するという形になっている。
チャイコフスキーが、フォン・メック婦人に宛てた手紙の中で、この楽章のことを「きまぐれなアラベスク」、「混乱したデタラメ」と書いている通りの曲である。
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