超絶技巧練習曲(フランス語:Études d'exécution transcendante, サール番号:S.139, ラーベ番号:R.2b)は、ピアニスト、フランツ・リストの作曲したピアノのための12の練習曲である。2度にわたる改訂が行われている。原題は「卓抜した演奏のための練習曲集」というほどの意味である。
構成
すべて異なる調で書かれている。2曲組で同じ調号の長調と短調(平行調)とし、2曲ごとに調号の♭がひとつずつ増えていく。この事とタイトルから、初版と第2版とでは全ての調性を網羅しようとしていたが、結局断念して12曲に落ち着いたと考えられる。初版と第2、3版では曲順が異なる。第1番と第9番を除き、第2版と第3版とは小節数が異なる(ただし、第1番と第9番も若干音形が異なるものの、第2版と第3版とは本質的に差はない)。
以下は第2、3版の構成である。特記したもの以外は第1版の曲を改作したもの。テンポの変更も記す。
ハ長調『前奏曲』(Preludio) – Presto:演奏時間は約1分と非常に短い。
イ短調 - Molto vivace a capriccio
→ Molto vivace
ヘ長調『風景』(Paysage) - Poco adagio
ニ短調『マゼッパ』(Mazeppa) - Allegro
patetico → Allegro:特に有名。この曲だけは独立曲を経て、リストがオーケストラのために改作した同名の交響詩 (S.100) もある。また1小節目からffとアルペジオで始まる所謂「マゼッパ旋律」は第1稿には存在せず、指示記号もpのレガートだった。
変ロ長調『鬼火』(Feux follets) -
Equalmente → Allegretto
ト短調『幻影』(Vision) - Largo
patetico → Lento
変ホ長調『英雄』(Eroica) - Allegro
deciso → Allegro:第2版で新しく書き下ろした。序奏は『ロッシーニとスポンティーニの主題による華麗な即興曲』Op.3, S150(1824年頃)から取った。小林秀雄は、本曲を書いたのはリストがどうしても『変ホ長調のエロイカ』を入れたかったからだ、と述べている。
ハ短調『死霊の狩』(Wilde Jagd) - Presto
strepitoso → Presto furioso
変イ長調『回想』(Ricordanza) –
Andantino
ヘ短調 - Presto molto agitato →
Allegro agitato molto
変ニ長調『夕べの調べ』(Harmonies du soir)
- Lento assai → Andantino:第1版の第7曲を移調・改作。
変ロ短調『雪あらし』(Chasse-neige) -
Andantino → Andante con moto
第2版にはタイトルはまだついておらず、『マゼッパ』の題がついたのは1840年の改作からである。また第2版のみつけられる愛称ではあるが、シューマンが特に第6番、第7番、第8番の3曲を以下のように評した。
「嵐の練習曲、恐怖の練習曲で、これを弾きこなせる者は世界中探してもせいぜい10人くらいしかあるまい。へたな演奏家が弾いたら、物笑いの種になる事だろう。」
特に演奏困難な第2稿
第2稿の「24の大練習曲」については、良く演奏される第3稿に比べるとはるかに難度が高い。しかし、演奏効果は第3稿の方が高いという見識が一般的なので、第2稿がコンサートで演奏される事はほとんど無いに等しい。ピアニストクラウディオ・アラウ、ピアノ教師ゲンリフ・ネイガウスの2人ともが「演奏不可能」との見解で一致している。
ロベルト・シューマンの音楽エッセイ集『音楽と音楽家』には、1837年時点での「24の大練習曲集」についてのエッセイが収められており、内容は以下のようになっている。
「前にも言った通り、この曲は巨匠による演奏で聴かなければならない。できる事ならば、フランツ・リスト自身による演奏がいいだろう。しかし、たとえリストが弾いても、あらゆる限界を超えたところや、得られる効果が、犠牲にされた美しさに対して、充分の償いとなっていないようなところでは、耳障りな箇所がたくさんあるだろうと思う。しかし何はともあれ、来るべき冬の彼の到着は、心から待ち遠しい。」
つまり、第2稿はリスト本人の技術をもってしても、十分な表現力をこめた演奏は非常に困難ではないかとシューマンが考える程の難易度という事である。但し、このエッセイはシューマンがリストによる演奏を聴く前に書かれたものである。
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